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583.逆転の構図

『うおっ!?』

『あいたっ!!』

『くっ!』


 突然出てきたその無数の鋭い突起に、エルヴェダーとタリヴァルはギリギリでそれを回避することに成功。

 しかしドラゴンたちの中で一番戦いに慣れていないシュヴィリスだけは、そのトゲをかわしきれずに左手に突き刺さってしまった。


「ブルルルッ、グウウウウ!!」

『うっ、わあああああっ!?』


 ルギーレたちの目の前で、その鋭くて太いトゲが突き刺さったまま四足歩行の巨大生物に振り回されてしまうシュヴィリス。

 仮にもこの世界を看視している立場の自分が、こんな異世界の生物にやすやすと振り回されているという現実を受け止めきれずに、そのまま壁に向かって巨大生物に叩きつけられてしまった。


『がはっ!?』

「シュヴィリス!!」


 ルギーレの声が響くのも無理はなかった。

 シュヴィリスを頭の部分のトゲで……この場合はもはやツノと言っても差し支えないそれで突き刺したまま、正方形状になっているこのエントランスの一辺に突進したことによって壁と自分で挟み込むことに成功した巨大生物。

 その挟まれた衝撃でようやくトゲが手からすっぽ抜けたものの、シュヴィリスはそこからうつ伏せに力なく倒れ込んで動かなくなってしまった。


「……う、嘘だろ……?」

「まさかこの世界の伝説のドラゴンがやられるなんて……」


 セバクターもエリアスも、目の前で起こっている現実を受け入れられない状態だったが、そんなことは巨大生物には関係ない。

 上から俯瞰した時に縦長になっているその巨体をブルブルと揺らし、次の獲物に狙いを定める巨大生物が見つけたのは、仁王立ちになる赤い男の姿だった。


『……おら、来いよ』

「ブルルルウッ!!」


 その赤い男からは、目に見えるほどに赤い闘気みたいなものが浮かび上がっている。

 タリヴァルとエリアスがシュヴィリスに駆け寄って回復魔術をかけ始めている一方で、その全身が岩肌で覆われている生物は迷うことなくエルヴェダーに向かって突進していく。

 対するエルヴェダーはというと……。


(ま、丸腰!?)


 ルギーレが驚きを隠せないのは当たり前のその光景。

 なぜならエルヴェダーは人間の姿の時に使う愛用の槍を構えもせず、それどころかその槍を地面に投げ捨てて全くの無手で立ち向かおうとしていたからだった。

 先ほどドラゴン全員でもあの巨大生物を押さえられなかったのに、いったい何を考えているのか皆目見当もつかないのだが、このまま彼を放っておいたらシュヴィリスの二の舞になってしまうと判断したルギーレは駆け出した……のだが。


「えっ?」


 思わずその足が止まってしまう。

 それもそのはずで、全速力で突進してきた巨大生物に対してエルヴェダーはすんでのところで一気に仰向けに地面に寝転がる。

 すると巨大生物と地面との隙間に身体をうまく滑り込ませる形になったので、そこから巨大生物の腹の部分に向けて全力の鉄拳を叩き込んだ。


「グギャッ!?」

『おっらっ!!』


 腹の部分だけは岩肌ではなく柔らかい部分になっているので、自分たちドラゴンと同じようなものなのかもしれないと見当をつけていたエルヴェダーの作戦は成功。

 ドラゴンの力のままで殴られた巨大生物は怯んで動きを止めるが、それを絶好の機会とみなしたエルヴェダーは両手の指を巨大生物の腹に食い込ませ、足を使って後ろに向かって投げ飛ばした。


「ギャッ……グウッ!!」


 壁に向かって背中から叩きつけられる結果になった巨大生物は、そのまま仰向けになってなかなか起き上がれない。

 つまりそれはエルヴェダーにとってとどめを刺す好機になる。


『はっ!!』

「ゲブッ!?」


 エルヴェダーの槍がまっすぐ巨大生物の腹に突き刺さった。

 しかもそれで彼の攻撃は終わらず、槍に纏わせた多量の魔力によって腹を中心に大爆発を起こすことに成功。

 声すら上げることなく、全身が突起だらけの巨大生物が爆死するのを他のメンバーは唖然として見ていることしかできなかったのだった……。


『終わったぜ……』

「あ、ああ……しかしすごいもんだな」

『当然だよ。俺様たちがそう簡単に負けてたまるかっての。それよりもシュヴィリスは!?』


 先ほど手を刺された後に壁に叩きつけられてから、意識不明の状態に陥っている状態のシュヴィリス。

 しかしそんな彼は、懸命にエリアスとタリヴァルの回復魔術によって処置が施されていた。


『うう……』

「あっ、意識が戻ってきた!!」

『そうだな。しかしまだ油断はできない。お前たちは先に上に行け。我らはシュヴィリスを治療してから後を追う!!』

「……わかった。頼んだぞ!!」


 まだまだ上から敵が下りてくる気配が感じられるとのことで、ルギーレたちはタリヴァルの指示に従って一足先に七十一階から先に向かうことにした。

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