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587.別行動の理由

『間に合わんぞ!! 早く逃げるぞ!!』

『いや、あと少しだ!!』


 少しでも可能性があるのなら……と考えたセルフォンは、今ならまだ止められるかもしれないと魔力砲のある部屋に戻っていた。

 それに気がついたアサドールが彼を追いかけてきたのだが、どうやらセルフォンにはこの自爆装置を止められる算段があるらしいのだ。


『自爆装置なんて止められるのか!?』

『自爆装置の発動する原因はわかる。そもそもこの自爆装置は敵にこれが奪われそうになった時に、敵もろとも爆発に巻き込んで倒すためのものなんだろうが、それだって魔力が必要になっているようだからな』


 その装置がつけられていることはドラゴンたちも知らなかったので、ニルスが後付けしたのだろうが、その自爆装置を止めるための方法があるはずだ……とセルフォンは考えたのだ。

 それがこの砲台に向かって流れ込んでいる魔力である。


『先ほどから魔力をここに流し込んでいるのが感じられる。それも恐ろしく大量にな。魔力を流し込むのはわかるんだが、それが余りにも大量すぎるから気になってな』


 だからもしかすると、その魔力の流れを断ち切ってしまえば何とかなるのではないかとセルフォンは考えたまでは良かったのだが、だからといってこれが止められるという保証もない。

 それでもこうしてここにわざわざ、それも自分が死ぬかもしれないという危険を冒してまで戻ってきたのは、やはりこの大木城を自分たちの家だと考えているからであるし、その家をこれ以上ニルスに好きにさせるわけには行かなかったからだ。


『魔力が送り込まれてきているのは……二箇所。そのうちの一つは……この下か!!』


 せめて魔力を流し込むのを止められればどうにかなるかもしれないので、セルフォンはここでアサドールに目を向ける。


『アサドール、某にありったけの魔力を送り込んでくれ!!』

『何をするつもりだ?』

『説明している暇はない!! とにかくそなたの魔力を某の手に向かって送り込んでくれ!!』


 彼が何をするつもりなのか見当もつかないが、とにかくこうなってしまった以上は彼に協力するしかないだろう。

 アサドールはセルフォンに言われた通り、自分の体内にあるありったけの魔力をセルフォンの中に送り込む。

 それと同時にセルフォンは地面に右手をついて、意識を集中させて魔力をためていく。


『……いいか、某が合図したら一気に空中に避難するんだ!!』

『説明している暇はない?』

『ない。だから身構えて心の準備だけはしておけ』


 何がどうなるのかさっぱりわからないままだが、とにかくここはセルフォンの指示に従うしかなさそうだ。

 そう考えて身構えるアサドールの足元では、徐々にセルフォンから送り込まれた魔力によって地面がほのかに温かくなってきていた。


『……何だか地面が熱くなってきている気がするんだが……』

『ああ。だがこれからまだ熱くなるぞ』


 しかし、こんなにのんびりしていたらそれこそもう時間がなくなってしまうので、アサドールの焦りは頂点に達しようとしていた。


『間に合わんぞ!! 早く逃げるぞ!!』

『いや、あと少しだ!!』


 いざとなればアサドールはセルフォンを置いて逃げようとまで考えていたのだが、その時は唐突にやってきた。


『……今だ、飛べっ!!』

『うえっ!?』


 アサドールはセルフォンの突然の指示に驚きながらも、自分の行動だけはセルフォンの指示通りにしていた。

 ズン……と地響きが来た後に地面が少しだけボコッと盛り上がり、舗装されている地面に亀裂が入っていく。


【何だ何だ何だ? どう考えても恐ろしいことが地中で起こっているのはわかるが……】


 それにしては地味な展開だなあと思いつつ、空中からセルフォンのやったことを見下ろすアサドール。

 すると片膝をついて地面に右手をつけていたセルフォンが、妙に晴々とした表情でアサドールに降りてきても良いと許可を出した。


『よし、これで自爆装置はなくなったぞ!!』

『む? ……そういえば警報もピタリと止んだな。お主は一体何をしたんだ?』


 こればかりは説明してもらわなければ納得できない。

 そしてそれは他のメンバーが来てから一緒に説明するということで、まずはセルフォンが避難していった他のメンバーに魔術通信を入れることにした。


『……こちらセルフォンだ。自爆装置は無事に止まったから、再度この魔力砲の部屋に集合せよ』

『魔力を使って地中に何かしたのか?』

『ああ。地中にある魔力の充填の管を破壊した。これで自爆に必要な魔力を一気に流し込むことで魔力砲の暴発を狙ったようだが、それも失敗に終わったようだな』

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