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5.聖剣レイグラード

「そういやー、予知夢を見ることができるって言ってたけど……俺がこの剣を手に入れることもすべては予知夢の範囲内だったってのか?」


 もしそうだったとしたら、この剣を遺跡から勝手に持ち出していいのかということもすべてひっくるめて飲み込んで、事実として受け止めなければならないことになる。

 そういうことなのか? とルギーレはルディアに聞いてみると、彼女は迷いなく首を縦に振った後に気になる単語をつぶやいた。


「レイグラード……」

「ん?」

「聖剣レイグラード。それがそうなのかもしれないって思ったの」

「え、え……え?」


 その名前は、いくら落ちこぼれと呼ばれているルギーレでも耳にしたことがある武器の名前だった。

 今からおよそ二千年前までに話はさかのぼる。

 その時代には今のようにいくつもの国家はなく、三つの国家が覇権を争っていた。

 その聖剣レイグラードは、そのうちの一つであるマリストウィン聖王国の手によって生み出されたものなのだ。


「その聖剣が生み出されて、偉大な冒険家のルヴィバー・クーレイリッヒによって戦争で使われたことによって、マリストウィン聖王国がこの世界の覇権を握ることに成功したって話だったっけ?」

「そうね。でも、そのレイグラードはある日突然姿を消した。マリストウィンの国宝として宝物庫に入れられていたはずなのに、まるで自分でどこかへ行ってしまったかのように……」


 三国間の戦争では、レイグラードの活躍がいたるところで伝えられている。

 ひとたび刃が振られれば、それだけで兵士が百人一気吹っ飛ぶほどの暴風が戦場に吹き荒れた。

 地面に刃を突き刺せば、そこを中心として地震かと間違ってしまうぐらいに地面が揺れる衝撃波が生まれた。

 さらに剣としての役割のみならず、魔術の杖代わりとしても活躍していたレイグラードは、その刃から炎を吹き出したり鉄砲水を撃ち出したりすることができたのだという。

 それによって他の二国に打ち勝ったマリストウィン聖王国が覇権を握ったのもつかの間、ルディアが言う通りレイグラードはある日突然宝物庫から姿を消した。


「王国はありとあらゆる手を使ってこの大陸中を探し回ったけど、結局レイグラードは見つからなかったって言われているわ」

「そうらしいな。でも、だったらどうしてこれがそのレイグラードなんじゃないかって思うんだよ? 見つからない剣だったとしたら、当然あんただってその剣の存在を見たこともないはずだし、ただの古びた剣の可能性も十分にあるはずじゃねえの?」


 確かにすごい力が出たけど、とルギーレがそのセリフの最後に付け足すと、ルディアはレイグラードかもしれない剣の柄の部分に注目した。


「レイグラードのデザインを本で見たの。この剣のデザインと全く一緒だったわ」

「そりゃまあ、歴史書とか見れば載ってるとは思うけどよぉ。さっきのすげえ力だってこの剣を握ってから生まれたわけだしな。でもそれだけじゃあこれがレイグラードだって証拠はねえぜ」

「でも、レイグラードじゃないっていう証拠もないわ」


 それに、とルディアはルギーレにこんな質問をぶつけてみる。


「持っただけで、あんなに突然身体能力が向上するような剣が今までこの世の中にあったかしら?」

「いや……それはねえけど」

「確かにこの世界の武器とか防具は、作り出す過程で魔力を流し込むわ。でも、それはあくまでも使用者の補助的なものであって身体能力を向上させたりするようなものじゃないわよ」


 だからあんなに簡単に巨大な魔物を倒せる剣は、伝説にあるレイグラードしか考えられないとルディアは力説する。

 しかも、まだレイグラードの秘めたる力はすべて解放されていないはずだとも言いだした。


「秘めたる力ってなんだよ?」

「そのままの意味よ。ここと、ここと、ここ。この三つのくぼみが気になるのよ」

「くぼみ?」


 ルディアは、このレイグラードかもしれない剣の柄にあるくぼみが気になるのだという。

 ルギーレがその指摘を受けて柄を見てみれば、赤い柄の中に三つのくぼみがハッキリと丸い形でついているのが分かった。


「ん~? ああ、確かにくぼみがあるけどよお。これってこの剣のデザインじゃねえのか?」

「いいえ、私はそのレイグラードの伝説をよく知っているから言えるんだけど、レイグラードの柄にはその能力を増強させる宝玉が三つはまっていたって歴史書に書いてあるのよ」

「え、そうだっけ?」

「そうよ。その宝玉がなくても恐るべき力を発揮したのがレイグラードだけど、宝玉が三つすべてそろったこの剣が戦争を終結させたっていうのは、あながち間違いじゃないのかもね」


 だけど、やっぱりただのこの剣のデザインという可能性もある。

 となれば、これから特に行く当てもないルギーレがやることは一つだった。


「それじゃあよ、もしこの剣が本当にその伝説の聖剣だっていうんだったらよぉ……それを俺と確かめる旅に出てみねえか?」

「あなたと?」

「ああそうさ。どーせ俺は根無し草で行く当てもねえしな。だったらのんびりと、その伝説ってのを確かめる旅に出てみようぜ」

「まあ、私も予知夢に従ってここに来たまでで、別にここから先に行く当てがなかったからいいけどね」


 こうして、予知夢がみられる不思議な魔術師ルディアとともにルギーレののんびり冒険ライフが幕を開けるのだった。

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