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558.思わぬ苦戦

 最初にその予想外の苦戦を強いられたのは、北東から島に向かって突入することになったシュヴィリスとエルヴェダーとセバクターであった。

 エルヴェダーいわく、この方面から突っ込んでいけばゼッザオの中にある大きな貯水湖のそばに着陸できるということだったのだが、それを邪魔する者が敵の手によって配置されていた。


『……ん!?』

「どうした?」

『やべぇ、掴まれっ!!』

「うお……っ!!」


 いち早くその違和感と威圧感に気がついたエルヴェダーが、自分の背中から落ちないようにくくりつけてもらった簡素なロープを握れとセバクターに指示を出しつつ、右へと急旋回する。

 その瞬間、白い壁となって視界を遮っていた霧のカーテンの中から何かが空気を切り裂いて飛んできた。


「うっ!?」

『うわっ、何!?』


 シュヴィリスはギリギリで身体を捻る形で「それ」を回避したものの、セバクターはエルヴェダーの背中に乗っていて自分の身体を「それ」がかすめていったことに冷や汗が流れ、恐怖を覚える。

 一体何が飛んできたのかと振り返ってみるものの、濃い霧に阻まれて真っ白な視界の中では何も確認することができない。

 しかし、人間ではないシュヴィリスは「それ」の姿をハッキリと捉えていた。


『さ、さっきの……ムチみたいな黒っぽくて細長い何かだったよ!!』

「何だと? もしかしたらまた機械兵器みたいな何かがこの先にいるってことか?」

『それはわからないけど、少なくとも僕たちをこの濃い霧の中でしっかりと狙ってくるだけの何かがいるのは間違いないとうわっ!?』


 またもや霧の中から突然現れた、今度はセバクターにもハッキリと見えたその黒っぽい何かが空飛ぶ二匹のドラゴンに襲いかかってくる。

 しかも今度は一つだけではなく、もう一本別の方向から別の黒い何かが飛んできたのだ。

 そしてその後から現れた一本を避けきれず、バシーンと大きな音をさせながらシュヴィリスに当たってしまった。


『ぐえっ!?』

『シュヴィリス!!』

「くっ……!!」


 空中で攻撃を受けたシュヴィリスはそのままふらつきつつも、翼を懸命に動かして何とか体勢を立て直した。

 しかし、このまま空中を飛んでいたらさらに先ほどの攻撃を喰らってしまうのは目に見えている。

 そもそも、相手からこちらの姿が見えているのかそれとも闇雲に何かを振り回しているのかはわからないが、相手が優勢なのは間違いないだろう。


『くっそ、このままじゃ俺様たち全員やられちまう!! 下に降りるぞ!!』

『わかったよ!!』


 この何も見えない中で飛び続けるのは危険すぎるし、その上この霧の中から黒い謎の物体がどこから飛んでくるのかわからないのはもっと危険だ。

 地上に降りさえしてしまえば、少なくとも空中から落下死してしまう危険性だけはなくなるので、二匹と一人は次の攻撃が来ないうちにさっさと地上へと降りてしまうことを決意した。


『はあ、何とか下に降りられたけど……この霧の状況からするともっと先の方に貯水池があるね』

「わかるのか?」

『そりゃそーだよ。だってここはグラルバルトが言っていた通り僕らの地元だよ? それに僕らは君たち人間とは違って何千年も生きているんだから、この島のことなんて隅から隅まで知り尽くしているのさ』


 でも、とシュヴィリスは続ける。


『地形は変わっていないみたいだけど、どうやら邪魔者がたくさん入り込んでいるみたいだねえ』

『お前の言う通りだ。俺様もビンビン感じるぜ……この先から奇妙な魔力がすげえ溢れてんのをさ!!』


 何か得体の知れないものがこの先にいる。

 恐らく、先ほど霧の中で自分たちに向かってきていた黒い鞭のような物体の持ち主だろう、とエルヴェダーは分析する。


『でもよー、俺様たちだって地元で好き勝手されちまってて黙ってるほど心が広くねえからよ。だから何にしたって俺様たちの邪魔をするような奴はぶっ潰すだけさ』

『同感だね……何がいるのかはわからないけど、あんな空中に謎の物体を飛ばしてくるような相手らしいから、今は油断せずに進むだけだね』


 魔力を一時的になくすための薬の効果も切れてしまったことだし、あの謎の物体にこれ以上狙われないようにドラゴンたちは現在人間の姿になっている。

 だが、霧がだんだんと晴れてくるにつれて三名の前に姿を見せた「それ」は、彼らの予想外のものだったのである。


「な、何だあれは!?」

『えっ、ちょっとあれって……!!』

『焼いてみると美味そうだが……さすがにデケェな』


 三名の目の前に姿を見せたのは、どう見ても海の生物であるはずの巨大なイソギンチャクだった。

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