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78.衝撃の事実

「え……!?」


 いきなり部屋の窓を叩かれて、思わずルディアは身構える。

 今日の出来事がまだ収まっていないので、まさか黒ずくめの連中の残党がここにやってきたのでは?


(いや、でもあの残党だったらこんな窓を律義に叩いてやってくるかしら?)


 そもそも律儀にやってくるはずがないのだが、何者かなのは確認しておかなければならないだろう。

 そう考えてルディアは自分の魔術をいつでも発動できるように準備をし、窓のそばに張り付いて様子をうかがおうとしたが、先にその来訪者が反応するのが先だった。


「……あれっ?」

「某だ、開けてくれ」

「え、いや……あの……」

「ここだと見つかる可能性があるから、さっさと開けてくれ」

「え、あ、はい」


 騒ぎから時間が経って夜になっているのが、不幸中の幸いだった。

 気迫に押されて窓を開けてしまったが、こんな所にこの男が来ること自体がまずいだろう。

 そもそもどうして、この男がここに来てしまったのだろうか?

 ルディアは誰か来ないように、もしくは誰かが来てもすぐに開けられないようにドアについている鍵を閉め、その上で男……医者に話を聞く。


「ちょっと、あなたどうしてここに来たんですか!?」

「いや、それがな……そなたたちがいただくはずだったレイグラードにはめ込めるあの宝玉の行き先が分かったんだ」

「へ?」


 はめ込める宝玉、というとセヴィストたちから報告があった、あのフードの男に取られてしまったお宝だろうか?

 医者はそれに対して肯定の返事をし、更に話を続ける。


「そうだ。その宝玉はシュア王国に向かっているらしい。それからあの勇者の連中も一緒だ」

「ということは私たちもシュア王国に向かうべきなのでしょうか?」

「それしかないだろうな」

「そうですか……でも、そう考えるとシュア王国なら何かヒントが見つかりそうです」

「ヒント?」

「ええ。実はですね……」


 あのフードの男が使っていた、魔術を一瞬で無効化してしまう攻撃のことをルディアが説明すると、医者はあることを思い出して口を開く。


「そういえばこんな噂を聞いたことがある。シュア王国で、魔術があまり使えない者でも魔術に対抗できる手段が発見されたと」

「え? それは本当ですか?」

「ああ。それも本当につい最近のことでな。某もシュアにいる知人から聞いたばかりだったんでそなたたちに報告しておけばよかったな」

「そ、それってどんな手段なんですか!?」


 あの男たちや勇者パーティーたちを倒せるヒントになるならば、少しでもその情報を得ておいた方がこの先で悔やむこともないだろうと考えるルディアに、医者は淡々とその話をする。


「それはシュア王国で開発された薬だ」

「薬……って、もしかして勇者パーティーが濡れ衣云々って言ってたあの……」

「いや、あれとは関係ない。あれはあの黒ずくめの連中が勝手に開発した、人間や魔物をベースに狂暴化させて生物兵器を生み出すための薬だ。あれもいずれは開発をやめさせなければならないがな。シュア王国の薬は、ヴィーンラディ王国と同じくらい魔術が発展していることから生み出されたものだ」


 ヴィーンラディとシュアが、この世界では魔術に関するツートップの存在だ。

 そして、先にその魔術を無効化させられる薬を開発したのがシュア王国だった。


「その薬を体内に入れた者は、黙って立っていても魔術の防御ができるのはもちろんのこと、自分に向かってきたどんな魔術でも攻撃をすることで先手を打って打ち消すことができるんだ」

「ええっ、それじゃあ魔術師は意味がなくなる……ってことですよね!?」

「残念ながらそうなるな。そなたの魔術が意味をなさなかったのはその薬を相手が服用していたからだろう。もともとはその薬を服用した者が、魔物の魔術攻撃から魔物の魔術を無効化して仲間を守るという目的で開発されたらしいが……どこからかその薬が外部に漏れてしまったようだ」

「ということはそのシュア王国の中に、あの黒ずくめの集団に薬の情報を漏らした内通者がいるということですか?」

「ああ、その予想で間違いはないだろう」


 これはもう、一国だけの問題ではなくなってきている。

 そもそもこのファルス帝国の中でも、警備隊の総隊長であるシャラードの行方がまだ掴めていないので、彼が黒ずくめの集団側についている可能性があるのだ。

 その上、シュア王国でも内通者がいる可能性が出てきたとなればもはや誰も簡単に信用できなくなってしまう。

 しかし、相手を信用できないのは医者もそうだった。


「……ところでそなた、あの件はバラしていないだろうな?」

「ああ、あなたとドッキングして一気にここまで飛んで、城の窓に突っ込んだことですよね? それはもちろんバラしていないですよ。バレたら大変なことになるでしょうし」

「事情聴取を兼ねた謁見の時には聞かれなかったか?」

「ええ、運がよかったです。他のことでいっぱいいっぱいで忘れられていたのでしょう」


 あの窓に突っ込んだことに関しては、それまでの記憶がないとルザロたちに押し通したルディア。

 その言い分がいつまで効力を発揮するのかはわからないが、とにかくバレる前にこの国から出ていきたい彼女のもとに、コンコンとドアがノックされて新たな来訪者が現れた。

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