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54.必殺技

 天を貫くような轟音とともに、あめんぼうもどきが文字通り粉々になってぬかるみの中にその破片を撒き散らしながら絶命した。

 その爆発を目の当たりにしたルディアは、何が起こったのか分からずに目を白黒させていたが、ハッと我に返ってルギーレの安否を確認する。


「……る、ルギーレ!!」


 大声を出しながらあめんぼうもどきのあの爆発に巻き込まれていないかを確認しようとしたが、それよりも先に平然とした様子で泥だらけの彼が爆発をバックに歩いてくるのが先だった。


「俺なら生きてるぜ」

「ああ……良かった。でも今のは一体何なの? 初めて見る技だった気がするけど」

「さっきのはマリユスに教えてもらったんだよ。まだそんなに仲が悪くない時にな」



 ◇



 二年前、まだルギーレが勇者パーティーにいた時のこと。

 ルギーレはいつもの通り、自分の与えられた雑用をこなしながら夜営の準備に励んでいた。

 しかしその途中で、運悪く大型の魔物がキャンプに近づいてきてしまったのだ。


「うわっ、何だこいつは!?」

「ルギーレ、下がってろ!!」


 真っ先に狙いを定められたルギーレの横を通り過ぎたマリユスは、魔物の攻撃をかわしてその脇腹にハルバードの槍の部分を深く突き刺した。

 そして大声でこう言ったのだ。


「爆ぜろ、ハイパーエクスプロージョン!!」


 その声と同時に、突き刺さったハルバードの先端部分があると思われる場所を中心にして、大型の魔物の身体が爆散した。

 まるで夜空に浮かぶ花火の様だとも思ったルギーレだったが、今の技は一体何だ? と勇者に詰め寄る。

 すると、彼は「必殺技だ」と返した。


「最近覚えたんだ。ハイパーエクスプロージョンと言って、見ていた通り武器を媒体にして爆発を起こすんだ」

「すげえ、すげえ! 俺にもできるかな!?」


 もしこの技が使えるとしたら、自分もパーティーの戦力となれるかもしれない。

 そう考えたルギーレだったが、マリユスの顔が曇ってしまった。


「……いいや、お前には無理だろうな」

「は? 何でだよ!?」

「魔力の量の問題だよ。この必殺技は大量の魔力を消費するんでな。魔力の量が少ないと爆発の規模も小さくなり、敵にダメージを与えられなくなってしまうんだ」

「そう、か……。でも将来、俺が強くなったら使ってみてぇからよ、やり方だけでも教えてくれねえか?」

「まぁ、やり方だけならいいけど」



 ◇



 そうしてマリユスがルギーレに教えた方法とは、非常にシンプルなものだったという。


「で、教えてもらったんでしょ?」

「ああ。敵に突き刺した武器に魔力を送り込んで、そして一気に手に力を込めて爆発させるだけだ。ただしそのためにはその爆発を起こせるだけの魔力と、爆発に耐えられるだけの材質で作り上げた武器がないとダメだってのも一緒に教えられた」

「なら、今のあなたは魔力の量がそれだけちゃんとあって、このレイグラードも爆発に耐えられるだけの材質で作られているのね」


 結果はどうであれ、これでルギーレとルディアのファルス帝国での初依頼が終了した。

 しかし、ルギーレは先ほどのハイパーエクスプロージョンで魔力を使いすぎたことによって、今日はもう休まなければならなくなった。

 今回の依頼で宿代も稼げたわけだし、それ以前にディレーディから魔晶石以外にも少しであるが軍資金を用意してもらっているので、二人は宿でこれからのことを考える。


「少し遠回りになるけど、この帝都ミクトランザから北東に向かえばアーエリヴァに着けるはずだぜ」

「そうね。この帝都からも列車が出ているみたいだし、もう一つの依頼を終わらせたらアーエリヴァに向かいましょう」


 あの医者の男に言われたように、アーエリヴァに知り合いがいてその男が何か重要な情報を握っているらしいので、ますますアーエリヴァに向かった方がいいだろうと考える。

 それに捨て子だったルギーレが拾われたのもアーエリヴァだったので、自分の出生の秘密もわかるかもしれない。

 しかし、その前に明日はもっとルギーレに関係する所に行かなければならないのだ。


「でもさぁ、そのもう一つの依頼ってーのが俺とマリユスとベティーナが生まれ育った孤児院からの依頼なんだよなぁ」

「ああ……そういえばそうね」


 自分だけが勇者パーティーから外されてしまったということが、果たして孤児院に伝わっているのかどうか?

 もし伝わっていたとしたら肩身が狭い状況になるのは目に見えている。

 だが依頼を出しているのもそこだったし、受けられてすぐにできる仕事がそれしかなかったのでやむを得ず受けたという流れだった。


「ええーい、気にしてもしょーがねーや。とりあえず今の俺のありのままの姿で行ってから、向こうの反応見て考えようぜ!」

「うん、私もそれがいいと思うわ」


 このミクトランザの外れにある孤児院で、こんな形で自分たち三人が出て行った後の状況を見ることになったルギーレだが、そこにはやるせない気持ちになる光景が広がっていた。

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