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見惚れる
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父の亡骸は干からびた老人の様だった
弧を描いて歪んだ背中には骨が浮かび上がり
燻んだ肌には斑点が散り、生気がない
小汚い残飯の山にのる魚の骨の様だ
目を見開いたまま上を向いたそれに
生前好きだった酒をドボドボと注いで
数日間放置しておこう
なんて死んでもいない人の骸を
夢の様に想像して心を埋めているだなんて
目の前の生者は気づいていないだろう
気づかれても面倒だが
そういった嗜好の精神に
作り上げたのはこの人達だ
とかなんとか言って、
恨んでいるし殺したいとも思っているけれど
愛している事も確かだから
そんな歪な私を咎める資格はないのだと
きっと、言ってしまえる私じゃない
死んだら尊いのだろうなと
感じるだけなのだ
家族でなければそう欲情するのだ