12 特性
「お疲れさまでした、サイリさん、イリーシャさん」
「初めまして、ナルンさん」
おっとサプライズ!
本当にご無沙汰しております、けんちゃん。
おや、アヤさんは?
「今は、お留守番してる皆さんと、お疲れさま会の準備中、ですよ」
なるほど、いつもお気遣い、ありがとうございます。
イリーシャさんは……けんちゃんにご挨拶したら、すぐに行っちゃいましたね。
ナルンは、僕の影に入っちゃいましたよ。
緊張してるのかな。
それでは、と。
えーと、早速ですが、いくつか質問、よろしいですか。
「遠慮なく、どうぞ」
……
けんちゃんに、最近起こった諸々の件、相談してみました。
まず、ひとつ目。
最近の僕の固有スキル不調の件。
で、どうやらこれは、ナルンが関係していた模様。
「ナイトウルフは本来、肉体的にも魔力的にも文句なしの強さを誇る、かなり上位の種族です」
「そして、ナルンさんが変異種と呼ばれるほどに変化したのは対固有スキル能力」
「脅威となりうる固有スキル持ちへのジャミングが可能になったようなのです」
「サイリさんの特異な固有スキルを妨害出来るほどに」
「今はサイリさんに興味津々みたいなので、警戒してのジャミングと言うよりは、構ってほしくてじゃれてる感じ、なのかな」
なるほど納得、なのですが、せっかく同居するほど仲良くなったのだから、もう少々手加減してほしいかな、なんて。
「フィナさんにお願いすると良いですよ」
?
「フィナさんの『通訳』は固有スキルではなく種族特性ですので、ナルンさんとの意思疎通も問題無いかと」
ふむ、それでフィナさんだけがフィグミさんと"お話し"出来たのですね。
では、フィナさんの方からナルンへ、僕の固有スキルへの干渉はほどほどに願います、と。
「ナルンさんの『固有スキルジャミング』も、種族特性の一種だと思われます」
「もちろん種族特性も固有スキルのようにレベルや"格"がありますので、普通ならサイリさんクラスの固有スキルは影響を受けないはずなのですが」
「要するに、こういう能力はサイリさんの天敵にも成り得ますので、悪意を持った高位の種族特性持ちには要注意、ですよ」
あれからだいぶ敵も増えちゃいましたので、気を付けます……
それと、ふたつ目。
どうやら僕は、謎の癒し成分を放出してる、らしいのです。
みんなは"サイリウム"なんて呼んでますが……
「もちろん間違い無く実在してますよ」
「僕は、"サイリウム"はサイリさんの自己防衛反応じゃないのかな、と」
?
「特殊すぎる固有スキルのせいで、なにかとトラブルに巻き込まれやすい自身を守るために、敵味方を識別出来る特殊な成分を放出している、と解釈してます」
えーとつまり、"サイリウム"に惹かれる者は、本質的に味方、だと。
「その解釈で正解かと」
なんだかちょっと困った能力ですね。
すっごく良い人と知り合って仲良くなりたいのに、もしその人が"サイリウム"が苦手だったら……
いや、あっちの方が問題だぞ。
"サイリウム"目当てで我が家に無断侵入されちゃう件、
誰とは言わないけど、トラブルの"導き手"な"占い師"とか……
「こればっかりはケースバイケース、でしょうか」
「人がひとりひとり違うように、お付き合いの仕方も人それぞれかと」
「でも、なんだか嬉しいです」
「世間との関わり自体に悩んでいたサイリさんが、自ら望んで人と関わる方法を模索してるなんて」
うれしさも中くらいなり、ですかね。
なにせ根っこの部分は全く進歩してませんから。
「これからもどんどん"サイリウム"大好きな人たちが集まってくると思います」
「乞うご期待! ですね」
勘弁してくださいよぅ……
えーと、他には、っと。
『お料理、出来てますよ』
はーい、いま行きまーす。
「"サイリウム"大好きなファン筆頭ですよね、プリナさん」
……早く行かないとアヤさんからおしおきされちゃいますよ、けんちゃん。
おっと、最後にひとつだけ。
ナルンをモフってもベルちゃんの時みたいにバッドトリップしないのはなぜですか。
「イヌ科だから、ですよ」
?
「サイリさんのアレは、ネコ科のみで発症するようなのです」
「つまり、ベルちゃんなどのネコ科はNG」
「ナルンさんのようなイヌ科系統なら問題無し、ですね」
マジスカ!
「はい、それと、さらに重要な注意点がもうひとつ」
「どうやらあれは、獣人さんにも適用されるようなのです」
「つまり、ネコ系獣人さんたちとのスキンシップには気を付けて、なのですよ」
マジッスカ!?




