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82.水の皇国バーレン

 帝国各地襲撃の騒動があってから三日後。

 ルギーレとルディアの二人は、そのファルス帝国の総警備隊長シャラードとともにバーレン皇国行きの列車に乗ってきていた。

 そしてたどり着いたのが、一番情報を得られそうな皇都のネルディアだった。

 だがしかし、今のディレーディの部下という立場であるルギーレとルディアと同じく、シャラードにとってはこのバーレンに来るのは気が引けることだという。

 それもそのはずで、バーレンとファルスとで戦争をした事があり、その時にバーレンがファルスによって壊滅寸前まで追い込まれたからだった。


「お前たちも知ってんだろ? 二国戦争」

「もちろんです。二年もの間戦争してたって……」

「そうそう。俺たちがそれで勝って、停戦協定を結んで現在に至ってるんだがな。もともとはファルスの領土だってバーレンが制圧しに来たんだぜ?」

「そうらしいですね」


 武力にものを言わせてファルスから侵略しに行ったかと思われがちなのだが、実際はその逆である。

 もともとはバーレンがファルスを侵略しようとしたのだが、力をつけていたファルスが反撃してバーレンを退けただけでなく、その後に一気に押し込んで逆に壊滅寸前まで追い込んだのだという。


「基本的に争いは好まず、穏やかな人間が多い国って私は聞いたことがあるんですけど、そうじゃなかったんですね」

「ああ。そもそも先代の皇帝が好戦的だったらしくてさ。今のセヴィスト陛下もなかなか好戦的なんだが、それ以上に血の気が多い父上だったらしいぜ。そのころはまだ俺もガキだったから、警備隊に入隊してから聞いたんだけどよ」


 武術はファルスと同じくらいにバーレンはハイレベルなのだが、その戦争の傷跡が長引いてしまった結果国力を大きく下げてしまい、国自体は少し貧しくなってしまったらしい。

 ちなみに騎士団はその昔、バーレンの貴族達がシュア王国を建国しに行った為、平民出身の者のみで構成されている。

 魔術の発展に関してはファルスよりも数段優れており、バーレンがファルスに攻め込んだ時に魔術の差で負けそうになったこともあったのだ。


「大陸の警備は剣士部隊、魔術剣士部隊が騎士団の主力となって活動しているんだけどよぉ、その戦争で兵力を大きく失って兵士の数は少なくなってんだ。ファルスに恨みを持ってる奴らもいるぜ」

「でも最初にファルスに攻め込んだのはバーレンだったんじゃないっすか? それって逆恨みもいいところですよね」

「ああ、そうだよな。まったく迷惑な話だぜ」


 ルギーレが至極真っ当なことを言い、シャラードがそれに同意する。

 そんな敵ばかりかもしれない場所にやってきた三人だが、本当の敵を探すのが本来の目的なのでそれを忘れてはいけない。

 このバーレンは川や湖などが多い事から「水の皇国」と呼ばれる事もある。

 その理由は大陸の端から端まで大きく長い川が流れており、そこを船で移動するのが馬車と列車以外の交通手段でもある。


「西が上流で東に向かうにつれて下流になるから、船で全国をゆっくり行って情報を集めた方がいいですかね?」

「いや、黒ずくめの連中を逃がしちまったらどうにもならねえから列車で移動しようぜ。伊達に世界中に線路を敷いているわけじゃねえんだし」


 皇都ネルディアは大陸の上……川の上流にあり、逆に下流では農産物や穀物の生産が盛んな村が多い。

 そのためいろいろと情報が手に入るかと思って、数々の村を回りつつ船で国内を進むことを提案したルギーレだが、相手の機動力を考えてシャラードは列車での移動を提案した。

 それと同時に、ルギーレに対してシャラードはこんな約束もしておく。


「それからよぉ、俺……陛下からお前たちのレベルアップを頼まれてんだわ」

「へ?」

「何、それ? 初耳なんですけど……」


 レベルアップとは?

 まさか……とルギーレとルディアは顔を見合わせる。


「それってもしかして、俺たちの戦闘能力を上げるってことですか?」

「ああ、そうだ。その聖剣があったり、この世界を見守ってくれてるドラゴンと知り合いだったりするのはいいんだけどよぉ、黒ずくめの奴らだってなかなかの動きしてたから油断できねえだろ」


 実際にその黒ずくめの集団と一時的に一緒に行動したことのあるシャラードだからこそ、説得力のある発言だった。


「まぁ、魔術に関しては俺たちファルスの連中はあんまり使えねえけど、今回は事情を聴く限り槍使いの奴が勇者パーティーを逃がしたそうじゃねえか。だから同じ槍使いの俺をその敵だと思って相手にしろ」

「そりゃあ、まあ……俺たちにとってはうれしいですけど……」

「なんだよ、何か不満か?」

「どっちかっていうと、俺は冒険者ランクをもっと上げたいって思うんですよね。勇者マリユスはSランクだから、俺もあいつみたいにもっと強くなりてえんですよ」

「だったら好都合じゃねえか、冒険者ランクを上げんだったら強さも必要だろ?」

「あ、そうか」


 結局、シャラードの特訓を受けつつバーレン国内を進むことになったルギーレとルディアは、まずはネルディアの中で情報収集を始めるのだった。

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