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64.偽造と予知夢

「偽造書類?」

「そうだ。あの手この手で、私たちにも見抜けないほど精巧に作られた通行許可証を作り上げた者がその連中の背後にいるらしいことが分かったんだ」


 左翼騎士団がつかんだ情報は、入国に必要な書類を偽造して持ってくる連中がここ最近ですごい増えたのだということだった。

 これまでもそういう話がある事はあったのだが、ここ一か月で急激に増えたのはおかしいということで、その書類を持ってきて捕まえた人間たちを洗い出した結果、ルギーレが聞いた話と同じだった。


「金をつかまされた身寄りのない者たちが、そうして入国していたわけですね」

「ああ。それから最近判明したことなんだが、国の南側は海に面している。その南側に多数の魔物が現れるようになったんだ」

「魔物ですか?」

「そうだ。魔物自体はどこにでも現れるから別に珍しくはないんだが、その偽造書類の話が出始めたのと同じタイミングで南側に魔物が増えた」


 おかげで騎士団は三つの地域にそれぞれ人員を割かなければならなくなってしまい、ここ一か月はなかなか休みが取れない者も増えて疲弊しているのだと言うティハーン。

 それを聞き、ルディアは考え込んだ。


「それってとても偶然とは思えませんね」

「やはり君もそう思うか」

「ええ。それともう一つ……三方向への対処が増えるとなると、必然的に北方面の警備が手薄になりませんか?」

「それも今言おうと思っていたところだ。確かに北方面は警備が手薄になってしまった」


 カノレルたち右翼騎士団との情報共有もあって、北に割いていた人員を他の三方向への警備やヘルプに回してしまったのでどうしてもその間には警備が手薄になる。

 更にはルディアとルギーレがやってきたエスヴェテレス帝国と、このファルス帝国の間にはそれぞれの隣国であるバーレン皇国の領土の一部がある。

 そこだけは領土違いのためファルス帝国も手が出せず、結果的に今回の黒ずくめの男たちに関してもそのバーレン皇国……つまり北側から侵入した可能性が高いとファルス帝国では睨んでいる。


「そしてその黒ずくめの男たちがいるかもしれないのが、私たちがこれから向かう西の方の森の中ですね」

「ああ。警備隊からの情報が入ってカナリス団長もそちらに向かっている。そこで合流して一気に叩き潰すぞ」


 あの医者の力を借りずとも、今回の敵の居場所に関しては何とかなりそうだと悟ったルディアだが、いろいろとバタバタしていたので少しでも体力を温存するべく、ティハーンに許可をもらって目的地に着くまで寝させてもらうことにした。

 だが、ここで久々にルディアは予知夢を見ることになる。

 それはまず、青い髪の男が何かをしでかすところだった。


(この髪の色の男は……まさかマリユス? いや、違う……)


 マリユスとはまた別人の、かなり大柄で背も高い中年の男。

 手には黒い槍を持っており、その男が何人もいる別の武装した男女に指示を飛ばしている姿が目に入った。

 だが、その夢の中で一番気になったのはその男のそばに見慣れない黒ずくめの男の姿があったことだ。


(金髪の弓使い……ということは、この男が勇者たちに冤罪を着せたって噂の……?)


 別に勇者たちに冤罪がかけられようがどうでもいいのだが、その火の粉がこちらにまで飛んでくるのは避けたい。

 黒ずくめの連中とは因縁があるわけだし、エスヴェテレス帝国で出会ったウィタカーやトークス、炎の悪魔のヴァレルとのつながりがある男だったとして、もしこの先で出会うことがあれば絶対につぶしておきたい相手だ。

 そこで目が覚めてしまったルディアは、目の前のティハーンが弓の手入れをしているのを見てふと考える。


(でも……夢の内容を話してもいいのかしら?)


 自分がヴィーンラディの預言者だとはこの国では知られていないルディアは、もし本当に当たったら困るので意を決して話すことに決める。

 ただしあくまでも「変な夢を見た」という世間話程度である。


「……ふうん、変な夢を見ることもあるものだな」

「ええ。まあ、不吉な夢じゃないことを祈りましょう」


 目的地まではまだまだ距離がある状態で目が覚めたルディアは、もう一度眠りに入ろうと目を閉じた。

 だが、そこでティハーンがポツリとこんな一言を発する。


「……ファラウス団長を思い出すな」

「え? ルザロさん?」

「ああ。あの人も昔、君と同じく不吉な夢を見て……そしてそれから一人で生きてこられたのだからな」

「あ……!」


 それを聞き、ルディアは以前ルギーレと一緒にルザロから聞いた話を思い出した。

 彼はその昔、あのタチの悪い連中と戦った鉱山で起こった大規模な落盤事故で家族全員を失い、天涯孤独の身になったのだという話を……。

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