555.エターナルソード
しかし、今の自分たちがいる場所はメルディアスの城の中である。
さらにいえばあの地下で消えてしまった精霊の気配も、すでにあの時エリアスが感じなくなってしまっていたというので、どうやらどこかに逃げてしまったらしい。
あのニルスとマリユスの邪魔が入らなければ、あそこで精霊との決着がつけられていたかもしれないというのはエリアスの弁だった。
ひとまずルギーレたちにとっては情報が入りすぎて混乱してきたので、まずは目先の話から噛み砕いていくことにする。
「ま……待ってくれ。とにかく今はまず、そのエターナルソードって奴を取りにいくことが最優先だからさ。それについて話そうぜ……っていっても、俺は勇者パーティーの一員だったころに噂で聞いたことがあるぐらいなんだがな」
だからみんなは知っているか? とヘルヴァナールの人間たちに話を振ってみると、まずはルディアからこんな答えが返ってきた。
「知ってるも何も、エターナルソードのことは有名よ。あなただけが知っているわけじゃないわ。あらゆる魔力を無効化して敵を斬ることができる、最強のロングソード」って広く知られているわよ」
『そもそもエターナルソードというのはな、私たち竜族の生み出した最高傑作の武器なんだ』
しかし、あの勇者マリユスでさえも手に取ったことがないのがそのエターナルソードである。
もしかしたらレイグラードと同様の魔剣なのかもしれないが、だからといってこのまま自分がレイグラードに乗っ取られてしまう未来を黙って迎え入れるわけにもいかない。
「ひとまず、装備を整えてそのエターナルソードを手に入れて、そしてあの二人を倒す。この流れで話が進むって考えていいか?」
『そうなるだろうな。ただし、ゼッザオに来るのであれば私たちの領地に入るということになるから、とりあえず私たちもついていく』
『というか、某たちがいなければエターナルソードのある場所にはたどり着けないからな』
「え……そうなんですか?」
どうやら思っていた以上にそのエターナルソードとやらを手に入れるのには手間がかかりそうなので、とにかく現地に向かってやれるだけの行動をするしかないと考えている一行。
ただし、ここまで付き合ってくれたマルニスやブラインたちを始めとするアーエリヴァの人間たちは、一緒にゼッザオに向かうことはできないらしい。
「僕たちは例の塔のことを始め、騎士団のこととかギルドのこととか失踪した住民たちの調査や後始末を引き続き進めなければなりませんから」
「それなら仕方ないな。でもいろいろとここまで付き合ってくれて世話になったぜ」
マルニスやガルクレスたちとしっかり握手をかわして別れたルギーレは、まずはドラゴンたちと合流してからそのゼッザオに向かうことを決める。
結局人間たちは誰がゼッザオに行くのかといえば、ルギーレ、ルディア、セバクター、エリアスのたった四人という少数のみとなってしまっていた。
「まさかの最終決戦がこの四人だけになるとは……本当に大丈夫かな?」
「私も……エリアスさんと同じで不安な気持ちでたくさんですよ。でもこちらにはドラゴンさんたちもいらっしゃいますから、完全に劣勢というわけではないでしょう」
「それは確かにそうなのだが、あのディルクとニルスの師弟コンビは何をしてくるかわからないからな。俺たちも気を引き締めていかなければ」
そう決意をする三人とは別に、ルギーレは別の不安を抱えていた。
(今まで俺の命を何度も救ってくれたこのレイグラードが魔剣……、あいつの言っていたことだから全部は信用してねえけど、現に俺は一度倒れているから嘘とも思えねえんだよな……)
自らの意思を持って、そして使用者を乗っ取ってしまうという恐ろしいロングソードがこれである。
果たしてそれは本当かどうか?
全てはそのエターナルソードとやらを手に入れれば、その時にわかることなのではないかとルギーレは漠然と考えていた。
「よっしゃ、それなら行こうぜ……そのゼッザオって所によ!!」
「そうね。私がもっと予知夢を見られればいいんだけど……ゼッザオってところに関しての予知夢は見ていないかな」
そういえば、アーエリヴァの中に入ってからずっとルディアと行動を別にせざるをえない状況が続いていたため、彼女と連絡を取れるようになってもさっぱり予知夢のことについて聞いたりする暇がなかったのを思い出すルギーレ。
そもそも、彼女がその予知夢らしきものを見ていないとなれば予言も何もあったものではないのだが。
とにかく今はこの城の中に泊まって、翌朝にこの流れでゼッザオに乗り込むことにした。




