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564.襲い来る人間?

「くっそー、何なんだよこいつらはよぉ!!」

『焦るな!! 我たちの攻撃は効いているぞ!!』


 ルギーレは元より、人間たちよりも遥かに長い時を生きている伝説のドラゴンであるセルフォンとタリヴァルでさえも初めて見る、その異様な敵たち。

 それは一体何なのかといえば、ルギーレと同じ人間の身体を持っている……と思いきや、手足と身体に乗っている頭が人間ではない二足歩行の生物たちであった。

 これは明らかに人間ではないのだが、戦いのそれは明らかに人間のものと変わらない。

 しかもどこからか現れてくる異様な敵たちの中には、人間にはありえない背中の翼で自由自在に空を飛び回り、空から弓矢で狙撃してくるタチの悪い者までいる。

 まるで人間と動物が合体した、これは……。


『獣と人で獣人って呼んだ方がいいのか、これは……』

『そういえば、エリアスとセバクターたちの方にもこれが現れているのか?』

「知るか!! だが、俺たちの方に来てるってことはぜってー向こうにも行ってるってことじゃねえの!?」


 残り二組の状況が全くわからないし、向こうが獣人たちと戦闘中だという可能性も確かに捨てきれないのだが、今はそんなことを考えるよりも先にこの獣人たちを倒すことが何よりも最優先事項である。

 そして、見れば見るほど人間のように二足歩行していながら、たまに人間をも超越する身体能力を持っているのが獣人なのだと三人は気づき始めた。


【我たちのように、何か別の生き物が人間になったというわけではなく……元々が人間と獣の結合主らしいな。だからオオカミの人間はやたらと素早い動きで我らを翻弄してきているのか】


 ドラゴンの姿のままで戦うのがいいのかと最初は考えていたタリヴァルだったが、相手も人外の存在となればこちらも人間の姿で戦った方がやりやすそうだと結論づけ、現在は人間の姿で二本のレイピアを振り回している。

 並の人間相手なら、例え三人いっぺんにかかってきても負けたことのないタリヴァルではあるものの、襲いかかってくるのが今は獣人たちという未知の相手ばかりなのでその常識は通用しない。

 となればこちらも、本来人間の姿で人間を相手にしている時に抑えている本来の力をすべて解き放ちし、この自分に挑んできたことを後悔させてやると意気込んで戦う。


「うわあああっ!!」

「ひぃぃ、う、うわああっ!!」


 まるで風に吹かれて吹っ飛ぶ木の葉のように、重さがあるはずの獣人たちがいともたやすく宙に舞い上がっていく。

 それは本来ドラゴンであるがゆえの、彼の力が解放されている瞬間を垣間見る場面だった。

 ドラゴンである彼の力は、人間であろうが獣人であろうがどうにもならないほどの差がある。

 ましてタリヴァルは普通のドラゴンではなく、このヘルヴァナールという世界を看視している伝説のドラゴンの一匹なのだから、こんな相手が束になってかかってきても負けるわけがなかった。

 そして、それはもう一匹のドラゴンであるセルフォンも同じである。


『はああっ!!』

「うおおおおああああっ!!:


 バスタードソードを振りかざして突っ込んでくる虎獣人に、右手に握ったロングソードを一閃。

 その刃は獣人には明らかに届いていないものの、ロングソードを振ったのは獣人を斬るためではなく吹っ飛ばすため。

 風を操る伝説のドラゴンである彼は、タリヴァルよりも強い衝撃波を生み出して自分に相手を近づけさせないことが可能なのだ。

 ロングソードを軽く振り回すだけの動きなのに、生み出された風の衝撃波は人間の持つ力を圧倒的に凌駕しているし、獣人たちが束になってもかなわないのはまさに圧巻の一言。

 しかし、それをレイグラードで敵を倒しつつ眺めていたルギーレがふとこんなことを考える。


(そーいやー、こいつらってどっから現れてんだぁ?)


 ルギーレがドラゴンに引きたちと一緒に降り立ったのは、明らかに寒くて雪深い雪原。

 それはそれで別に進めばいいのであるが、その中で獣人たちは何の前触れもなく吹雪の先から姿を見せたのである。

 この雪の中をもしかして凍死覚悟の上でずっと待っていたのだろうか? それともそんな寒さなんか気にしなくていいような魔術を使っていたのだろうか? と首をかしげながらも自らもレイグラードを振り回して獣人たちを倒しながら進んでいたルギーレだったが、そんな彼の視線の先に奇妙なものが現れたのはその時だった。


(……ん? 何だありゃ?)


 ルギーレの視線の先、吹雪の薄暗い景色の中から徐々に姿を見せたもの。

 それは、青白く光り輝いて自分の胸あたりにポツンと浮いている、それはそれは両手を広げてもまだ余りそうなぐらいの大きさがある漆黒の穴だった。

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