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73.動き出すもう一つの集団

 ルディアと医者によるそんな会話が西の町で繰り広げられているころ、ルギーレは右翼騎士団のラシェンとカノレルとともに大急ぎでミクトランザに向かっていた。

 その中で、カノレルはこの襲撃が決して偶然のものではないと考えていた。


「ルーザス団長、ルギーレ……俺、思うんですけどね」

「うん?」

「もしかするとこれって、最初からミクトランザを狙った囮の襲撃なのではないでしょうか?」

「囮かぁ……その可能性も考えられるよな」


 そのカノレルの予想に、腕を組んだルギーレはうんうんとうなずく。

 あまりにもタイミングが良すぎる、東と西の町における同時襲撃。

 左翼騎士団と右翼騎士団がうまい具合に手が離せない状況を作り出し、その間に警備が手薄になっている帝都ミクトランザに向けて一気に襲撃をかける。

 それでも、世界最強と言われているファルス帝国騎士団が負けるはずがないとカノレルは思っている。

 ルギーレの協力があったとはいえ、現に自分たちはあの黒ずくめの集団を撃破したのだから。

 しかし、団長のラシェンだけは違う視点から今回の襲撃を見る。


「その可能性は高いと思うんだけど、俺はそれよりももっと重要な目的があるんじゃないかと考えてんだよ」

「重要な目的?」

「そうだ。左翼も右翼も普段はそれぞれの警備担当の場所に軍を駐留させているんだから、ミクトランザに来るまでには相当の時間がかかるだろ? 確かにそれぞれの管轄の町を襲撃して時間稼ぎをするのは戦略としてありだと思うんだけど、そこまで派手にやってその上で帝都を襲う目的っていったい何なんだろうって考えてるんだ」


 単に、あの黒ずくめの集団による力の誇示なのか?

 いいや、それだったら帝都を一気に潰してしまえばいいはずだ。なのにわざわざ戦力を分散させるなんて手間になるだけだろう。

 だとしたら、そうまでしなければならない目的があるとしか思えない。

 そこまでラシェンが考えた時、隣でそれを聞いていたルギーレが何かに気が付いた。


「もしかして、そいつらの目的は勇者パーティーなんじゃ……!?」

「え?」

「だってほら、勇者パーティーって黒ずくめの連中とのつながりが分かったから牢屋にぶち込まれたんでしょ? そのパーティーメンバーを取り戻すために黒ずくめの連中が動いてるんだとしたら、つじつまが合うんじゃないですか?」

「……なるほどねぇ、だったらわからねえでもないな」


 ルギーレのその予想に納得する二人。

 そしてカノレルは、もう一つその黒ずくめの連中の目的がフールベリア城にあるのだと気が付いた。


「それと、遺跡から見つかったって宝玉っぽいものを狙っているってのも考えられるよな」

「ああ、それもある!!」

「そうだな。カノレルの言う通り、その二つを狙うんであれば帝都に応援が来る前にさっさと済ませてしまえばそれで一気にやれるだろうな」


 事実、帝都が襲撃されたのは東西それぞれの町が襲撃されてから少し経った頃らしいのだ。

 それこそ、ちょうどルギーレとルディアが手分けして出発した時間を見計らったとしか思えないので、それを考えると話が大きくなっていると感じる三人。

 そしてその疑問を最初に口にしたのはルギーレだった。


「でも……タイミング良すぎないですかね?」

「タイミング?」

「だってほら、俺たちを帝都から遠ざける目的があったとしたら、そのタイミングを知っている人間じゃないと無理じゃないですか? それともまったくの偶然だったんですかね?」

「……まさか……!?」



 ◇



 信じたくない事実に三人が気づき始めているそのころ、帝都を襲撃した黒ずくめの集団の一部が勇者たちのいる地下牢にたどり着いていた。

 見張りをあっさりと絶命させて、牢屋で待っているマリユスたちを出させるべく行動してきた成果を実らせようとしていた。


「……お前ら、全員生きてるか?」

「ああ。まさかあんたが味方に回ってくれるとはね。牢屋から出されるのは気分がいい」

「そうか、それならよかった。それじゃあとはあの宝玉を手に入れるだけだからお前らは先に脱出しろ。おっさんが待ってっから」

「ええ、ありがとう」


 逆光で顔が隠れてよく見えないものの、かなり背の高い男が勇者パーティーを地下牢から出してくれた。

 そして出されたマリユスたちは、自分たちが勇者として成功するべくこれから行動を始めるのだ。

 ファルス帝国騎士団に潜入していた、黒ずくめの男たちの内通者によってあのルギーレやルディアが列車に乗って今ここを離れていることもすべて筒抜けである。

 それにいくら世界最強との噂がある両翼騎士団が守っているといっても、ルザロ一人では守り切れまい……と踏んでいたからこそこうして成功したのだ。


「さて……さっさとお宝いただいて退散しますかっと」


 男は手に持った愛用の槍をグルグルと回して、黒いコートを翻して楽しそうに歩き始めた。

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