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586.地下の壁

「ふふふ……そちらから逃げ始めますか。まあそれでもいいでしょう」


 地下の自爆装置が作動したことも、それによってせっかく手に入れたはずの地下の兵器をみすみす後にするしかなくなってしまった一行のことも、最上階にいるニルスは水晶によって全て見ることができている。

 そう……少しでも自分たちの不利になるものは潰しておくのが戦術だからだ。


(まあそちらを選んだとしても、脱出はそうそう簡単にはいきませんよ。自爆装置はあなたたちを逃がさないようにしますからね!!)


 そのニルスの思惑通り、グラルバルトが案内するこの地上への道には多数の行く手を阻む壁が設置されているからだった。


『くっ……こっちは閉まっている!!』

『だったらこっちだ!!』


 その行く手を阻むものといえば、石造りの地下の爆発から少しでも避難している人員を守るために造られた「壁」だった。

 自爆装置が作動し始めると、それに呼応する形で自動的に各地に設置されているこの壁が閉まり始めることによって、時間が経つにつれて地下からの脱出が不可能になってしまう。


「ダメだ、こっちも行き止まりだよ!!」

『ならばこっちだ!!』


 このようにして地下が入り組んでいるのは、元々ここが研究所として使われていたという経緯があるからなのだとグラルバルトが走りながら説明してくれた。

 研究の過程で事故が起こったりした時に、壁を使うことで少しでも毒が蔓延したり火災が延焼したりするのを防ぐために各地に壁を造ったらしいのだが、まさかそれをニルスに逆に利用されて全員爆死させられてしまいそうになるとは、敵の大胆な作戦にまんまと引っかかってしまったことになる。


『ニルスもまさかあそこに罠を仕掛けてくるとはな……今までは敵の増援が出てきたりしてきたばかりだったから、こんな形であれを諦めなければならないとは……』


 魔力砲を諦めなければならないということで非常に残念そうな表情になるグラルバルトだったが、もちろんだからといってニルスを倒さないわけにはいかない。

 そして自爆装置で全員揃って爆死するのは絶対にごめんなので、まずはこの地下からの脱出を最優先に考えるグラルバルトの耳に、セバクターの戸惑った声が聞こえてきた。


「……あれっ? そういえばアサドールってどこに行った?」

『えっ?』


 斜め後ろから聞こえてきたセバクターの声に反応したグラルバルトが、ここでようやくアサドールの姿が見えないことに気がついた。

 それだけではなく、気がついてみればセルフォンの姿も見えなくなっている。

 当然そのことを報告するべく、セバクターは前方を走るメンバーたちに向かって大声を張り上げる。


「おい誰か!! アサドールとセルフォンを見なかったか!?」

『はっ!?』

「えっ、いなくなっちゃったの!?」


 自爆装置の不気味な警報が鳴り響いている中で、とにかくここから逃げ出すのに全力で必死に走っていた三名は、当然その二名のことを気にしている余裕などなかった。

 こうしてここでようやくその二名とはぐれてしまったことに気がついた一行だったが、だからといってようやく地下二階まで戻ってきただけあって戻っている余裕はない。


「あーっ、もう!! 何やってんだよあいつらは!?」

「全くだ。とにかく連絡を入れて今あの二人がどこにいるのかを確かめなければな!」


 エリアスがイラつきを抑えられずに金色の髪をバリバリとかきむしる一方で、冷静な性格のセバクターはひとまずアサドールに魔術通信を入れながら走るのはやめない。

 だが……。


「……ダメだ、応答がない」

「そんな!! もう一回呼び出してみてよ!!」

「……ダメだ、やはり応答しない……」


 セバクターに続いて、彼の相棒であるエリアスの表情にも絶望の色が浮かぶ。

 アサドールとセルフォンは一体どこに行ってしまったのだろうか?

 ここはとりあえず、この中で一番魔力の量を体内に含んでおり魔術が最も得意なグラルバルトがこの地下全体に探査魔術を展開し、アサドールとセルフォンがどこにいるのかを突き止める作戦に出る。

 すると……。


『おい、あの二人はどうやら地下五階にまだいるみたいだぞ!!』

「何だってえ!?」

「まさか壁に阻まれて動けないままなのか!?」


 そうだとしたら引き返してでも助けに行かねばならないと考えるエリアスとセバクターだが、探査魔術を展開し続けているグラルバルトはその魔力の動き方に疑問を持つ。


『いいや、先ほどまでは確かに私たちと一緒に脱出しようとしていた。だがこの動き方を見ると……あの砲台のある部屋に戻っているようだ』

「どうしてそんなことを!?」

『知らん! だが、何か目的があって動いているのかもしれないな』


 そう、グラルバルトの予想通りアサドールとセルフォンの人外コンビは砲台のある部屋に戻り、あることを実行しようと考えているのであった。

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