はいきょ
とある男爵の館に母を失った庶子の娘がやってきました。
優しい男爵夫人は心良く娘を受け入れましたが、夫の不貞に深く傷つき、心を病んで若くして亡くなりました。
彼女には一人息子がいましたが、母の死によって狂気を患い、父である男爵に森の奥深くに追放され、そこで猟犬に噛まれて亡くなりました。
彼を産まれた頃から世話をしていた乳母がいましたが、孫のように可愛がっていた令息が亡くなり、(孫は夭折)静かに暮らそうと男爵に暇をもらい、形見に令息の肖像画の入ったブローチを男爵に貰いましたが、盗賊に身包み剥がされたうえ、口封じの為に殺されました。
庭師は賤しい家の息子で身分ある者に褒められた事は疎か、近寄られた事すら無かったと言うのに、優しい言葉をかけ、労ってくれた優しい貴婦人を男爵のせいで亡くした事に絶望し、男爵を衝動的に殺してしまいました。
庭師は男爵の死によって生活が困窮した年寄りの執事によって高値で売られ、奴隷となり、劣悪な環境でそのまま死にました。
男爵令嬢となった庶子の娘は年寄り執事に金が無いだの、面倒を見ろだの年寄りだから耳が遠いからか、もしくは下心があったのかは謎ですが、顔を近づけて色々言われ続けるのが気持ち悪いと思っていましたが、メイド達は夫人や令息の死は彼女が館へ来たせいだと思っていて庇いませんでした。そしてそのメイド達やがても暇を出し、王都に出て、仕立て屋になったり給仕になったりして男爵家から離れて行きました。
残ったのは料理人と執事と娘です。
学の無い娘と守銭奴でしかも金も財産も無く、老いていて働けない執事。自分だけ搾取されるに決まってます。料理人も王都で店を出し帰って来なくなりました。
執事も歳なのでやがて死にました。
娘は修道女になったか、のたれ死んだか定かではありません。
そしてそこは誰も居なくなりました。