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83.最近気が付いたこと

「くそっ、想定外だったな……」

「俺もですよ。まさかこの首都で何も手掛かりが得られないなんて……」

「こうなったら計画を変更して、村とか他の町をいろいろと当たってみるしかなさそうね」


 ネルディアで情報収集をした結果、あの黒ずくめの連中に関する情報は何も見つけられなかった。

 冒険者ギルド、酒場、武器屋に防具屋、果ては騎士団の詰め所まで手分けして探ってみたものの、全く収穫がなかったのだ。

 人がかなり多いからということでここまではるばるやってきた三人だったが、まさか都で何も手掛かりが得られないとは思っていなかったので、どうしても納得がいかない。

 普通はあんなワイバーンが空を飛んでいたら、どこかで目撃情報があってもおかしくないはずなのに。

 それとも人に目撃されやすいこのネルディアの上空を飛ぶのは避けて、あえて辺境の町や村を目的地としていたのであれば、シャラードの読みは大きく外れてしまったことになる。


「しゃーねぇ、とりあえずここから一番近いって言ってた村に向かうとすっか」

「そうですね」


 騎士団の詰め所にまで情報を求めていったので、変に噂になる前にさっさと退散して地道に手掛かりを探すしかなさそうだ。

 それにもしかしたら、あの連中はこのバーレンを超えてヴィルトディンに向かったのではないか?

 そうすると北の方に向かって情報収集のルートを決めるといいかもしれないと考えた三人だったが、この国では一行の行く手を阻む者が数多く現れるのだった。


「くっそ、さっきから魔物がまた襲ってきやがる!!」

「本当ね! 片手で数えるほどしかバーレンには来ていないけど、この魔物の多さは異常よ!!」


 そう、魔物の存在である。

 エスヴェテレスでもファルスでも魔物と戦った経験のあるルギーレとルディアだが、バーレンは自然が多い国だけあって魔物の繁殖がかなり盛んな状況なのだ。


「まぁ、先の戦争でだってファルスがバーレンの連中をこの国の中に追い詰めていったときには、苦労したのが魔物の処理だったらしいぜ」


 シャラードが言うとおり、魔物が多い場所にファルス帝国軍を誘い込んで壊滅状態に持ち込まれそうにもあったので、この辺りは土地を熟知しているバーレンならではの戦法といえるだろう。

 そんなこんなで魔物をせん滅し、各々で体力を回復したり武器の手入れをしたりしていると、不意にルギーレが口を開いた。


「なぁ……俺さ、最近気が付いたんだけど」

「何?」

「前にも少し話したかもしれないけど、この聖剣を手に入れてから徐々に力とか能力が上がってる気がするって」

「うん」

「でも、それって普段はそう感じないんだよ。いつも通りだと思ってたんだけど……こうして魔物とか人間を相手にして倒していくと、その分だけ強くなってる気がするんだよな」

「へー、なるほどなぁ」


 バーレンだけではなく、ファルスでの戦いでだって最初のエスヴェテレスでの戦いだってすべてそうだった。

 少しずつ自分が強くなっている。

 その実感はあるものの、もしかしたらこれは自分自身が強くなっているのではなく、聖剣の力が上がっているのではないのだろうか?

 そう考えるルギーレに対して、ルディアは聖剣とルヴィバー・クーレイリッヒにまつわるもう一つの話を思い出した。


「歴史書に書かれているルヴィバーの話なんだけど、彼はイディリーク帝国を建国した後に亡くなったって話だったでしょ。その最期がかなり壮絶だったらしいのよ」

「壮絶……?」

「うん。私もヴィーンラディの国王様とかその関係者の人から聞いた話だから信ぴょう性は限られるけど、聖剣レイグラードを手にして幾多もの戦場を駆け巡ったルヴィバーは、死ぬときには黒いモヤに囲まれてかなり苦しんで、モヤによって一切の外部との接触を妨害されて火葬も土葬もできないままそのモヤと一緒に消えちゃったらしいのよ」

「く、黒いモヤだぁ?」

「ええ……そのモヤの正体なんだけど、魔術師たちが言うには今までその聖剣が吸い取ってきた命の、もっと言うと怨念みたいなものの塊なんじゃないかって。だからそれが全部使用者に跳ね返ってきたんじゃないかって」


 それを聞いて、思わずルギーレは身震いをする。

 普段は楽観的な彼でも、聖剣や自分の命にまつわる話となるとまた別なのだから。


「お……おいおい、冗談言うなよ。だったらこの聖剣は命を吸って生きているってことなのかよ?」

「その話によるとそうなると思うけど、でも言い伝えって言うのは長い年月の中で変化したり、解釈の違いで間違って伝えられたりするものもあるから絶対とは言えないわよ」


 しかし、一度そんな話を聞いてしまったら今後このレイグラードを使って戦うのはやめた方がいいのではないか?

 そんな思考が急速にルギーレの脳を支配していくが、それに待ったをかけたのがシャラードであった。


「だったらよぉ、将来的にはそのレイグラードに頼らなくても戦えるようにすればいいんじゃねえのか?」

「えっ?」

「簡単なこったろ。お前の戦い方を見てたけどあれじゃ粗すぎるし、技術もへったくれもねえからこれから特訓だぜ」

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