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542.宝と仕掛け

「さっきのってルギーレだよな!?」

「ああ、間違いない!」


 一階部分を探索していたガルクレスとセバクターも、ガルクレスが聞き取った怒鳴り声と足音に反応していた。

 そしてその騒ぎの主が前方からやって来ることを察知した二人は、周りを見渡して隠れる場所がないことを知った上で迎え撃つべくそれぞれロングソードを構える。

 だが、そんな彼らの元に階段を下りて現れたのはなんと、自分たちが潜入のために送り出したはずのルギーレだったのだ。

 彼は右手にレイグラード、左手に盾を構えた典型的な戦士のいで立ちでガルクレスとセバクターに全速力で突っ込んで来た。

 二人は咄嗟に彼を止めようと立ちはだかったものの、ルギーレは二人がガルクレスとセバクターだと判別できなかったのか、ブンッとレイグラードを横薙ぎに振り回す。


「うお……っ!?」

「くっ!!」


 その斬撃をとっさに回避した二人の間をすり抜け、ルギーレは脇目も振らずに一目散にどこかに向かって駆けていく。

 そして冒頭に戻るわけだが、彼を追おうとした二人の前に今度はルギーレを追いかけていた追っ手の警備兵と魔術師たちがやって来たので、その相手をせざるをえなくなってしまった。

 一方で息を切らしつつ、前しか見ないで走り続けるルギーレは自分の後ろでそんな状況になっているとは知らないままで、ようやくあの地下に続く階段の扉の前にたどりついた。


「……らあっ!!」


 気合の声を上げつつ、ドアを蹴り破ってその先に現れた階段を駆け下りて地下の水路に向かう。

 自分が今手に持っている宝を回収した部屋を通り抜け、先にある扉を抜けると確かにそこは地下水路だった。


(目的の場所はあそこだな……)


 地下水路と言うだけあってやっぱりドブ臭いのが気になるが、今はそんなことを気にしている状況ではない。

 入り組んでいる通路を走り抜け、水路が狭くなっている所はジャンプで飛び越えて近道をし、とにかく全速力で走り抜ける。

 だが、そこでルギーレはあることを思い出して走るスピードが遅くなってきた。


(あ……そう言えばあの扉ってどうやって開けんだ!?)


 ここまで脇目も振らずに走り抜けてきたのは良かったが、肝心の封印のことが完全に頭から失念していたため、封印を解除できなければ扉も開いてくれないのだ。

 研究所の三階からここまで、地下の分を含めて四階分を走り抜けて来たルギーレにとってはさすがにレイグラードの加護があってもハアハアと荒い息を吐き出す状態で疲れ切っているのだ。

 そんな状況でもとにかくもう一度調べてみるべく、呼吸を整えながらルギーレはその扉に近づいた。封印がかかっている以上、どうにかしてこの扉を開けなければならない。

 気になるのは扉の横にポッカリと空いている、長方形の穴だが……。


(この穴が気になるんだよな。この形が妙だ……)


 カギ穴だったら長方形なのもわかるのだが、カギにしてはこんなに大きなものがあるのだろうか?

 もしかすると特注品の特大のカギなのか? と思いつつ、ふと右手に握ったままのロングソードに目を落とすルギーレ。


(まさか……な……)


 苦笑いを浮かべるものの、よく見てみると何だかその大きさがピッタリな気がする。

 ルギーレはロングソードを構え、その長方形の穴に刃の部分からスーッとゆっくり差し込んでみる……が、何も起こらない。


(サイズはピッタリなんだが……もしかして?)


 もしこれがこの扉のカギだとしたら、タダ差し込むだけじゃなくて左右どちらかにこうして捻ってみて……。

 そう思いながら普通のカギのごとく右に捻ってみると、鈍くて重い手応えとともにグイッと穴が回ってしまった。


「は、え、あ、あれっ!?」


 まさかの展開に若干後ずさりしてしまうルギーレの目の前で、ゆっくりと扉が彼を迎え入れるかのように部屋の中に向かって開いてしまった。


(……入っていいってことか?)


 このロングソードがカギになっていたなんて……と思いながらその扉の先に足を進めようとしたルギーレだが、そんな彼の後ろから複数の足音が聞こえてきた。


「っ!?」


 思わず身構えるルギーレだが、水路を抜けてやって来た新たな足音の主は……。


「お、おいその扉……開いたのか!?」

「えっ、どうやったんだよそれ?」

「……そうか、そのロングソードがカギなのか」


 口々に驚きの声を上げるのは、研究所から彼を追ってやってきたパーティメンバー五人だった。


「ちょ、あ、あんたら何でここに……!?」

「あんたが魔術防壁を解いてくれたおかげだよ」

「研究所の人たちは全員倒してきたから、調べるなら今がチャンスだね」

「さぁ、早くこの先に進もうぜ!!」


 せっかく研究所に潜入してまでここにきたのだし、宝を使って扉を開けることができたということはきっと何かがあるに違いない。

 いや、あってくれないとここまでの苦労は一体何だったんだと思ってしまうので、ガルクレス、エリアス、セバクター、レディク、ヴァラス、そしてルギーレと全員が揃った所で、何かあることを期待しつつロングソードを差し込んで開いた扉を抜けて先へ進んだ。

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