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94.再びネルディアへ

「……ちょ、ちょっと待ってルギーレ!! 誰か来たわよ!!」

「え?」


 ルディアの焦った声に我に返ったルギーレ、それから彼女のセリフに別の方向を向くシャラードが見たものは、ズンズンと三人の方に向かって歩いてくる複数の男女の姿だった。

 揃いも揃って緑色を基調とした服装をしていることから、まさか新たな敵かと思ってレイグラードを構えるルギーレだが、それを止めたのがシャラードだった。

 しかし、その彼の顔には焦りの色が浮かんでいる。


「チッ、こりゃあちょっと厄介な話になりそうだぜ……」


 なぜならやってきた人物たちは、この国にとってなくてはならない存在であるとともに、シャラードにとっては天敵のような組織でもあったからだ。

 そのやってきた人物たちのうち、先頭に立っている銀髪をオールバックに撫でつけた若い長身の男が口を開いた。


「おい、お前ら何もんだ? こんな所で何してやがる?」

「あ、あの……私たちはこの倒れている人たちに襲われたんです!!」


 ルディアが事実を言うと、銀髪の男は腰に下げているロングソードの柄に左手をかけたままジリジリと歩み寄ってきた。

 それを見て、ルギーレはファルスのルザロと初めて出会った時のことを思い出していた。


(あの時もこんなことがあった気がするけど……って、そうじゃねえ!)


 今はそれよりももっと考えなければならないことがある。

 ルギーレは意識を銀髪の男に集中させたが、彼はルギーレが今しがた倒した農機具の方に目を向けた。

 そして部下たちに向かって何かを二言三言話した後、更に三人に向かってきて口を開いた。


「おい、その後ろで燃えてるのって違法改造された魔術兵器だよな?」

「魔術兵器?」

「ああ、どうやらそうみたいだ。それで俺たちが襲われたから返り討ちにしたんだ」


 聞き覚えのない言葉にルギーレが首を傾げるが、今のやり取りからするとシャラードは心当たりがあるらしい。

 そしてそれを聞いた銀髪の男は、はぁーっと溜め息を吐いて部下らしき他の男女に声をかける。


「おいお前ら、とりあえずこの三人と向こうで倒れてるやつら全員しょっ引け。それからロオンとかジェクトにも声かけておけよ」

「ロオン……ジェクト……? あっ、もしかして!」


 続いて反応したのはルディアである。

 彼女は男のセリフの中の名前らしき単語に聞き覚えがあるらしい。


「あなたってもしかして、バーレン皇国騎士団の人ですか!?」

「ああ、そうだけど。この制服見りゃあわかんだろ?」

「ええ、もちろんです! ロナ様はお元気ですか?」

「元気だよ。ってかお前は誰なんだよ?」


 そこか面倒くさそうに答える銀髪の男だが、ルディアはそんな態度すら気にしていない様子で自分の身分を明かした。


「私、ルディアです! ロナ様には以前お世話になりました!」

「ん、ああ……そうなのか? だったら話は早えや。とりあえずネルディアの詰め所に来てもらおうか。それからいろいろと聞かせてもらうぜ」


 こうして、何も情報を得られなかったネルディアへと逆戻りすることになった。

 そしてそこで魔術兵器という単語の意味、それからルディアとバーレン皇国のロナという人物の関係が明かされる。



 ◇



「じゃあ、あの連中は単純に麻薬を作ってただけだったってのか?」

「ああ。魔術兵器に関しては黒ずくめの男から買ったらしいんだ。農作業に役立つ上に、魔物まで簡単に追い払うことができるって宣伝をされて、仲間内で金を出し合って買ったらしい」


 ネルディアにある皇国騎士団の一角にある大きな会議室において、シャラードと銀髪の男が向かい合って喋っていた。


「ふーむ、ってこったぁファルスに入ってくるのも時間の問題かもしれねえな」

「ふそういやー、あんたはファルスから来たんだったな。でもいいのかよ? 将軍様の一人がこうやって国を開けっ放しにしててよ?」

「仕方ねえだろう。俺だって陛下から頼まれたのもあってその黒ずくめの奴らぶっ潰すまで帰れねえんだからよ」


 その横では複雑そうな表情で、銀髪の男とシャラードのやり取りを聞いているルギーレとルディアの姿があった。

 そしてボソボソとルギーレがルディアに質問する。


「……今の話の中に出てきた魔術兵器って、魔術を利用した兵器ってことだよな?」

「そうね。話を聞いていてなんだか引っかかってたんだけど、ようやくピンと来たわ。魔術を使った様々な新兵器を世界のどこかで開発しているって話が合ったんだけど、それをあの黒ずくめの集団が売りに来たらしいわね」


 しかも、その魔術兵器が既にバーレン中に行き渡っていることを知った三人は頭を抱える。


「くっそ、まさかこんな展開が待ってるなんて思いもしなかったぜ! とりあえずこのことはセヴィスト陛下に報告させてもらうけどいいか?」

「あ? まぁ……俺はいいと思うけど」

「じゃあ一応報告させてもらう。騎士団にもそんな危なっかしいもんを入れんなって警備を強化してもらうよう頼んでおくわ」


 シャラードが魔晶石でファルスに連絡を取り始め、銀髪の男の視線がルギーレとルディアに向いた。

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