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第21話 後輩とデート③

「先輩、映画はどうでしたか?」


「めっちゃ面白かったなぁ~。最近映画館行ってなかったから良い機会になったし」


 映画館からの帰り道、傾いた夕日が照らす茜色の空の下で、俺と楓香が隣を並んで歩きながら映画の感想を語り合う。


「ストレスで視覚障害になったヒロインが、主人公との隣人付き合いを通して癒されていく。それによって徐々に視力が回復していき、二人の関係もただのお隣さんから進展していって……いやぁ、あんな青春を過ごしてみたいもんだ」


「ヒロインの視力の回復具合で、主人公との親密性が表わされているのが新しくて良かったですね」


「だな~」


 そうやって話しているうちに楓香の家の前まで帰ってきた。


 時間がやけに早く過ぎるように感じてしまうのは、それだけ俺が楓香と一緒にいる時間が楽しいと思っているということなのだろう。


「先輩」


「ん?」


 楓香が家に入るのを見送るつもりでいると、楓香が表情に恥じらいの色を浮かべながらこちらに視線を向けてきた。


「その……書店で話していたことなんですけど……」


「ああ、オススメしたアニメを観るって話か」


 それです、と楓香が首を縦に振る。


「次の休日とかって、どうですか……?」


「次の休日……」


 俺は少し思考を巡らせる……が、まぁ、案の定予定など一切入っていなかった。特に断る理由もないし、なんなら誘ったのは俺なのでむしろ楓香が乗り気ならこちらとしても嬉しい。


「オッケー。特に用事もないし、次の休日にしようか」


「やった……! ふふっ、これで一週間頑張れます」


 キュッと胸の前で拳を固めながら、楓香が笑顔を向けてくる。


 自分との予定をここまで楽しみにしてくれるというのは、当然嬉しいもので、それもこんなに可愛くて自分を慕ってくれる後輩がとなると、更に一層嬉しくて。


 自然と俺の鼓動は早くなり、いつの間にか顔が若干熱っぽくなっていた。


「では、先輩。今日はありがとうございました。とっても楽しかったです」


「ああ、こっちこそ。俺も次の休日楽しみにしてる」


 そう言って俺が手を振ると、楓香も一度手を振り返してから家の中へと入って行った。


 俺は一人照れくささを感じながら後ろ頭を掻く。


「さて、帰るか……」


 今日は別に母さんの用事はなかったはず。帰ったら恐らく夕食の支度をしている頃だろう。


 人生初めてのデートでやや気張りすぎたか、いつもよりお腹が減っていた――――



◇◆◇



 翌日、俺は学校に登校してくるなり三人に質問攻めにされていた――――


「で、どうだったんだよユウ?」

「貴様、前告白してきた後輩とデートしたらしいな?」

「これは詳しく聞きたいよねぇ~」


 俺が座る席を囲うように、碧と智輝、倉木さんが詰め寄ってくる。


 どうしてこんなに興味津々なんだよ、と俺は少し呆れた視線を向けつつ、荷物を置いてから答えた。


「いや、別にそんな特別なことがあったわけじゃないけど……昼食取って、書店行って、映画行って帰ってきただけ」


「書店?」


 碧が首を傾げるので、俺は「ああ」と頷く。


「俺の趣味に興味があるって言うから、ラノベ紹介した」


「おぉ……! もしかして結城さんもこちら側の世界に……!?」


「フッ、充分にあり得るぜ」


 碧も同じ趣味を持つ人間が増えることが嬉しいらしく、俺と顔を見合わせて瞳をキラキラとさせている。


「おい、話が脱線している」


 智輝が鋭い目視線を奥に潜めた眼鏡を、カチャッと人差し指で持ち上げた。


「結局貴様はどうするんだ、優斗」


「どうする、とは?」


「氷室とその後輩のどちらを選ぶのかという話だ」


「そりゃもちろん……」


 ――もちろん碧だ。


 と、今までの俺なら即答できていただろう。

 しかし、楓香に告白されて、昨日はデートをして……徐々に俺の中で楓香の存在感が大きくなった。


「もちろん、何だ?」


「い、いや……」


 智輝の催促に、俺は歯切れの悪い言葉しか出てこなかった。すると、そんな俺の様子を不思議に思たのか、倉木さんが目を丸くする。


「宮前君が迷うなんて意外だねぇ? てっきり『碧に決まってるだろ』とか言うと思ってたのに~」


「んまぁ……」


 俺自身が一番意外だ。


 楓香に告白されるまでは、俺が碧以外の女子を見ることはないと思っていたんだから。それがいまではこうして悩んでしまっているのだから、人生何があるかわからないものだ。


 ふと碧の方へ視線を向けると、先程まで楓香が自分達と同じ趣味に興味を持っていると聞いてテンションが上がっていたのに、俺の方へ拗ねたような視線を向けてきていた。


「碧?」


「……なんでもない」


 何だコイツ?


 俺が楓香に少し惹かれているからやきもち……なわけないか。俺としては少しでもそう思ってくれていると嬉しいが、碧に限ってそんなことはないだろう。


 あるとすれば、前に碧の家で遊んだ時に話したように、俺が楓香と付き合うことになって、今みたいに一緒に遊べなくなることを寂しく感じているということくらいか。


 碧は俺にどうして欲しいんだろう…………?

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