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4.未知の力

 でも、この展開も実は予知夢通り。

 そのセリフを飲み込んだ女は、ルギーレのサポートに回ってこの目の前の金属の狼を倒してくれることを願う。

 そんな女の考えなど知る由もないルギーレだが、とにかく目の前にいる金属の狼を倒さなければならないのだ。

 この台座から引き抜いたロングソードでやれるだけやるしかない、と決意したルギーレに向かって再び突進攻撃を仕掛けようとする狼。


「二度も同じ手はくらうかよっ!!」


 女から再び魔術防壁をかけてもらったのもあって、素早く横に飛んでその攻撃を回避してから、目の前にある左後ろ脚にロングソードを振り下ろした。

 すると先ほどとは違い、やけに心地よい手ごたえとともにいとも簡単にその脚が切断されたのだ。


「……お、おおおっ!?」


 何が起こったのかはよくわからないが、妙な高揚感と一緒に未知の力が自分に宿ったのだけは理解できた。

 確実に攻撃力があるのが判明した今、もう臆さずにこの金属の狼に向かっていける。

 そして脚の一本を切断されてしまった狼はまともに動くことができないので、ルギーレは軽く跳び上がって一刀両断してやろうと思った……が。


「お、おおっ!?」


 軽く跳び上がっただけなのに、普段の自分が全力で跳び上がった時と同じぐらいの高さまでジャンプすることができたのだ。

 もしかしたら全力で跳んだらもっと高く跳べるんじゃないか?

 その予感は見事に的中し、余裕でこの金属の狼の頭上にまで到達することができた。

 ここまで来たらルギーレがやることは、頭の後ろにロングソードを振り上げて、一気に振り下ろすだけだった。


「うおおおおおおっ!!」


 ルギーレと金属の狼のシルエットが一瞬重なったかと思われたその瞬間、ガキィィィンと激しい金属音と火花が部屋の中に出てくる。

 そこからワンテンポ遅れて、金属の狼は真っ二つに中央から切断されていた。


「すげえ……すげえぞ、すげえぞおおおおおおおおおっ!!」


 ロングソードをバッと天に向かって掲げ、勝利の雄たけびを上げるルギーレ。

 それを見た女は、小さくポツリとこんなことを呟いた。


「ふふ……やっぱり、私の予知夢は正しかったようね」

「え?」


 自分としては小さく呟いたつもりが、意外と大きく声が出てしまっていたらしく、ルギーレにもその内容が聞こえた。


「予知夢……まさか俺がこいつを倒すのも、予知夢通りだったってことか!?」

「え、あ……いや、その……」

「まぁいいや。今はまずここから出ようぜ。いろいろと話を聞かせてもらわなきゃならねえし、まだお互いに自己紹介もしてなかったからな」


 崩れ落ちてしまった床は、最初に切断した左脚を含めた狼の身体のパーツで作った即席の橋で渡りきることに成功した。

 さらにあの台座に突き刺さっていただけのロングソードには鞘が無かったものの、元々ぶら下げていたロングソードの鞘にスッポリと収まったのも運が良かった。

 どうやらこのロングソードは、市販されていた安物のロングソードと刃渡りや幅などは変わらないらしい。

 さすがに刃をむき出しのままで歩くわけにはいかなかったルギーレは、これで怪しまれることなくギルドに向かうことができる……と本来の目的であった素材をせっせと集めながら思っていた。


「ねえ、もうそのぐらいでいいんじゃない?」

「ん……ああ、そうだな」


 魔術師の女にも素材集めを手伝ってもらい、ただの素材集めだと思っていたのが未知の力を手に入れてしまい、それが思わぬ収穫となったルギーレ。

 そして駅までの道のりを歩きながら、いよいよここでお互いに自己紹介を始める。


「遺跡の中だとまだまだギクシャクして話せなかったが、こうして広い場所に出てきて落ち着いたから名前教えておくわ。俺はルギーレだ」

「私はルディアよ」

「ルディアだな。ところで最初からずっと気になってたんだがよ、魔術師だって言うのはいいが何だってここまで一人で来たんだ?」


 ルディアと名乗ったこの女の、その行動には思わず突っ込みを入れてしまうルギーレ。

 それもそのはずで、この辺りには魔物も多く出没するし魔術師がたった一人でノコノコやってきていい場所ではないと彼は考えているからなのだが、そんな僻地へとやってきたルディアは当たり前のように答えた。


「え……だって私の言っていることなんて誰も信じてくれないんだもん」

「んえ?」

「私は予知夢を見ることができるって周囲に何度か話したんだけど、誰もバカなこと言ってるって信じてくれないんだもん。だからこうした所に来るにも協力してくれる人がいなくて」

「まぁ、俺も信用はできねえけど……ここに来るまで一人で大丈夫だったのか?」

「全然何も平気よ。だから気にしないで」

「あ、そう……それだったらまあいいけどさ、死んでも俺は責任取れねえからな」

「うん、最初から私は一人だもん。だから気にしていないわよ」


 経緯についてはよくわからないが、本人が平気だというのであれば平気なのだろうと思ってそれ以上彼女の行動について言及するのはやめるルギーレ。

 しかし、他にもまだ彼女に聞きたいことはあるのだ。

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