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74.異様な生物

 地下でそんなやり取りがされているとは夢にも思っていないどころか、そう思うだけの余裕もないのがルザロ率いる両翼騎士団の面々であった。


「おい、ミアフィン! そっちの状況はどうなっているんだ!?」

『こちらも応戦中! 次から次へと敵が来ていてキリがありません!』

(くっ、シャラードとは連絡が取れないままだしこの状況はさすがにまずいぞ……)


 ルザロは自分の副官である、両翼騎士団副騎士団長のミアフィンに連絡を取っていた。

 彼女の言う通り、城に向かって大量の魔物と黒ずくめの集団がやってきているからだ。

 そしてその集団が狙っているのはセヴィストの命ではなさそうだとルザロは考える。


(陛下はカルソン様にお任せしているし、そっちには敵は行かせていないし、敵の動きからすると行く気もなさそうだ。だが、ここにはまだ守らなければならないものがある)


 以前、あの黄色いコートを着ている冒険者がここに来た時にセヴィストが言っていた、遺跡から発見された宝玉がこの城の中にあるのだ。

 黒ずくめの集団の目的はどうやらそちららしく、あちらこちらからその宝玉を探しに攻め込んできている状況で、両翼騎士団と警備隊が協力して城を守備していた。

 だが、相手の攻勢が凄まじくルザロは押され気味である。

 こうした戦場での集団戦には強いはずのファルス帝国軍だったが、相手側はそれ以上の戦力で攻め込んできているのだ。奴らは何者なのか?

 それすらも考える暇を与えられない状況が続いていたのだが、宝玉の置いてあるセヴィストの執務室付近まで押されてきた時に周りの空気が一変した。


「う、うわあああっ、何だあれは!?」

「に、逃げろぉ!!」

(……何だ?)


 窓の外に目を向けた敵たちが驚きの声をあげて、我先にと襲撃を中止して逃げて行ってしまう。

 今まで戦い続けて満身創痍になりつつあったルザロは、いきなり敵たちがそんな行動をとり始めたことにあっけにとられつつ、自分も窓の外を見てみる。

 すると、確かにそこには驚きの……普段は冷静沈着なルザロも慌てふためかざるを得ないほどの、前代未聞の光景だった。


(な、何だ、あの生き物は!?)


 窓の外に見えたものは、空中に浮かんでいる巨大なドラゴン……いや、人間?

 いいや、人間なのかドラゴンなのかわからない生物の姿があった。

 シルエットとしては翼を広げたドラゴンだが、今まで騎士団の遠征で倒したことがあるドラゴンよりも一回り……いや、二回りは大きいと思われる。

 しかしドラゴンにはあるはずのない人間の足が、本来尻尾のある場所から生えているのだ。

 更に地面と垂直になっているそのドラゴンの顔をよく見てみると、トカゲではなく髪の長い女らしきものになっている。

 極め付けはそのドラゴンらしき生物の身体から、まるで湯気のようにほこほこと灰色のオーラが出ているのだ。

 まさに異様な光景としか言い表せないのだが、その生き物は呆然とするルザロなどお構いなしに城に向かって近づいてくる。

 するとその時、懐に入れている魔晶石に通信が入った。


『ファラウス団長、聞こえますか!?』

「あ……テトティスか!? どうした?」

『空に……空に異様な生物が浮かんでいます!!』


 慌てふためく通信先の声の主は、現在城にいない上司の代わりに警備隊の指揮をとっているテトティスだった。

 彼女もまた、このフールベリア城のどこかからあの異様な化け物を目にしているのだろう。


「おいっ、あれは弓で落とせそうか!?」

『ダメです、全く歯が立ちません!! 矢を放っても全て空中で弾き落とされてしまうんです!!』

「くそっ、なんなんだあれは……!!」


 敵か味方かもわからない。

 だが、先ほど敵たちが慌てふためいて逃げて行ったのを見る限りでは、どうやら敵にとっても想定外の生物が襲来したらしい。

 だとしたら味方なのか? それとも第三勢力が襲撃を仕掛けてきたのか?

 判断がつかずにどうすればいいのか迷っているルザロだったが、その時ドラゴンもどきが動き出した。

 正確にはその巨体が光りだしたのだ。


「うっ……!?」


 眩く輝く巨体を直視できないほどの光の強烈さに、思わず顔を腕で覆って保護するルザロ。

 そしてその光が収まった時には、ドラゴンは次のモーションに入っていた。

 空中で大きく身体を捻って、翼を腕のように振りかぶって何かを城に向かって投げてきたのだ。

 それは……。


「き……きゃあああああああああっ!?」

「うおおっ!?」


 窓ガラスを勢いよく突き破って飛び込んできたのは、なんと一人の人間だった。

 それをルザロは思わず横っ飛びで回避してしまい、飛び込んできた人間はゴロゴロと地面を転がって壁に激突した。

 素早く立ち上がったルザロは愛用のロングソードを構えつつ、ゆっくりとその人間に歩み寄るが、衝撃で起こった煙が晴れてくると同時に別の意味で驚くことになった。


「き、君は……!?」

「あたたたた……着地失敗したぁ……」


 魔術師風の服装に金髪の女であり、自分が落盤事故の犠牲者に花を供えに向かった時に出会った二人組のうちの一人、ルディアだったのだ!

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