表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

552/629

543.アイテムの活用方法

 扉の向こうに踏み込んだ六人が見たものは、両開きの鉄製の扉とその横を守る様に設置されている二体の銅像だった。

 その銅像を一目見た瞬間、この部屋で自分たちが何をすれば良いのかすぐに察しがつくメンバー全員。


「ちょっと待ってろ」


 ガルクレスが踵を返して、先ほどルギーレがロングソードを差し込んでカギにした穴からそれを引き抜こうと引っ張ってみる。

 すると、思いのほかあっさりとそれはすっぽ抜けてしまったので、それを持って再び部屋の中へ。

 ロングソードは扉の横の穴から外しても何も問題はないらしい。

 引っこ抜いたそれを、部屋の奥に見える扉の横の銅像に組み合わせるらしいとガルクレスは考えた。なぜなら二体の銅像はそれぞれ甲冑の騎士のものなのだが、それぞれ不自然なシルエットなのだ。

 全員から見て左にある銅像は、本来盾を持っているはずの左手にそれがない。

 扉を挟んだ反対側にある右の銅像は盾を持っているものの、左の銅像が右手に構えているロングソードがあるべき場所にない。

 今まで回収した複数のアイテムと、その銅像を見た瞬間もう既にパーティメンバーが状況を察するのも無理はないだろう。


「僕は右だ」

「なら俺は左で」


 レディクとエリアスがルギーレからそれぞれロングソードと盾を受け取り、レディクがロングソードを握っていない銅像にロングソードを持たせ、エリアスが盾を持っていない銅像に盾を持たせてみる。

 他のメンバーは彼らの行動を見て、一体これから何が起こるのかを身構えながら待ってみる。

 ……が。


「あれ、何も起こらないな?」

「本当ね」


 エリアスとレディクが首を傾げるが、その横でガルクレスがあることに気がついた。


「ん?ちょっと待て。その扉って何だか変じゃないか?」

「どこが?」

「ほら……ここ、ここ」


 ガルクレスが、他のメンバーたちには気がつかない違和感を覚えて扉を指差す。

 その指差した部分には、確かに注意力を最大限まで活用しなければ気つかないであろういびつな形の窪みがあった。

 それを見て、ピンと来たルギーレが自分のズボンのポケットから「あの」破片を取り出して近づけてみる。


「ああ、ここにピッタリ当てはまるな」


 納得したルギーレは、躊躇せずにその破片を形の合う窪みにグイッとはめ込んでみる。

 するとその瞬間、ガコンと何かが動く音がしたかと思うと扉が眩しく光り出した!!


「うぐ!」

「うっ……!!」

「うおお!?」

「うわっ!?」

「ぐぅ……!!」

「うわあああっ!!」


 その眩い光に、扉の前に立っているルギーレを始めとしてメンバー全員が腕や手で顔を覆う。

 そして光が収まったかと思うと、扉の目の前に光が集まって人の形を形成しているではないか。

 それは銀色の短髪で、魔術師の様な白いローブを着込んでいる男だった。


「だ、誰だあんた?」


 光の男に問いかけてみると、彼は当たり前のようにこう名乗った。


『我はこのカンバジール遺跡の精霊、ナスティアだ』

(女みたいな名前だな)


 姿形はどう見ても男なのに……と心の中でルギーレは戸惑いつつも、更に質問をぶつけてみる。


「精霊って存在は初めて聞いたんだけど、えーと……この場所の主って考えればいいのか?」

『そうだ。そなたはこの我を呼び起こしてくれた。欲にまみれたこの世界の住人が、我の大事な物を持ち去ってしまって早二千年……ようやくまたこうして姿を見せることができた。感謝するよ』


 そう言うナスティアに対して、ルギーレは今の自分が抱えている疑問を素直にぶつけてみた。


「俺は……これからどうすればいい? 少なくともまずはマルニスとセルフォンを捜さなければならないんだが、無事にこの先で見つかるのか?」


 二千年以上も生きている精霊とやらなら、きっと何かその二人に再会するための手掛かりを知っているかも知れない。

 封印云々に関してはルギーレは当然のこと、他のパーティメンバーも今ここに来て初めて知った話。

 だが、ルギーレにとっては自分がこの先どうなるのかというのが一番大事だ。

 その質問に対し、ナスティアは簡潔に答える。


『結論から言えば、この扉の先にその質問のヒントがある』

「えっ、そうなのか!?」


 思わず喜びの声を上げるルギーレだが、まだナスティアの話は終わっていない。


『そうだ。しかし、そのヒントをしっかりと読み取れるかどうかはそなた次第だ』

「ん? どういうことだ?」


 読み取れるのが自分次第だって? と首を傾げるルギーレに対して、ナスティアはとんでもないことを言い出した。


『そなたがそれに相応しいかどうか、我が試練を出して試させてもらおうと思ってな』

「試す?」

『ああ。そなたの強さの証明だ。ここまで色々な苦労がさぞかしあったことだろう。その苦労を乗り越えて得た強さを我に見せて欲しいんだ』


 ここにきてまさかの試練。それも、自分の強さを見せることができなければ先ほどの質問のヒントが与えられないのだという。


「……それをやれば、俺がこの先でどうすればいいかの答えがつかめるんだな?」

『まあ、その保証は完全ではない。それでもそなたは試練に挑戦するか?』


 聞かれなくても、既にルギーレの中で答えは決まっていた。


「やるに決まってんだろ。ここで乗り越えるべき試練があるなら、俺はそれを乗り越えるだけだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価などをぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ