62.まさかの再会ととっておきの条件
「じゃあティハーン、この二人の謁見が終わったからそいつらをここに通せ」
「かしこまりました」
ティハーンと呼ばれたその弓使いの騎士団員が、セヴィストの指示に従い謁見の間の扉を開ける。
それと入れ違いで退室しようとしたルギーレとルディアだったが、入室しようと扉の向こう側で待っていた人物たちの顔を見た瞬間、目を極限まで見開くことになった。
「……え……あ、あれぇ!?」
「なっ……!?」
「ちょ、ちょっと何であなたたちがここにいるのよ!?」
扉の前で交わされ始めたやり取り。
それを見たカルソンやルザロ、それからティハーンが怪訝そうな顔をするものの、そんなことに構っている暇なんてないほどのショッキングな出来事であった。
なぜなら、つい先日エスヴェテレス帝国で別れたばかりだったはずの人物たちが再会してしまったからだった。
そしてこの再会した理由を真っ先に思い出したのはルディアだった。
「あ……そういえばこの人たちが依頼を失敗して捕まったって話だったわね」
「あっ、そうかそうか、そーいやそんなことも言ってたっけな。それじゃ俺たちはこれで……」
「おい、ちょっと待て」
背中の方からセヴィストの声がかかり、退室するのを引き留められてしまったルギーレとルディアはまた皇帝の目前に戻る展開になった。
「……ああ、そういうことだったのか」
「だから俺はもうこのパーティーとは関係ありませんので、これで失礼します」
あの場に現れたティハーンたちによって、謎の薬を開発しているという全く身に覚えのないことで投獄されてしまったマリユスたちとの関係を説明させられたルギーレは、これ以上この連中と一緒にいたくないのでさっさと出ていこうとした。
しかし、ここでセヴィストから思わぬ話が出てくる。
「おいちょっと待て、お前たちに頼みがある」
「何ですか?」
「この勇者たちとは仲間だったんだろう? だからこの勇者たちの代わりに、お前たちがその黒ずくめの集団を探してほしい」
「え……俺たちがですか?」
冗談じゃない。何で俺たちがこいつらの尻拭いをしなければならないんだ。
もう関係ないんだからそんなの放っておけばいいじゃないか。
そう考えるルギーレだが、セヴィストはルザロに耳打ちをしてある条件を持ち掛けた。
「まあ、ただでとは言わない。この先で旅を続けるのであればそれなりの報酬もいるだろうから謝礼は出す。探してくれたら後はこちらで対応するから心配するな」
「いや、あの……まだやるとは……」
「それにとっておきの情報もある。詳しくはティハーンから聞いてくれ」
「ええー……」
どうやら拒否権はないようである。
そのまま退室させられたルギーレとルディアは、ティハーンに連れられて空いている会議室へと向かった。
◇
「改めて……私は帝国騎士団の左翼騎士団で副騎士団長を務めているティハーンだ。預かっている調書によると……冒険者のルギーレ・ウルファートとルディア・ロンバルトで間違いないな?」
「はい、確かに合ってます」
「よし、なら話の続きをさせてもらおう」
ティハーンと、会議室のU字型のテーブルに向かい合って座った二人は初っ端から思いがけない話を聞くことになる。
「陛下からもお話があった通り、君たちにはその黒ずくめの連中の居場所を探してもらいたい。見返りは旅に必要な軍資金と、それからその剣の情報についてだ」
「えっ?」
「この剣の情報って……先ほど陛下がおっしゃっていた、とっておきの?」
ルディアの質問にティハーンはうなずく。
「そうだ。ファラウス団長から報告書も回ってきているから目を通させてもらった」
「ファラウス団長?」
「ルザロ・ファラウス団長だ。君たちと一緒に孤児院を襲った連中を倒した」
「ああ、フルネームですね。それでその……剣の情報って言うのは何なんですか?」
レイグラードで石の厚い壁を一撃で壊せるだけのインパクトは大きかったらしいのだが、それ以上にインパクトのある情報をくれるらしい。
「実はな……このファルス帝国内で古代の遺跡が最近発見されたのだが、そこで気になる宝玉が一緒に発見された」
「宝玉?」
「そうだ。その宝玉の大きさと、その剣の柄についているくぼみの大きさが同じみたいなんだ」
「え!?」
まさに自分たちが探し求めていた情報が、こんなにインパクトのある形で手に入るかもしれない。
今までやる気がなかったルギーレの顔が一気に輝いた。
「はい、はいはい! やる! やりますやります!!」
「やってくれるか?」
「もちろんですよ、な、ルディア!!」
「まぁ……いいですけど……」
「ならば決まりだな。それでその連中の居場所を国内全土に広げて捜したところ、私の上司であるカナリス団長と右翼騎士団のルーザス団長から連絡があった。ちょうど西と東に分かれているんだが……一人ずつ行ってくれるか?」




