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65.続発する問題

「あの人も……夢を見てそれが現実に?」

「そうだ。悪い夢を見てそれが当たるのはかなり不運だと思うが……ん?」


 ティハーンはふと気がついた。

 あの人「も?」


「待て、君は今「あの人も」と言わなかったか?」

「えっ……あ、ああ、前に同じように悪い夢を見て、それが現実になってしまった知り合いがいたのを思い出しただけですよ」

「ふぅん……」


 ティハーンは妙だと思った。

 別にそこまで焦った口調で言わなくても良いだろうと。

 しかしそれ以上は特に追求する必要もないと感じ、残りの時間はファルス帝国のことやそれぞれの騎士団についてもっと詳しく教えてもらいたいというルディアからの質問に答えて時間を潰していた。

 しかし、その途中でティハーンの持つ魔晶石に通信が入った。


「アヴィバールだが。……あれ、カナリス団長? いかがしました?」


 それは今しがた、自分の苗字で応答したティハーンの上司であるカナリスからの通信だった。

 だが、石の向こうではかなり危機的な状況に陥っているらしいことが、彼の向かい側の座席に座っているルディアにも聞こえてきたのだ。


『今どこにいる!?』

「今はそちらに向かう列車の中ですが」

『こっちは今まずいことになっている! 例の黒ずくめの集団と思わしき一団と交戦中なんだが、奴らの手先らしい大型の魔物が多数集結している! 大至急増援を頼む!!』

「か、カナリス団長!?」


 そこで通信が途切れてしまったのを見て、ルディアが恐る恐るといった様子で声をかける。


「あ、あの……向こうはもしかして大変なことになっているのでは……?」

「どうやらそのようだ。悪いが向こうについたら私も戦闘に参加せねばならん。君は向こうの駅で降りたら町の中で待っているんだ」

「え……?」

「君は冒険者だが、今回の件に関しては我々騎士団の任務だ。こういう荒事なら私たちの方が慣れているし、立場としては君は部外者になる。だから巻き込むわけにはいかないんだ」

「あ、はい……」


 確かに、自分も冒険者とはいえ魔物を相手にしたことは実はあまりない。

 それに集団戦を得意としているのであれば、その自負している集団戦闘で魔物たちをせん滅してくれるであろう。

 ここは素直にティハーンの言うことを聞き、ルディアはその駅がある町で待つことになった。

 ……はずだったのだが……。


「うわっ、これは……!?」

「こっちだ!!」


 なんと、すでにその町の中まで魔物たちが蹂躙し始めていた。

 カナリスとの合流ポイントからはかなりの距離があるはずなのに、まさかこの町にまで敵の軍勢が来てしまっているとは。

 ティハーンはルディアを連れて、急いで町の路地裏へと駆け込んだ。


「しばらくここにいろ。騎士団の詰め所もやられているみたいだから、隠れて騒ぎが大人しくなるのを待っているんだ!!」

「わ、わかりました!!」


 列車がすでに町の近くにまで到達していたうえに、駅の人間たちもやられてしまって止めることができなかった不運。

 さらに町の人間たちがどんどんやられてしまっているこの状況では、むやみに町の中へとルディアを出すわけにもいかず、ティハーンは今の自分ができるだけの対策でルディアを隠しておくことしかできなかった。

 路地裏の一角にある倉庫の中に入れられたルディアは、ひとまずこの状況をルギーレとエスヴェテレス帝国に連絡しておこうと魔晶石を手に取った。


『……何? それで君たちは無事なのか?』

「私は今のところ何も問題はありませんが、ルギーレとの連絡がつかないままなんです。先ほど連絡したんですけど、彼が通信に出てくれなくて……」


 その報告内容を聞き、魔晶石の向こうで対応してくれたヴァンイストは考え込む。


『……わかった。だが我々がそちらに向けて動くわけにはいかないから、とにかく今は自分の身の安全を最優先に行動してくれ』

「はい、かしこまりました」


 しかし、魔晶石の向こうのヴァンイストの口からは新たな問題の話が出てきた。


『こちらはこちらでまずいことになっていてね』

「はい?」

『実はな、隣国のヴィルトディン王国がとんでもない言いがかりをつけ始めてきているんだ』


 そういえば、エスヴェテレス帝国ではヴィルトディン王国との緊張が高まっているという話があったとルディアは思い出した。


「言いがかりですか……しかしなぜ、今のタイミングで?」

『恐らくは、帝都があの炎の悪魔によって襲撃されたというのが伝わったのだろう。それをきっかけに難癖をつけ、我が国が弱っている今がチャンスだと見計らって攻め込んでくるのかもしれない』

「そんな……今そこに攻め込まれるのはまずくないですか!?」

『だからそう言っているだろう。すまないが、ファルス帝国での騒動が終わったらこっちに戻ってきてまた力を貸してくれないか?』

「は、はい……」

『生きていろよ。頼んだぞ』


 次から次へと問題が発生し、このままでは世界規模の話になってしまう。

 それもこれも、全てはあの聖剣レイグラードと黒ずくめの集団のせいではないか?

 ふつふつとその全てに対して怒りが込み上げてきたルディアだが、そんな彼女がいる場所に敵が入り込んできたのはその時だった。

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