67.たどり着いたもう一つの場所で
ルギーレは襲い掛かってきた魔物の一体の攻撃をよけたことで、今まで通話をしていた魔晶石を落としてしまった。
先ほどから襲い掛かってきている魔物たちをレイグラードの力を使って次から次に倒しているものの、全然キリがないのでいい加減うんざりし始めている。
(くそっ、何体斬ればカタが付くんだよこれは!?)
以前にもこんなことがあったような気がするのだが、そんなことを考えても仕方がないのでとにかく目の前にやってくる魔物や人間たちを斬り伏せていく。
身体の半分を金属にされている人間がいる。
中にはその身体の全部が金属になっている動物の魔物がいる。
今まで戦ってきた相手とは明らかに何かが違う……いや、一度だけこんな相手と戦ったことならあった。
(そうだ、ジゾの遺跡で戦ったあの狼と似たような奴らだ!!)
あれも金属でできていた敵だったが、今回の敵は集団でそのような状態になっているのでその狼とは何の関係もないだろうと彼はにらんでいた。
「危ない、ルギーレっ!!」
「うおっ!!」
背後から危うく襲われそうになったところを、ギリギリで助けてくれたのは金髪の帝国騎士団員だった。
その金髪の男こそが、カノレルがここに来る前に話していた……。
「すみません、助かりました!」
「礼は後だ! 先にこいつらを全部片づけちまうぞっ!!」
「了解、ラシェンさん!」
二刀流を振り回して軽快に敵を葬っていく、帝国右翼騎士団長のラシェン・ルーザスその人である。
ルギーレがレイグラードに頼りがちな戦法でとにかく突っ込んでいくのを目の当たりにして、なるべく突っ走りすぎないように忠告している……はずだったのだが。
「うおらあああっ!!」
「ちょ……っと、あぶねえ!!」
このラシェンという男もまたルギーレと同じく熱血漢な性格であり、時折りルギーレよりも先に突っ走ってしまうことがあった。
自分はこんな風に見られているんだろうか? とふと考えてしまうルギーレだが、その副官であるカノレルも同じような性格である。
つまり騎士団長も副騎士団長も同じような性格のため、右翼騎士団は集団戦も果敢に攻め込んでいくタイプだった。
魔物たちに対しても、それから黒ずくめの人間たちに対しても臆することなく挑む。
その一方できちんとやるべきことは見極めているらしく、町の中に残されている住民たちはしっかり避難させている。
(やっぱり自分たちで集団戦が得意だってだけのことはあるみたいだなー……)
自分でも妙に上から目線だと思いつつ、ルギーレはこの右翼騎士団をそう評した。
そんな彼も戦いの最中に住民たちの誘導を手伝っていたのだが、その中で気になる存在が一つあった。
(そういやあ、さっき見かけたあのでっけえ灰色のドラゴンは何だったんだ?)
最初は金属の加工を施された魔物かと思ったのだが、空を優雅に飛び回っているだけで降りて攻撃しようともしてこなかった。
かといって敵を倒すようなこともしていなかったので、町の上空に現れた謎の灰色のドラゴンはどうやら敵でも味方でもないらしかった。
そのまま空中を徘徊した後、何をしに来たのかまるでわからないままバッサバッサと音を立てて飛び去って行ってしまったドラゴンの姿が妙に気になって仕方がないルギーレだったが、それよりも先に倒さなければならない大きな敵が出てきてしまった。
「……んあ!?」
次もまた、空に気になる存在を見つけるルギーレ。
それはドラゴンでもワイバーンでもない、異形の存在がこの町の中央広場で襲い掛かってきた。
「うおあっ!?」
「くっ!?」
翼が生えた馬のような……何かの乗り物だろうか。
おそらく魔術で浮いているのだろうと思われるその乗り物に乗った一人の男が、ルギーレとラシェンのいる場所めがけて突っ込んできた。
とっさに地面にかがんでその物体を回避した二人の頭上を通り過ぎ、空飛ぶ馬は空中で旋回して戻ってくる。
「くそっ……何だありゃあ!?」
「俺たちもさすがに見たことはねえ。多分あれは敵の秘密兵器ってところだろうな。おい弓持ってるやつ、あいつを徹底的に狙え!!」
ラシェンが周りの騎士団員たちにそう指示を出す一方、レイグラードによって授けられた驚異的な動体視力で、ルギーレにはその空飛ぶ馬に乗っている人間の姿がわかった。
(金髪の男で弓使い……こりゃあ厄介だな!!)
空飛ぶ馬のスピードはかなり速い。
突っ込んでくるのをよけきれなければ、いくらレイグラードの恩恵を受けていても死ぬことは間違いないだろう。
そしてこんな時だからこそ、自分の立ち位置を考えて歯ぎしりをする。
(ちきしょう、レイグラードを持っていても遠距離の攻撃はできねえ!!)
ルディアなら魔術で何とかなるかもしれないし、ティハーンと名乗っていた弓使いの左翼騎士団副団長がいればあんな奴、すぐに倒せるはずなのに。
あいにく自分もラシェンもカノレルも全員前衛メインの人間なので、だったらどうするかをルギーレは考え始めた結果、一つの方法を思いついた。




