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遺書日誌  作者: あやと
160/218

玄関の窓

闇を囲う窓があった

夜半の風が頬を撫でて

その虚な穴に吸い込まれるようだった

まるで空っぽな内側を余す事なく舐り

聡明に吹き荒れるような

空虚が静かにその深淵を呑むようで

気づけば此方が呑まれているような

そんな風が私に吹き込んだ

昏睡 低迷 仄かに酔わせるそれが

一瞬私の意識を吸い込んで

また虚に戻した

それは私を救い損ねた悲しみの様だった

なんて、風に憂いてみたのだけど

所詮何も報わない夜でしかなかった

だって

この命を刈り取ろうと機を待つでもなく

この命に幸福を満たそうと寄り添うでもなく

触れているだけで重ならないのだから

ただ悲しみと狂気を無意に反芻する

部屋の暗闇と同じものでできているのだから

求めているだけ浮ついているのだ

絶望に張り付いていた私に空いた気泡

いつ壊れるのかも分からない

偶像が成す日常に穢され盲目に堕落して

涙さえ忘れ微笑みに浮かされ

皮を剥がされるのを恐れて虚構を並べる

朝が来ない朝が来ない朝が来ない

夜は深い夜は長い夜は愛しい

愛しい暗闇に抱かれる不確定な時

闇に身を溶かして月光を吸い込んで

肺を風で満たす

空気はない水はない光はない

闇を蠢く爽やかな深淵を食み生きる

安堵に呆ける

紛れない心が絶え間なく私を裂き

見えない傷に何一つ信じられなくなる

言葉の破片を何度も咀嚼して

咽び泣く私は弱くて甘ったれている

夜半に逃避する

そんな自分が大嫌いで大嫌いで大嫌いで

殺してしまいたいと何度祈る

こんな馬鹿みたいな人間を誰が望む

誰が許す誰が求める誰が愛す誰が慕う

誰がこんな私を生かす

放置される心が今にも腐り落ちるだろう

甘すぎる腐敗臭を胸に無言で絶叫する

寂しい寂しい人恋しいひもじい怨めしい

私が憎い醜い私は愛されたい

虚像のこれを愛してほしいと渇望する

だから私は無償の愛を捧ぐ

こんな私に誰か気づいて気づかないで

殺してくれ生かしてくれ風をくれ

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