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07 全モフ


 餌付け、完了。


 お腹いっぱいで満足げな黒くてデカいのがすりすりしてきましたので、


 やむを得ずスキンシップタイム突入。



 ご機嫌を損ねないために、やむを得ず、ですから。


 決して、漆黒のツヤッツヤな毛皮に辛抱たまらんかったからでは無いのです。


 ええ、無いのです。




 ウッヒョー、ナニコレッ


 モフモフモフモフモフモフモフモフ



 ……



 ナイトウルフ変異種は、極上のモッフモフでした。


 さすがは魔猫に匹敵する最上級の毛皮の持ち主。


 まさに、ゴージャスでラグジュアリーでマーベラスでファビュラスで……


 とにかくスゲェ!



 ってな感じで、全身全霊でモフって絶頂してるところにイリーシャさんが戻って来ちゃったわけで。




「確かにサイリ殿の側にいると癒される、が、流石にこれはやりすぎだろう」

「だいたい、テイマーでも無いのに、なぜこうなる」


 いえ、どっちかって言うと癒されてるのは僕の方なのですが。



「とりあえず、なでなでする手を止めてほしいのだが」


 いかにイリーシャさんのお願いでも、そればっかりは。


 ほら、お腹をなでなでするとめっちゃ喜びますよ。



「それで、これからどうするのだ、この状況」


 まあ、アイデアは無きにしもあらず、ですが。



「サイリ殿がその言い回しをする時は、だいたい大ごとになる」


 さすがはイリーシャさん。


 以心伝心、ツーと言えばカー、もはや若夫婦を越えた老夫婦。



「殴りたくても、この状況では手が出せん……」



 ……



 ただ今、全身でモフモフしております。


 いえ、誇張表現では無く、文字通り全身で、ですよ。


 ナイトウルフ変異種の背中にぺたんと張り付いているので、必然的に全身でモフっちゃうわけで。


 だってほら、腰、やっちゃってるんで、カッコよく背筋を伸ばしてまたがったり出来ないんですって。


 つまりは、全身モフモフ、略して全モフ。



 えーと、撤収中です、依頼が片付いたので。


 腰をアレしたひょろ男は、せっかくだからゲットした討伐対象に乗って、いや、張り付いて移動中。



「なんだか、あの村の人たちに申し訳ないと言うか……」


 でも、あの人たちの生活圏からナルンを遠ざけるという依頼はこなせたわけで。



「それはそうだが……今なんて?」


 こんなに懐いてくれているのに、種族名呼びなんて失礼じゃないですか。


 ナイトウルフ変異種って長すぎるし。



「で、ナルン……」


 なかなか可愛いですよね。


 変異種だからナルへ、うん、やっぱりナルンの方が……



「もうナルンで良かろう」


 ご賛同、ありがとうございます。



「連れて行くのだな、我が家に」


 はい、良いアイデアですよね。


 うちの庭にナルン小屋を建てて、後は自由に結界を行き来出来るようにすれば、


 家の周りの多すぎな魔物も、良い感じに間引きされちゃうかなって。



 つまり、ナルンは安心できる住処と獲物いっぱいなナワバリで暮らすことが出来て、


 僕たちは好きな時に好きなだけモフれる。


 まさにウィンウィン!



「問題は、サイリ殿が誰にも相談せずにひとりで決めたこと、だがな」


 あえて言うなら、もうひとつ問題が。



「?」


 フィナさんとフィグミさんは、おやつでもおもちゃでもないって、しっかりナルンに教えなきゃ。



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