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546.試練を超えた先で

 ルギーレは倒れたセバクターの元に駆け寄る。


『見事だ』


 ルギーレが勝ったのを見て、納得した表情でナスティアが頷いた。


「さぁ約束だ。この扉を開けて先に進ませてもらうぞ」


 自分が今しがた倒したセバクターを抱え起こしてやりつつ、ルギーレはナスティアに約束を守るようにいう。


『もちろんだ。ここの扉を開けたら、後は自分が何をすべきなのかがそなたにはわかるはずだ。我はこれで消える。久しぶりにこの世界の住人の元気な姿も見られて良かったからな』


 そう言い残し、部屋の中からスーッとナスティアは姿を消した。

 それと同時に扉の方からカチャリとカギが外れる音が聞こえてきたので、ルギーレに抱え起こされたセバクターがエリアスとガルクレスに治癒魔術をかけてもらって、回復してから先に進む。


「何だか凄く長かったようで……短かったような、そんな気分だ」


 ルギーレはそう呟きつつ、ロックの外れたその扉を開けて先に進む。彼に続いて他の五人も足を進めてみると、またしても広い部屋がそこにはあった。

 そしてそこに入ると同時に、ものすごい量の魔力が六人の全身を包み込んでいく。


「っ……!?」

「な、何だこれは!?」

「……恐らく、あれのせいだと思うぞ」


 ルギーレとガルクレスが驚きの反応をする横で、セバクターが冷静に前方を指差して一言。

 その指の先には、ルギーレが随分と長い間捜していたような感覚がある存在の姿があったのだ。


「あ……ああ……セルフォン!? マルニス!?」

「マルニス!!」


 一斉に駆け寄るルギーレとガルクレス。

 その先には、力なく横たわっている茶髪の帝国騎士団長マルニスと、まるで彼に寄り添うようにして横倒しになっている灰色の大きなドラゴンの姿があった。

 こんな地下までどうやって入ってきたのだろうかと疑問が浮かぶが、それよりも今は一匹と一人が無事なのかどうかの確認が最優先である。


「……大丈夫だ。気を失っているだけだ」

「そうか……それにしても、どうしてこんな場所に?」


 エリアスの言葉にホッとしたのもつかの間、ヴァラスがメンバー全員が思っている疑問を口に出す。

 すると、先ほど聞いたばかりの声が再び聞こえてきた。


『我が説明しよう』

「ナスティア? あんた、消えたはずじゃあ……」

『何も知らないままというのも寝覚めが悪かろう。このドラゴンと人間は行き倒れになっていてな。そこで我の仲間の精霊たちがここまで運んでくれたのだ』

「え……ええっ!?」


 アーエリヴァに最初に着いたとき、空中戦で別れてから先の消息が全くつかめていなかったマルニスとセルフォン。

 どうやらあのデカブツを倒したらしいのだが、その後で力尽きて行き倒れの状態になっていたらしく、それをナスティアがここまで運んでくれたらしいのだ。


『仲間の精霊たちはここの封印とやらも意味がないのと、我も封印されていたとはいえ精神だけはこの世界を見て回れるからな。どうやらこのドラゴンと人間は追われる身だったようだから、ひとまずここに隠しておけば安心だろうと思ってな』

「だから全然連絡がつかなかったのか……」

「そりゃー確かに、俺たちがいくら連絡を入れても応答がなかったのもわかるぜ」


 そのナスティアの説明に納得するルギーレとガルクレスだったが、その瞬間いきなり先ほど自分たちが入ってきた、ロングソードを差し込んで施錠が解除されていたあのドアが開いた。


「っ!?」


 パーティメンバー全員が一斉にそのドアを振り向けば、そのドアが開け放たれた場所に見えたのはまず二人の男の姿だった。


「……色々と立ち回って、結果的にここの封印を解除してくれたみたいですね」

「ネズミがこそこそしやがって……しかも、宝まで勝手に持ち出すとはふざけた奴らだ」


 そんな二人のセリフに、ルギーレを始めとしたパーティメンバー六人は壁画に向いていた足を完全に二人の方へ向ける。


「そっちこそ、俺にこれ以上つきまとったって何の得にもならないだろうに。仲間をどんどん失っていくだけだぜ?」


 ルギーレはそう言って、背後に大勢の騎士団員や魔術師を引き連れている元友人であり勇者の男と、彼の仲間である黒髪の武装した若い男を睨みつけた。

 そしてその姿を見たナスティアは、ふむ……とどこか納得したような表情でつぶやく。


『なるほどな、この者たちがそなたたちとこのドラゴンと人間を追いかけているようだ。まあ、ここまで来られてここの封印も解除できたそなたたちであれば、この者たちを相手にしても後れを取ることはなかろう。我が保証するから頑張って戦うのだぞ』

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