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76.脱獄した勇者たちと追いかける預言者たち

 三人の女は、勇者パーティー一行の足取りを追って動き出した。

 その追いかけている途中で魔術によって絶命させられた騎士団員や、武器による攻撃で永久に眠らされた騎士団員を見つけた。

 もう脱獄するならなりふり構っていられないらしい。


(ルギーレが考えているよりも、これは話が複雑になっているのかも……?)


 勇者パーティーはあんなことをするような人間たちではなかった、と以前パーティーが捕まった時に自分に言っていたのを思い出したのだが、結局はこうして脱獄したというのを聞くとそうではなかったようだ。

 それに黒ずくめの集団がいる中で脱出したというのを考えてみると、もしかするとパーティーは黒ずくめの連中とつながっているのではないかとも思えてきたルディア。


(まだ推測の域でしかないけれど……でも、そうだとしたら無実を主張していたのは何だったのかしら?)


 とにもかくにも、そのパーティーメンバーを捕まえなければならないのだが、逃げていった先を知っていると思われる騎士団員や警備隊員たちに聞いてみると新たな事実が判明した。


「え? フードで顔を隠した黒いコート姿の背の高い男が一緒にいた?」

「しかも槍を持っていた?」

「槍を持っている背の高い男で……この城の中に出入りができる人物っていうと……え、まさか!?」


 最初にその人物について予想を立てたのは、警備隊の副総隊長であるテトティスだった。

 彼女はその容姿の男に心当たりがありすぎたのだ。


「まさか、旅行に行っているって話だったクノファン総隊長……!?」

「いやいやまさか。だってクノファン総隊長はずっとこの帝国に尽くしてきた人なのよ?」

「そ、それもそうね」


 その名前にルディアは聞き覚えがあった。

 前に左翼騎士団のリアンとティハーンと一緒にいた時に、テトティスの名前と一緒に聞いたことがある警備隊総隊長の名前だったと思い出したのだ。


「確かその人って、警備隊の総隊長ですよね?」

「ああそうだ。私の上司にあたる。しかし今回のような事態を起こすなんて……クノファン総隊長に限ってそんなことをする人ではないと思っているからな」

(そうなのかな……?)


 口には出さないものの、ルギーレたちを追放した勇者パーティーの面々がその黒ずくめの男と一緒に脱獄をしたというのを目の当たりにしてしまったルディアは、必ずしも裏切りがないとは考えられなかった。

 そもそも勇者パーティーが裏切ったかどうかすらもまだわからないのだし、その脱獄していった集団に追いつかないと真相はわからない。

 そのまま全速力で、時には目の前に立ちふさがる魔物や黒ずくめの連中を倒しながら進んでいくと地下牢の区画を抜けて中庭に出られるようになっていた。


「ここから外に出られる。どうやら連中も一緒のルートで逃げたらしいな!!」

「それじゃ行くわよ!」


 二本の短剣と魔術を使う魔法剣士であるテトティスと、ルディアと同じ魔術師であるミアフィンが戦闘準備をするのを見て、ルディアも右手にまとわせた炎を確認してから一緒に外に出る。

 するとその出た地上の中庭で、タイミングよく二匹のワイバーンが飛び立とうとしていた。


「ミアフィン、あれっ!!」

「黒ずくめの男に……勇者パーティーの連中!? 逃げるつもりだろうけどそうはさせないわっ!!」


 ミアフィンは自分の手に持っている杖を振りかざし、巨大な竜巻を生み出した。

 テトティスも魔術が使えるので、彼女に数テンポ遅れる形で手で飛ばせる大きな岩を生み出す。

 最後にルディアが、右手にまとった大きな炎を飛ばして三つの魔術が一斉に襲い掛かる。

 だが、その三つの魔術がワイバーンの目の前で全て弾けて消えてしまったのだ。


「えっ?」

「あ、あれ?」

「は……?」


 三人の女はそれぞれあっけにとられたリアクションをする。

 魔術が消えてしまった原因。それはワイバーンの目の前で黒い槍を自信満々に両手で突き出している黒いコートの男だった。

 そしてフードで目元から上を隠していることから、どうやらこの男が勇者パーティーを脱獄させた張本人のようだった。

 更にその男は槍を振るい、もう一匹のワイバーン……ルディアが以前見たことのある茶髪にひげ面の男が乗っている方を先に行かせた。


「行かせないっ!!」


 再び炎を生み出して逃亡を阻止しようとするルディアだったが、またもやその炎が男の槍の一振りによって消えてしまった。


「な、何で……!?」

「そんな……魔術が消されるなんて!?」


 テトティスもミアフィンもそのまさかの光景に愕然としているが、一番愕然としているのはルディアだった。

 まさか、自分が唯一誇れるものだと思っていた魔術が何の意味もなさないなんて。

 そう思っている彼女の目の前で一匹のワイバーンが飛び去り、続けて槍使いの男が地面に半円を描く槍の薙ぎ払いを繰り出し、衝撃波を飛ばしてきた。

 それは三人に近づくにつれて大きく太くなり、女たちは緊急回避をせざるを得なかった。

 そして大きな隙を生み出した結果、二匹目のワイバーンも逃走を許してしまった……。

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