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547.地下施設の実態

 その二人を見て、セバクターが片方の眉を器用に持ち上げながら疑問を覚えた。


(あれ……? この黒い髪の奴、どこかで……?)


 ルギーレはそんなセバクターの様子に気がつくこともないままに二人をパーティメンバーの先頭で見つめながら、聞きたいことをいろいろ聞いてみる。


「ところでこの施設は一体何なんだ? さっき見てきた限りでは、ものすごく得体の知れない実験をしているらしいな。人間の薬品漬けとか余り趣味の宜しくない研究までしているみたいだ。俺にとっては悪趣味な研究でしかないがな。それに……聞いた話によればメルディアスの町中から住民が連れ去られる事件も多発しているようだが?」


 良く通る大きな声でルギーレが問いかける。

 前に話に聞いた、武装した冒険者風の人間たちによって連れ去られる人々の事件についても同時に聞いてみれば、この質問にはニルスが直々に答えてくれるようだ。


「この場所ですか? 表向きは上が魔術研究所で、地下の向こう側が騎士団の地下の倉庫として使っているのですが、上の魔術研究所では私たちにとある目的があって研究や開発をしているんですよ」

「目的?」


 エリアスがルギーレに続いて疑問を投げかけると、ニルスはコクリと一つ頷いて続ける。


「戦争のためですよ。アーエリヴァ帝国は広大な領土を持つ国だということですが、それ以上に好戦的な性格の皇帝が騎士団の育成に自ら力を入れておられる。当然私だってそうした情報は事前に仕入れて、助言をする者として上手く潜り込みました」


 しかし、その騎士団の力だけでは到底対処しきれないような場面や魔物だってあるので、そうした場面がいざやってきた時に対処できるようにこの地下施設をコツコツと造っていたようなのだ。


「この地下で生物兵器を開発していたんですよ。戦争でも生物兵器が役に立つ時がくるかもしれませんからね」


 それを聞いたルギーレに一つの確信が生まれる。


「まさか、あの薬品漬けがそれになるのか? あれって元々もしかして……」

「察しがいいですね。あの人たちはこの国で重罪を起こした犯罪人の処刑された慣れの果てだったり、あなたたちが話で聞いている通りの連れ去ってきた身元不詳の連中ですよ。例え、そんな連中でも最終的には国のために役に立てるのですから、光栄だと思っているんじゃないですかね?」

「……人体実験って奴か」

「やっぱり、てめーらはクズだな」


 残念そうにセバクターは(かぶり)を振り、ガルクレスは怒りの表情を露わにする。


「処刑されたのはその重罪人の人の行ないが原因ってのもあるけど、連れ去られた人たちの命を粗末に使っているのはハッキリいって外道だね」


 そうポツリと呟くレディク。

 やはり、この勇者と魔術師の連合軍の所業は相当に惨たらしいものらしい。


「じゃあ、あのベティーナって女もそれを知っていたのか。そしてルギーレも、最終的にあの薬品漬けになった奴らのようにあそこに入れられるのか?」


 だが、そのガルクレスの質問に答えたのはニルスではなく、かつてのルギーレの昔馴染みでありベティーナの彼氏でもあるマリユスだった。


「いや、それはない。この男はレイグラードのおかげで魔術が効きにくいっていうのは今まで対峙してきていた奴らから聞いていたからな。それと、ベティーナはここの地下の研究施設については余り知らなかったんだ」

「え? 何でだよ」

「この地下の研究施設のことは国の中でも最上級の機密事項になっている。もちろん皇帝たちだって知りはしない。だから一般住民や旅行者はおろか、騎士団の部隊長クラスでも知ることは不可能ってわけさ」

「だから地下水路に続く出入り口に、わざわざ騎士団員の見張りをつけていたってことか」


 パーティメンバーが合流する寸前に気絶させられたあの屈強な騎士団員のことを思い出し、ヴァラスは納得した。

 しかし、その話を聞いたルギーレにはまたもや疑問が。


「だったらなぜあんたたちはさっさとこの世界を支配しないんだ? 今まで見てきているけど、結構回りくどいやり方ばっかりしてきてるよな? まぁ、それがあんたたちのやり方だってんならいいけど、世界征服するんだったらいくらでもやりようがあんじゃねえの? 結局どれもこれも中途半端で終わってる気もするしさ」


 心の底からの疑問を含めたルギーレのセリフには、再びマリユスからニルスに回答者が戻る。


「ふふふ……ただ征服するだけでは面白くないでしょう? これで納得しましたか?」

「いいや、全然」

「そうですか。ではもっと詳しく話しましょう。私の師匠からそう言われているのですよ。なるべく苦しめるだけこの世界の人間たちを苦しませてから、こちらの世界を征服するように……とね

「……師匠?」


 ニルスにそう言われ、まさか!? とセバクターの方をルギーレが向いてみれば、彼はそれで全てを察したのか静かにうなずいた。


「どっかで見覚えがあるとは思ったが、あんた……ディルクの弟子のニルス・ベックマンだな!?」

「ふふふ、そうですよ。私のことを忘れていたのですか? セバクターさん……」

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