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86.まさかの展開

 そして翌日、最初の聞き込み場所である村へと行くべくキャンプを撤収して歩く三人。

 すると、たどり着いた先の村で黒ずくめの連中に対する情報が得られたのだが、それは同時に自分たちの命の危険を伴うものであった。


「……なんだって?」


 人生経験が豊富なシャラードも、村人たちからの返答に自分の耳を疑う事態になった。


「だから、勇者様たちがそんな悪い奴と一緒にいるわけないだろ!!」

「そうよそうよ! 勇者様たちが町を襲う連中と一緒に行動しているなんて言いがかりも良いところだわ!!」

「いや、あの……言いがかりじゃなくてそれは事実なんですけど……」


 勇者パーティーのことをなぜ聞くんだ? と訝しげに逆質問してきた村人たちに事情を詳しく説明したことが、逆に裏目に出てしまったらしい。

 それに加えて、自分たちがファルスからやってきたことをなかなか大っぴらに言えないのも追い打ちをかけてしまった。

 どうやらこの国では勇者パーティーがかなり信頼を得ているらしく、パーティーの悪口や批判はご法度だったらしい。

 それでもファルスの町や帝都が襲われたのは事実だし、黒ずくめの連中の一人がパーティーメンバーを脱獄させたのもまた事実だったので、それをきちんと説明するしかなかった。

 その勇者たちへの批判、それから自分たちの正体を明かせないことから村人たちの反感を買い、次々に武器を持って三人のもとへ集まってきてしまった。


「出ていけ! 勇者様たちの悪口を言う者は許さんぞ!」

「そうよ! あの方たちがどれほど私たちの生活を助けてくれたのか、あなたたちにはわからないからそんなことが言えるんだわ!!」

「さっさと出ていかないと力ずくで追い出すぞ!!」

「くそっ……撤退するぞ!!」


 勇者パーティーの言っていることは絶対、というバーレンの人間たちに襲われるというまさかの展開によって、そのまま撤退するしかなく満足に情報収集することができなかった三人だったが、それでも全く情報がなかったわけではないのだ。


「あの連中、この村に立ち寄って食料を確保した後でさらに西へと向かったらしいな」

「ええ……となるとネルディアでいろいろと情報が集まらなければおかしい気もするんですけど、ファルスを襲ったこともあって情報が流れてるかもしれないから警戒したのですかね?」


 シャラードとルディアは混乱する。

 どうにかしてこの混乱の解決の糸口を見つけなければならないのだが、そういえばいるじゃないか。勇者パーティーと関わりの深かった人物がこんなに身近に。


「おいルギーレ、あの灰色のドラゴンの時に話は聞いたが、お前はもともと勇者パーティーの一員だったらしいな?」

「ええ、そうですけど……」

「だったらお前、何かわかるんじゃないのか? あの連中をここまで慕ってた村の連中の言い分がさ」


 その質問に、ルギーレは勇者パーティーにいた時のことを思い出した。


「それは……このバーレン皇国が貧しい国だってことが関係していると思います」

「何か援助でもしてたの?」

「そうなんだよ。勇者って人々の憧れとか尊敬を集める存在でもあるだろ? で、その期待に応えるべく俺たちはいろいろな国でいろいろなことをしていたんだよ。例えばシャラードさんのいるファルスだったら橋を直したり道を造ったりとかの公共事業の手伝いをしたりしてた。バーレンだと逆に騎士団に余裕がないから昨日みたいに魔物を討伐したりしてたよ」

「ああ、それは俺も聞いたことがあるぜ」


 ファルスの騎士団はプライドが高い人間が多いが、警備隊は来るもの拒まず去るもの追わずの精神なので、魔物討伐も手伝ってくれるのであれば手伝ってほしいというのがシャラードを始めとする警備隊員たちの本音だったらしい。

 しかし、そこは騎士団の任務で魔物討伐に出かけてしまうので結局その必要はなかった。

 ルギーレやマリユスもそれはわかっていたので、騎士団の邪魔になることはせずに国民たちを手伝うことをしていたのだ。

 このように国によって勇者たちが協力することも変わるのだが、バーレンでは魔物の討伐のほかにも騎士団の訓練に一緒に参加したり、ファルスと同じく村や町のいろいろな手伝いをしたりとその活動は多岐に渡ったのだ。


「ある時は迷子探しをしたり、ある時は川の水を運ぶためにリレーやったり、ある時は古くなった建物の解体工事の手伝いをしたりってやってって、それで国民からの信頼を得ていたんだ」

「じゃあ、村の人たちが勇者たちの悪口を言われたらあれだけ怒るのもわからなくもないけど……あれ? ルギーレって顔を覚えられてなかったの?」


 仮にも勇者パーティーの一員だったのに、ルギーレはさっきの村で初対面のルディアやシャラードと同じ扱いをされていた。

 そこが引っかかったルディアの質問に、ああ……とルギーレは遠い目をしながら答え始めた。

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