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70.ルディアの奮闘

「……ですから、きっとどこかに弱点があるはずです!」

「そう言われても、あれではまともに近づくことなんてできやしないですよ!」

「私も団長と同意見だ」

「それでしたら、私が何とかしてあの弱点を探ります。この周辺にはあの海竜みたいなのの動きをじっくり見られそうな場所がいくつかありますから」


 それを聞き、まずはティハーンがあの海竜もどきの気を引くことにする。

 ルディアはリアンと一緒に行動しつつ、弱点が分かったところでリアンに伝えて一気に叩き潰す作戦に出た。

 それにしても、敵がまさかこんなものまで持っているとは全くの予想外であった。


(あの黒ずくめの集団には、もっともっと大きな影響力を持つ仲間がいてもおかしくはなさそうね。世界を征服できてしまうほどの、力と知恵を持っているだけの仲間が……)


 この町を襲撃した理由も、それからルギーレたちが向かった東の町が襲撃された理由もきっと何かがあるはずだ。

 いずれそれがわかる時が来るのだろうか?

 そう考えながらリアンとともにルディアが向かった先は、海竜もどきが暴れまわっている町の中央広場を一望できる建物の上だった。


「どうですかルディアさん、何かわかりそうですか?」

「んー……探査魔術であの海竜に何か仕掛けがないかを探ってみます」


 下にいるときでも使えたのだが、全体像を把握しきれていなかったのと攻撃を受けてしまう可能性があったのでここに来てやっと使えた探査魔術。

 すると、内部に生体反応があるのを確認できた。


「あれっ、あの海竜の中に人間のシルエットがありますよ!?」

「ということは、あれは人間が動かしているのですか?」

「どうもそうらしいですね。ということはどこかに外の風景を見られるような装置がついているんじゃあないでしょうか?」


 それに、とルディアは続ける。


「魔術防壁はかなり高度なものが張られていますが、それにも限度があります。攻撃を与え続ければ魔術防壁の限界がきていつかは崩れます。その時が勝負かと思われます」

「それもそうですが、そうなるとどうやってあの怪物に近づくかが問題ですね。まずはあの触手みたいなものを壊して、それから口から出る炎をどうにかしないと破壊できそうにはありませんね」

「そうですね……え?」


 そこでルディアがふと閃いた。

 そうだ、その手があったか!!


「リアンさん、それですよ!!」

「はい?」

「炎です! 炎を利用するんです!!」

「ど……どういうことですか?」

「えっと、まずはですね……」


 リアンに対して簡単に概要を説明すると、彼もまた「なるほど……」と感心した様子を見せた。


「でしたら私があそこに戻って、人を確保した後にあの海竜をひきつけます。ルディアさんはアヴィバール副長と一緒に、それを集めてください」

「わかりました!」


 早速ルディアは下に降り、ティハーンと一緒に作戦を開始した。

 下手をすれば、自分たちも巻き込まれて一緒に死んでしまう可能性がある。

 しかし今はそれしか思いつかなかった。

 あの海竜の動きを見ていて、それが通用するかもと思い立ったなら即座に実行に移してみるだけの価値があったからだ。


「ルディアさん、こちらにこれだけあったぞ」

「できそうですか?」

「これなら……ああ、問題ない。これをこうして……即席だが何とかなりそうだ」


 列車の中で聞いた話によると、ティハーンはなんとこの国の宰相であるカルソンに弓を教えるほどの腕前らしいのだ。

 その彼の弓の腕と、騎士団長でありながら自らあの海竜の引き付け役を買って出てくれたリアンの働きを無駄にしないためにも、ルディアはその作戦を成功させるべく広場に急いだ。


「リアンさん! 準備できました!」

「わかりました! よし、全員退却だ。弓隊は先ほどの指示通りに前に出ろ!!」


 リアンの指示で一斉に前衛の騎士団員たちが退却し、ティハーンを始めとする弓使いたちが前に出る。

 そして退却したばかりの前衛の人間たちによって、せっせとその海竜を倒すための兵器が配られ始めた。

 それを目にした海竜と中の人間は、何かをしようと画策している騎士団員たちを一気に焼き尽くしてやるべく、口を開けて炎を放射する準備を開始した。

 だが、それこそが海竜にとっての命取りだったのだ。


「よし、放てぇーっ!!」


 リアンの手が振り下ろされ、一斉に矢が放たれる。

 口を開けてから炎が放射されるまで、およそ五秒もの時間がかかる。

 それに敵にうまく炎を当てるのであれば動きを止めておかなければならないので、敵からの絶好の目標物になるのだ。

 当然矢を放つ方が早いのだが、その放たれた矢にはパンパンになるまで詰められた火薬が入っている袋が取り付けられている。

 それを一斉に口の中に撃ち込まれ、そこでタイミング悪く炎を放射すればどうなるか?

 答えは、その海竜が内部に向かって口の中から爆発させられてしまったことで証明された。

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