表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

557/629

548.明かされる真実

 もちろん、それはルギーレにとっても大きな疑問である。


「もしかして……ニルスも何だっけ……エンヴィ何とかって世界から来たってのか?」

「ふふふ、そうですよ。そこのエリアスとセバクターとも知り合いですからねえ」

「目的は何だよ?」

「単純です。この世界と向こうの世界の全てを征服することです。どうです? 単純でしょう?」


 ニルスの、本当に単純な欲望。

 しかし、その欲望のためにこちらの世界をかき乱されたのではたまったものではない。

 だが、そうなるとなぜ自分をつけ狙うのかがまだわからないルギーレ。


「じゃあ俺に付きまとわなくても、別に世界征服すりゃいいじゃねえかよ」

「それがそうもいかないんですよね。なぜなら、あなたの持っているその剣……レイグラードこそが、世界を征服するのに必要なんですから」

「え?」


 思わず、自分が構えているこのロングソードに注目するルギーレ。


「どうしてこのロングソードが?」

「それも単純です。その剣はもともとこの世界のものではなくて、エンヴィルーク・アンフェレイアのものだからですよ」

「え……ええええええっ!?」


 その事実はルギーレだけではなく、マリユスとニルス以外の他のメンバーも驚きを隠せない。


「そ、そんな話は僕たちも初耳だよ!?」

「俺だってそうだ。それからセバクターだって……知ってたのか?」

「いいや、俺も知らん……」


 まさかの新事実に驚きを隠せない一行だが、ルギーレは構わずニルスに質問をぶつける。


「じゃあ、このロングソードが俺たちを狙う理由だと?」

「そうですよ。ですから、あなたが素直に降伏してそれをこちらに渡してくれるのであれば私たちもこれ以上手出しはしません……」


 だが、そんなことを言われたってルギーレはレイグラードを渡すつもりなどさらさらない。

 そして、マリユスにまだ聞きたいこともあるのだ。


「嫌だね。……そんなことよりも、俺たちにはまだ疑問があってな。……マリユスの方に」

「俺か?」


 これ以上何を聞かれるのだろうかと、戸惑う表情を一瞬見せるマリユスに対してルギーレはその疑問をぶつける。


「ああ。その聞きたいことは、あんたが勇者という立場を利用していろいろと物資の横流しをしたり他国を攻めているらしいが、それは本当か?」

「……そんなことまで調べるなんて、そっちはよっぽど暇なんだな」


 マリユスの言い方からすると、どうやら噂は本当らしい。


「勇者だからといって、盲目的に俺を信じる奴の多いこと多いこと。俺を慕っているギルドの連中が、俺に声をかけられただけでホイホイついてくるんだ。だから俺は横流しもやっているし、こうして騎士団の援護があるから侵略活動だってできるんだよ」


 平然とそう口に出すマリユスに、ルギーレは肩をすくめて溜め息を吐いた。


「こんなのがマリユスなんてな。勇者ってのはもっと偉大な存在かと思っていたんだが……」

「それが嫌なんだよ」


 突然マリユスの口調が冷たいものに変わる。


「勇者だ、勇者だって……俺はその前に一人の人間だからな。そうやって俺を慕うだけ慕って、本当の俺がどんな奴なのかもわかってないような奴らを都合良く動かすのは、と~っても楽しいぜ?」


 まるで子供のような口調でそういうマリユスに対し、次の質問をぶつけるルギーレ。


「ふぅん……そんなマリユスには楽しくないこともあったらしいな?」

「どういう意味だ?」

「ベティーナは俺の目の前で死んだよ。あいつは塔の空中で繋がっている通路に開いた穴から下に落ちたんだ」

「なっ……にぃ!?」


 驚愕の表情を浮かべるのも無理はないマリユスを見て、ルギーレはわざとらしく悲しそうな表情をしながら肩をすくめた。


「俺たちが塔から出ようとしていた時、あの女の部隊がやってきた。そしてこのパーティメンバーが部下たちと戦っている傍らで、リーダーのあの女は俺に向かって襲いかかってきた。そして俺は殺されそうになったから塔の高い所から落としてやった。俺が殺したんだ」

「てっ……めえええええええええええええええ!」


 マリユスの怒りと悲しみを混ぜた絶叫が部屋の中に響き渡る。

 ニルスが彼を両腕で押さえ込み何とか落ち着かせようとするが、そんなマリユスにルギーレは続ける。


「騎士団の連中をけしかけてくるだけじゃなく、俺に向かって槍まで向けてきたあの女。しかも抵抗すれば殺すとまでいってきた。だから俺は自分の身に降りかかる火の粉を払っただけだ」

「こ、この役立たず野郎が……!!」

「外道に言われたくねえな。大体、そういうのはマリユスの方がよくわかっていることじゃねえのか? そっちにとっては味方でも、俺にとっては敵なんだ。自分を殺そうとしてきた敵を返り討ちにしただけなんだよ!!」


 男だから、女だからという前に、戦場でそうしたことにこだわっていては生き抜くことはできないだろう、とそこにルギーレが付け加えると、マリユスは更に激昂した。


「ちっきしょおおおお!! ぜってー許さねぇぞ!! 俺の女を殺しやがってええええ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価などをぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ