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573.地上の戦い

 エリアスが地下の機械室で、弓とアディラードを使ってその場所にいる多くの敵を倒しているそのころ、西から回り込んできていたアサドールは大木城の侵入者対策の仕掛けに苦戦していた。


【ダメだ、これでは迂闊に近づけん!!】


 弓と魔術に強いアサドールは得意の木々の力を借りる魔術や魔術防壁を展開しているものの、それでもなお敵の攻撃は激しいものである。

 それもそのはずで、今のアサドールを狙っているのは魔物ではなく、この大木城に取り付けられている侵入者撃退用の魔力弾丸を連射する装置の発射口だったからだ。

 そこからアサドールの魔力を感知して無数の弾丸が発射されており、迂闊に近づくことができない状態なのだ。


【地上部隊に発射口が向けられていないということは、吾輩のように空中から侵入を試みようとする敵に対しての装置らしいな。非常に厄介だ!!】


 ある程度、発射口に近づかないと弾丸が発射されない。

 かといって地上に降りて西側の出入り口に近づこうとしても、自分だけではあっという間に囲まれる可能性が高い。

 さらにこの濃い霧の中では近づこうにも近づけないことに拍車をかけているため、地面に木々を突き出させたりする強大な魔術で、地上部隊や空中部隊を迎え撃つのが精一杯の状況だった。


【ほぼ真っ白の視界……何も見えないなんて山の上でもなかなかないはずなんだが……】


 これが大木城の……いや、ドラゴンたちの棲み家であるゼッザオの防御力だというのか。

 実際は人工的に生み出されているものなのは頭で理解していても、自然現象と言われればそう信じてしまうかもしれない霧をうまく利用した広範囲の進軍を阻むものに、自分たちの棲み処でありながら敵とし回った場合にどれだけ恐ろしいのかを実感して舌を巻いてしまうアサドール。

 ここは一度引き返し、改めて別の出入り口からの突破を試みようと考えたアサドールが引き返そうとした……その瞬間だった。


【……誰だ、こんな時に!?】


 突然かかってくる魔術通信。

 空中も地上も安全な場所なんてなさそうなこの状況で、相手によっては無視することも考えながら石に浮かび上がるその相手の名前を確認するアサドールだったが、その見覚えのある名前が浮かんでいた。


【エリアス……何かあったのか?】


 もしどうでもいいことだったらすぐに切ってやると考えながら、アサドールが通信に応答してみる。

 だが、相手の話を聞くにつれてどうでもいいどころか重大な内容の連絡であることがわかった。


『……何? 迎撃装置を地下で止めた?』

『そうなんだ。グラルバルトに頼まれてな。だからもう空中から大木に近寄っても撃たれないはずだぞ!!』


 本当なのだろうか……とアサドールは疑いながら、すぐにでも逃げられるように身体を斜め後ろに向けながら大木に接近する。

 すると驚くことに、アサドールを先ほどまで狙って動いていたはずの弾丸発射口が一切動かずに沈黙しているではないか!!

 大木の周囲を一周するように、そして横にも縦にも等間隔で設置されているはずの発射口はもう何も音を立てることなく静まり返っていた。


『……本当だ!! お主がこの危険な発射装置を止めてくれたんだな!!」

『そーだよ。僕に感謝してくれよな~~!』

『ああ、感謝する。お主はもう中に入っているようだから、吾輩もすぐに中に入っていく!!』


 エリアスの大活躍によって迎撃装置が停止した。

 それはよかったのだが、自分が降下して西側の出入り口へと向かう時にアサドールにはふと気がついたことがあった。


【そういえば、これはもちろん吾輩だけではなく他の魔物たちや人間たちにも効果があるはずなんだが……】


 だったらこの装置を利用しない手はないと頭を回転させたアサドールは、まずはとにかく他のメンバーたちと合流するべく大木城の中へと入ることに成功した。


『アサドール、無事だったか!!』

『ああ。エリアスから連絡が来て、外の弾丸が飛んでくる装置を止めてくれたらしい』

『私が頼んだんだ。しかし今エリアスは一人で地下に向かったから、助けに向かってやってくれ』

『わかった』


 グラルバルトいわくエリアスは一人で戦っているとのことだったので、彼よりも内部事情に詳しい自分が援護に向かうべくさっさと向かうことにする。

 そしてその装置の制御室に向かったアサドールが見たものは、壁や床にべっとりと血のりがついており、絶命している魔物や人間たちがそこかしこに転がっている部屋だった。


『装置を止めてくれて感謝するが……これはまた派手にやったものだな』

「そりゃそうだ。だってたくさんの奴が襲い掛かってくるんだから、戦わないわけにいかなかったしな」


 そしてその光景を作り出したエリアスは、身体中に返り血を浴びて見るも恐ろしい身なりに変貌していた……。

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