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84.徹底的な特訓・その1

 自分自身がギルドランクを上げてマリユスたちと肩を並べられるようになるためにも、レイグラードにまつわる妙な話を今しがたルディアから聞いたのをひっくるめても、ルギーレは魔物たちとの戦いがひとまず終わったのを見計らってシャラードに稽古をつけてもらうことになった。

 一方のシャラードにとってはセヴィストからの命令であるとはいえ、いつまでもレイグラード頼りの戦い方をされていては、ルギーレはいつか壁にぶち当たると考えていた。


「俺は見ての通り普段はロングソード使いじゃねえけど、騎士団でも警備隊でも一通りの武器術や体術は習うからな。だからえっと……ああ、ちょうどいいのがあるじゃねえか」


 自然が多いのが特徴のバーレンでは、現在いる平原でこんな物も見つかった。

 シャラードがキョロキョロと周囲を見渡して拾い上げた、ロングソードよりも多少短いものの振るにはちょうどいい細長い丸太があった。


「多少いびつだけど使えるだろ。よし、まずは俺がこれを使うからお前はその聖剣とやらでかかってこい。ただし、変な技とかは無しであくまでも剣術だけで勝負だぜ」

「わかりました。それじゃよろしくおねがいします!!」


 魔物たちが近くにいないことを見計らって、ルギーレとシャラードがそれぞれの武器を構えて向かい合う。

 早速ルギーレがレイグラードを振り上げて向かっていくが、聖剣の加護を受けているだけあってスピードもパワーもある振り下ろしの一撃を繰り出す。

 しかし、相手は百戦錬磨のファルス帝国警備隊総隊長。

 今回は旅人という設定なので、いつもの傷だらけで重武装の甲冑とは違い綺麗で簡素な鎧を身につけているだけだが、その分いつもよりスピードが上がっている。

 ルギーレの目の前からシャラードの姿がフッと消えたと思ったときには、すでに首筋に横から丸太が軽く打ち付けられていた。


「……!?」

「よし、お前の首は頂いたぜ」


 一瞬だった。

 文字通り一瞬で勝負が決まったのだ。

 これがもし実戦だったとしたら、ルギーレの命はこの世から無くなっていたのである。

 そう、例えレイグラードがあったとしてもだ。

 炎の悪魔との死闘や東の町での戦いで負けなかったのは、運が良かったのとレイグラードの強大な力があってこそだったと言えるだろう。


「これが今のお前の実力だ。おいおじょーちゃん、今の俺がどんな動きをしたか見えたか?」

「え、ええ……うっすらとですけど」

「じゃあ言ってみろ」


 おじょーちゃんと呼ばれることにはもうこの先で突っ込むのはやめておこうと決心しつつ、ルディアはシャラードの動きを思い出した。


「はい……一瞬でルギーレの横に回り込みました。そして丸太をルギーレの首に突きつけました」

「んー、おしいなぁ。俺は突きつける前にもう一つ動いてたんだぜ?」

「え?」

「おいルギーレ、何か感じなかったか? 俺に打ち込んできたときに」

「打ち込んだ時……あ!」


 そうだ、シャラードに向かってレイグラードを振り下ろしたときに一瞬だが身体が横にブレる気がした。

 それをシャラードに説明すると、彼はうなずいて正解だと言う。


「当たりだ。俺はお前のそのロングソードを横に弾いてバランスを崩し、そしてお前のがら空きの首筋に突きつけた。それだけであっさりと殺すのなんて可能だからな、人は」

「う……」


 この時、ルギーレはある事を思い出していた。

 同じくレイグラードを使ったのに、一瞬で倒されてしまったあの医者との小競り合いを。

 もっとも、あの時は相手が灰色のドラゴンだとわかっていなかったので驚きがかなりあったのだが、もしわかっていたとしても同じ結果になっていただろうとルギーレは回想した。

 そんなルギーレに対し、シャラードはもう一度打ち込んで来いと言い出した。


「今度は打ち合いをするぜ。最初から勝負を決めに行くことは俺もしねえから、攻撃のバリエーションを見せてもらうとしよう」

「はいっ」


 さすがに打ち合いともなると真剣と丸太では丸太がすぐに切られてしまうので、本来の自分の武器である槍を持ち出すシャラード。

 そんな彼に向かってルギーレは再びレイグラードを構え、今度は横からの薙ぎ払いを繰り出した。

 ギィンと音をさせてルギーレの攻撃を槍で受け止めるものの、打ち合いのスキルを見るので反撃はせずに、防御に徹するシャラード。

 それに対してできる限りのバリエーションで一合以上もの間攻撃を繰り出し続け、ルギーレの息が上がってきたところでシャラードはストップをかけた。


「うし、まあ大体の実力は分かった。お前がやるべきことは大きく分けて二つだな」


 この二つの実力の見極めをした上で、シャラードはルギーレに対する練習メニューを決める。


「まぁ俺と違って若いから体力は有り余ってるだろうし、お前に必要なのは正確なロングソードさばきと、パワーに頼らないヒットアンドアウェイだな」

「有り余ってる……?」


 そのシャラードのセリフにルギーレは違和感を覚えた。

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