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541.逃げろ逃げろ逃げろ!!

「……魔術防壁が消えた」

「さっきから警報が鳴り響いてるのを見ると、ルギーレの奴……やってくれたみたいだな」


 外にいるメンバーたち五人が、見張りの気を逸らしていたのはわずか五分ぐらいの話。

「ここに知り合いがいるから呼んできてほしい」と無理矢理な理由をつけ、どんな知り合いなのかと尋ねられたら適当にはぐらかし続けて、限界がきたと悟った瞬間に「じゃあもういいよ、帰る」と半ばキレ気味で帰ってきたセバクターとエリアス。

 その後は少し離れた場所から他のメンバーとともに様子を窺っていたのだが、いきなり研究所の中から鳴り響いた警報に驚きを見せるメンバーたち。

 エリアスが魔術防壁の緑の膜が消えたのを確認し、それを聞いていたガルクレスが口元に笑みを浮かべるが、その二人の横からポツリとレディクが一言。


「……それってどっちの意味の「やってくれた」?」

「もちろん成功の方さ」


 まさか「やらかしてくれた」の意味の方か? とガルクレスが問えば、レディクが素直に頷いたので苦笑いをこぼしつつ、ロングソードを抜いてガルクレスが歩き出す。


「行くのか?」

「当然だ。見張りもどこかに行っちまったし、さっさと踏み込むぞ」


 ガルクレスを先頭に一気に魔術研究所に向かって駆け出す五人だが、思わぬ伏兵が近づいてきているとはこの時まだ気づいていないのだった。

 正面玄関から突入した五人は、殺さない程度に見張りの警備兵や魔術師達を退けながら内部を散策して行く。

 帝都の魔術研究所というだけあって、三階建てのその建物はなかなか横に広い構造だ。


「俺は一階を探す。ヴァラスとレディクは二階、セバクターとエリアスは三階だ!!」

「了解!!」

「わかった」


 エリアスとセバクターの返事を聞き、ガルクレス一階のあらゆる個所を現れる敵を倒しながら見回って行く。

 それは二階担当のヴァラスとレディク、三階担当のセバクターとエリアスも同じだ。

 だが、二階担当のヴァラスとレディクがその耳で騒がしい足音と怒鳴り声が近づいてくるのを聞き取った。


「ねえ、上から何かくるよ」

「え? ……あ、向こうだな」


 今しがた制圧した部屋の中に身を隠し、ドアの隙間から通路の様子を覗いて状況を把握する。

 かなり大勢の足音が聞こえてくるのだが、それと同時にわずかに聞こえてくる怒鳴り声からするとどうやら誰かを追いかけ回しているらしい。


「向こうに行ったぞ、とか素早い奴だとか聞こえないか?」

「うん……しかもあれだけ大勢で追いかけ回しているのに、翻弄されているみたいだね……」


 その怒鳴り声と足音が、自分たちの隠れている部屋の前の通路にたどりついたらしいので更に息を潜めて確認しようと覗き込む二人。

 だが、その騒ぎを引き起こしている原因を見てヴァラスとレディクは思わず息をのんだ。


「お、おい……あれって!?」

「冗談でしょ……」


 何と、通路を全速力で駆け抜けてくるのは自分たちよりも先にこの魔術研究所に潜入したルギーレだったのだ。

 彼の後ろからは足音と怒鳴り声の主である、魔術師と警備兵たちが彼を追いかけて通路を駆け抜けていく。

 二人が見ている限りでは、ルギーレはロングコートに胸当てだけいうやや身軽な服装なのに対して、後ろの警備兵は胸当てや肩当てを装着し、魔術師たちはローブを着込んでいるためにスピードの差で引き離されているらしい。

 だが、二人にとってはスピードの差や服装よりもかなり気になった点がルギーレに見受けられた。


「今さ……ルギーレが通り過ぎたと思うんだけど、何か奇妙なものを持っていなかったか?」

「ああ、僕も見たよ。記憶違いじゃなかったら左手に持っていたのは前に遺跡から回収した盾で、腰につけていたのもその前の遺跡から回収した剣だよね?」


 ここに潜入する前までは、そのお宝はあのエリアスに取られたままだった。それが彼の手にあるということは、やはりこの研究所の中にその二つがあったと仮定していいだろう。

 とにかく、このまま彼が追いかけ回され続けるのは好ましくない状況なので、ルギーレを援護するべくその足音と怒鳴り声を追いかけてエリアスとレディクも通路に飛び出した。


(くそ、ここまできてこんな展開か!!)


 何であのスイッチをバンバン押してしまったのだろうか、と後悔してもう遅いルギーレ。

 とにかく地下水路までまずは逃げる。地下水路に繋がるあの扉の先は確認した通り階段になっているので、その階段に後ろからの追っ手を落としてしまえばいくらか戦闘不能にできる。

 それに追っ手を水路の中に投げ込んでしまえば、地上よりも身動きが取り難くなるのは目に見えているので、その戦法でいこうと決意しながらルギーレは必死になって逃げ続けた。

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