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ショートショート5月~3回目

ヒロくんはコッペパンだった

作者: たかさば
掲載日:2022/05/09

 ・・・今日も私は、息子と共に、散歩に出かける。


 フフ、ずいぶん風が気持ちイイ。

 もう、季節が変わる頃なのかな。



 ・・・今日も私は、息子と共に、散歩に出かける。


 少し汗ばむ季節になったみたい。

 震えていた頃が、懐かしい。



 ・・・今日も私は、息子と共に、散歩に出かける。


 日差しが眩しい季節になった。

 あたたかい風が私を包んだ。



「おかあさん、外は・・・気持ちイイね。」


 息子がニッコリ笑っている。


「うん、外は・・・いいね。」


 私も、ニッコリ微笑んだ。



 ・・・今日も私は、息子と共に、散歩に出かける。


 眩しい光が、私と息子を照らす。

 半袖で来たから、日焼けしてしまいそう。


「おかあさん、見て・・・僕、焼けちゃったみたい。」


 息子がニッコリ笑って右腕をさしだした。


「フフ・・・日に焼けて、コッペパン色になってる!」


 私は、ニッコリ微笑んだ。



 ・・・今日も私は、息子と共に、散歩に出かける。


 強い日差しが、私と息子を照らす。

 じりじりと焦げてゆく、私と、息子。


「フフ・・・すごくおいしそうな腕だね!」


 半袖の、むちむちした、息子の腕。

 ほどよく日に焼けた、コッペパンみたいな腕。


 息子がニッコリ笑って、右腕をさしだした。


「たべていいよ?」


 私は、遠慮なく、息子の腕にかじりついた。


「ウーン・・・ただの、腕だった!」


 私がニッコリ笑ったら、息子はエモイワレヌ顔をしていた。



 ・・・今日も私は、息子と共に、散歩に出かける。


 眩しい光が、私と息子を照らす。

 半袖で来たから、日焼けしてしまいそう。


「今日もヒロ君の腕は、おいしそうにこげているね!」


 息子がニッコリ笑って右腕をさしだした。


「たべてみる?」


 私は、遠慮なく、息子の腕をかじった。


 ・・・口の中に広がる、香ばしい小麦の香り。

 ・・・鼻に抜ける、食べ物の香り。


「おいしいでしょう?」


 もぐ、もぐ・・・・・。

 美味しそうな息子の腕は、コッペパンだった。


 もぐもぐもぐ・・・。

 美味しい美味しい、美味しいが止まらない。


「おいしい?」


「うん、美味しい。」


「じゃあ、もう・・・大丈夫かな?」


 美味しい腕を持つ息子は、右手を私に食べられて、ニッコリ笑った。


「おかあさん、コッペパン、食べられるようになってよかったね。」


 コッペパンの息子は、ニッコリ笑っている。


「おかあさん、僕、おかあさんの事、大好きだよ。」


 息子が、ニッコリ、笑っている。


「おかあさんと毎日一緒にお散歩して、毎日一緒にお話して、すごく楽しかったよ。」


 息子が、笑っている。


「おかあさんが、美味しくコッペパンを食べられるようになって、良かった。」


 息子が、いる。


「大丈夫、もう・・・生きていけるからね。」


 息子が、消えてゆく。


「少しづつ、色んなことを・・・思い出していこうね。」


 大好きな息子が、消えてゆく。


「食べ物が、おいしいということ。」


「外が、眩しいということ。」


「笑うこと。」

「泣くこと。」

「許すこと。」


 今はもういない、大切な息子が、消えてゆく。


「僕、おかあさんのこと、大好きだったよ。」



 息子が、消えてゆく・・・。


「僕、心配で、たまらなかったよ。」



 大好きだった息子が、消えてゆく・・・。


「おかあさんの、壊れた心がなおって、よかった。」



 大好きだった息子がいない世界が、みえてくる・・・。



「おかあさん、ありがとう。」



「うん、ヒロくん、ありがとう。」



 私が、息子に、お礼を告げると。



 ―――重岡さん!


 ―――重岡さん、奥さんが!!



 ―――自分から…食事を!!



 ―――ああっ!コッペペンが!!



 私が逃げ出した、遠い世界から・・・声が届いた。



 

 おかあさん!


 重岡さん!!!



 わ、笑ってる!!


 泣いてる・・・泣いてる!!




 私が逃げ出した、現実から・・・声が届いた。




「た、珠恵!」




 私は、ぼんやりとしながら・・・声を、届けた。




「おいしいコッペパン、ありがとう・・・。」




 私が、ニッコリ、微笑むと。




 大好きだった、おとうさんが。




「うん、うん・・・!」




 私をみて、・・・泣いた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 私も、泣いた。 まさかこんな風なオチになっていくとは。おどろきでした。 いつもの、むしゃむしゃバクバクな家族の話かと思って、油断していました。
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