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560.核

「……ん?」

『おい、このデカブツの中に何か赤く光ってるもんがあんぜ!!』


 セバクターの耳の中に入っている、アサドールが開発したという超小型の連絡用魔晶石からエルヴェダーの声が聞こえてくる。

 どうやら上空から火を噴いている彼が、彼なりの視点でイソギンチャクの中に何かを見つけたようである。

 と言われても、それがセバクターにとって何がどうなっているのかはさっぱりわからないので、まずはそれを確かめなければならない。


「俺も一緒に行けばいいのか?」

『できればそうしてもらえねえかな。俺様の炎とお前の剣で触手がかなり減ったみてえだしよぉ』


 ここにきて再び上空へと舞い上がることになったセバクター。

 貯水池もそのほとんどが凍って、最初のころよりもだいぶイソギンチャクの動きも鈍くなった。

 だからこそ、シュヴィリスに対してもう自分の援護は必要ないと考えた彼はエルヴェダーのその要請に従って、イソギンチャクの内部が見える上空までやってきた。


『あれだぜ!!』

「……なるほど、どうやらあれがこのイソギンチャクの弱点のようだな」


 確かに、上空からエルヴェダーの背中に乗って下を見下ろしてみればイソギンチャクの無数の触手の下に隠れる形で、ほんのりと赤く輝いている核のようなものが見えるではないか。

 しかし、あれを攻撃すれば相手にダメージを与えられると決まったわけでもなければ、あそこまでたどり着く前に触手に絡め取られて自分が餌食になってしまう可能性だって十分に考えられる。


「俺があれを壊せばいいのか?」

『それしかねえだろうな。俺様はあいにく火属性のドラゴンだから、あいつの中に水でも入ってたら逆にやべえことになっちまうぜ』


 だからこそ、エルヴェダーはセバクターの「あれ」に望みを託すことにする。


『俺様の炎のブレスもあんまり効いてねえみたいだしよ、ここはお前があの塔の上でケルベロスに対してぶちかましたっていう、ファイナルなんとかって技で一気に何とかならねえか?』

「簡単にいうが……あれはあれでなかなか体力も気力も魔力も消費するものだ」


 だからこそ、やるならやるで一発で決めなければならないのが非常に危険な賭けである。

 ケルべロスの時は屋上という何も遮蔽物がない状況でその的がしっかりと見えていたからこそ、急降下して一撃で仕留めるのに躊躇は必要なかった。

 だが今回のイソギンチャクの場合、無数の触手が遮蔽物となるばかりか毒を持っている可能性が非常に高いので、一本や二本ならまだロングソードで斬り飛ばすことができても、無数の触手の中に急降下して一気に叩き斬ることはセバクターでも躊躇するしかなかった。

 たまに飛んでくる触手を斬り飛ばしながら、自分の背中の上でそう語っているセバクターの話を聞いてエルヴェダーは一つの提案をする。


『じゃーさぁ、要はこいつを一気に斬れるだけのパワーがありゃいいんだな?』

「それはそうだが……何か手でもあるのか?」

『ああ。俺様の魔力をその剣に流し込んで攻撃力を上げるんだ』


 もちろん、自分が火属性のドラゴンであることをわかった上でこんな提案をしているエルヴェダー。

 彼がいうには、火属性は全ての魔力の属性の中でも最も攻撃力が高いことで知られており、その魔力をセバクターのロングソードに流し込んでファイナルカイザースラッシャーで仕留めるのが一番いい、ということなのだろう。

 セバクターの世界のことを知らないので、必殺技というのもどういう原理で繰り出されるのかもよくわかっていないエルヴェダーだが、ここは彼が頼りだと伝説のドラゴンの一匹としてお願いする。


「……わかった。しかし、それなりの援護は頼むぞ」

『やってやんよ。それでなくてもあいつの動きは見ての通りシュヴィリスの奴がすげえ遅くしてくれたんだからよ!!』


 ガッチリと水面が凍って身動きが取れなくなっているイソギンチャクは、自由に動かすことのできる触手を縦横無尽に振り回して攻撃していく。

 だが、この巨大イソギンチャクと向かい合って戦ったことがきっかけでセバクターたちはすでにその動きを見切っているため、自分たちを触手が狙ってきても回避しつつ斬り飛ばすのにも慣れていた。


『俺様も手伝うぜえ!!』


 シュヴィリスがまだこの貯水池を凍らせるべく魔力を送り込み続けているため、戦えるのはエルヴェダーとセバクターのみである。

 そして空中から接近したエルヴェダーはまず、飛んできた触手を回避して逆に掴んでやる。

 そのまま力任せに引っ張ってやれば、バタバタと気持ち悪い動きをしながら触手が引っこ抜けてしまった。それも一本ではなく、何本かまとめてである。

 セバクターのロングソードとエルヴェダーの引っこ抜きをそうして繰り返すことで、明らかにイソギンチャクの中にある核らしきものが見えた。


『うおーし、それじゃやってやれ!!』

「わかった」


 上手く狙いを定めつつ、自分のロングソードに自分の魔力とエルヴェダーの魔力を詰め込んだ彼は、大きくロングソードを振りかぶって宙に向かって迷いなく飛び降りた!!

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