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91.目撃情報

「見た?」

「うん。あそこで出店をやっているおばさんが、その黒ずくめの人を見たって」

「でかしたぞルディア!」


 最初の村から出て西へと向かい、ネルディアを通り過ぎて反対側にある村へと向かった三人は、ようやく黒ずくめの集団の情報を手に入れることができた。

 そしてその情報を頼りに向かったところは、またしても身の危険を感じる場所だった。


「こ、ここ……?」

「ここってどう見ても……」

「うん、畑だな」


 辺り一面、畑。

 そしてこの周辺はきな臭い話があるらしい。


「その情報提供してくれたおばさんって、そんなこと言ってたのか?」

「ええ。この辺りは昔から治安が悪いから、あまり近づかない方がいいって言ってたわ。騎士団が定期的に巡回に来ているみたいだけど、それでもなかなかいたちごっこらしいし」

「いたちごっこって……何かやってんのか?」

「何でも、この辺りはいろいろな作物を作ってる畑なんだけど、実はその中に麻薬の原料となる違法な薬草を作ってるって話があってね。それで騎士団が定期的に来てるんだって」

「ま、麻薬!?」

「おいおい、そりゃあ穏やかじゃねえなあ」


 ルギーレもシャラードも驚きを隠せない。

 しかし、シャラードからしてみるとこうした麻薬の栽培はファルスでもあるらしいのだ。


「俺も貧民街の見回りをしていた時はいろいろ話を聞くことはあったんだけどよ。麻薬って奴ぁ、手軽に快感を味わえるってことで闇の世界ではよく出回ってんのよ」

「ああ……それは俺も勇者パーティーにいたころに何度か聞いたことがありますね。麻薬は一度ハマると抜け出せないから、手を出さないのが一番だって。俺たちは当然その麻薬に手を出したりはしてませんでしたし、そもそも叩き潰す側の人間でしたし」

「ん? ちょっと待って。じゃあこの辺りでその黒ずくめの集団が見られたってことは……もしかして麻薬の栽培にもかかわっているってことかしら?」


 その可能性はおそらく高いだろう。

 あの連中は単なる傭兵集団ではなく、普通に犯罪者である。


「あるだろうな。ファルスで怪しい薬の開発をやっていたって報告は受けてるが、その薬の成分から麻薬が検出されたんだ」

「ええっ!? それを早く俺たちにも言ってくださいよシャラードさん!!」

「すまねえ、この話の流れで思い出したんだ。んで……麻薬の成分と興奮剤、それから幻覚剤が検出されたブレンド薬だって話も受けてる。ただ、原料がどこから手に入ったかはまだ分かってねえらしい。その辺りの資料は工場からは見つかってねえそうだからな」

「そうですか……」


 しかし、もし仮にこのバーレンのこの辺りから麻薬の原料となる薬草がファルスまで運ばれて生成され、それが人間たちに打ち込まれていたとしたらファルスはとんでもない失態を犯していたことになる。

 麻薬の原料を国内に持ち込まれていたからだ。


「とりあえずこの近くに人里があるかどうか、もしくは人間がいないかを探してみないか? その人だったらさらに詳しい話が聞けるかもしれねえ」

「そうですね。でも、治安が悪いっていうんだったら用心しないと」


 ルディアの話を聞き、男二人はいつでも武器を構えられるように警戒しながら人里を探してみる。

 その畑は平原から少しそれた脇道の奥にあるのだが、こんな場所でこれだけの面積の畑を作るならそれなりの人手や道具も要るはずだ。

 だからきっとこの近くに道具や人手を置いておくための建物があるに違いないと踏んだ三人の中で、最初に違和感を覚えたのはルギーレだった。


「……ん? なんか焦げ臭くねえか?」

「え、そう? 私には何も感じないけど」

「俺も何も感じねえぞ?」

「いや……俺は感じますよ。多分これもレイグラードの能力向上のせいかも」


 そのままくんくんと鼻を利かせながら、焦げ臭いにおいの方へと進んでいくルギーレとそれについていく二人が見たものは、もうもうと立ち昇る煙と何かを燃やしている複数の人間たちの姿だった。


「……おい、あいつら何やってんだ?」

「さぁ……分からないけど何かを燃やしてるわね。それも人目につかないように街道から離れたこんな森の中で」

「ちょっと話を聞いてみっか」


 先頭に立ったのはシャラードであり、油断なく槍を片手にその野焼きをしている連中の元へと歩いていく。

 その横には大きな納屋があった。


「おい、そこで何してんだ?」

「なっ、なんだお前ら!?」

「おい、まさかこの連中は騎士団の奴らじゃねえか!?」

「お……おいおい待て待て、俺はただ単に通りすがりの……」

「うるさいわね、騙されないわよ!!」


 シャラードが声をかけただけで、そこで野焼きをしていた複数の男女は慌てふためいている。

 しかも二十人ほどいるその全員の目つきがなんだかおかしい。

 これはもしかすると……とシャラードが感づくのと同時に、そのおよそ二十人が武器を片手に一斉に襲い掛かってきた。

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