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537.研究施設探索

 こうして中に入ったはいいものの、窓を抜けた先で着地した通路は薄暗くて、このままではまさに一寸先は闇の状態である。


(何かもっと明かりがあれば……)


 一応壁にかかっているランプはあるものの、それ以外に明かりがない状態ではなかなか足が進まない状況になってしまう。

 それでも進んでいかなければならないこの状況で、研究施設の内部は恐ろしいほど静かで、見張りは元より人の気配もない。

 ただ単に自分が気がつかない所で人が働いていたり警備しているかもしれないので、油断せずランプの明かりだけを頼りにして辺りの気配と先の様子を窺いながら進んでいく。


(おかしい……やけに静かだ。これは何かの罠か?)


 慎重に足を進めるルギーレだったが、それと同時に調べなければいけないのは研究所が展開しているらしい魔術防壁の解除と、この研究施設で一体何が行なわれているのかということであった。

 今、自分はただの潜入行動を行っているわけではなく、潜入行動をしながらのこの施設の調査だ。


(俺がマルニスとセルフォンに再会するための手がかりが、ここにあってほしいが……)


 せっかくここまで潜入することに成功したのだから。マルニスとセルフォンに再会するもここになければ困るとばかりに進んでいく。

 そんなルギーレの前に、一つの気になるドアが現れた。どうやらカギはかかっていないようだ。


(ここは……?)


 恐る恐るといった感じでそのドアを開け、壁のランプの明かりを頼りに壁伝いに進もうとした……次の瞬間!!


「っ!?」


 何といきなり明かりがついた。

 誰かがこの部屋にいたのか!? と素早く身構えるルギーレだったが真相はどうやらそうではなかったらしい。


(これは……ああ、スイッチか)


 ドアの横についている丸いボタンが照明のスイッチになっているらしく、壁にかかっている古風なガラスのランプに明かりがつく仕組みらしい。とにかく明かりの仕組みはわかったが、この明かりが部屋の外に漏れていると誰かに気がつかれないとも限らないので部屋のドアを閉める。

 部屋の中は何かの図面が置いてあったり、変な薬品がテーブルの上に置かれていたりと以前どこかで見た光景とそっくりである。

 チラリと覗き込んだその図面には、魔術関係の話に携わった時に見たような文様が細かく描かれていた。


(何だこれは? 多分これは……魔法陣?)


 しかし魔術に疎い方であるルギーレには、その図面が何を意味しているのかがさっぱりだ。


(他の部屋に行ってみるか)


 これ以上ここにいても何も収穫がなさそうなので、明かりを消して部屋を出る。

 とにかく明かりがつくということがわかっただけでも大きな収穫だったので、壁のランプの他にこうした仕組みがあるのを頭に入れておきながら進むルギーレ。


(本当にここに、俺がマルニスとセルフォンに再会するための手がかりがあるのか……?)


 頭の中でそんなことを考え始めると一気にネガティブな感情で不安になってしまうので、とにかく他の部屋も探索することにしたのだが、その探索でルギーレの身にとんでもない事件が起きてしまう。

 次に気になった部屋は、その通路の突き当たりにある両開きの鉄製のドアだった。

 さっきのスイッチの存在を知った部屋の、手前開きの一般的なドアとは違う雰囲気を纏っている。


(ここが凄く怪しいな)


 ドアの先を耳で窺って人の気配がないことを確認してから中に入り、壁のランプの明かりと手探りでスイッチを探してそれに触れる。

 やけに冷たい風が吹いてくるので、どこからか風が入り込んできているのかもしれない。

 そして電気のスイッチは、開けたドアの片側の裏側に隠れてしまって見えなかっただけのようだ。

 しかし、その明かりがついた瞬間ルギーレは息をのむ。


「……っ……!?」


 ドアの先から冷たい風が吹いて来ている原因は、そのドアの先が下に続く階段になっていたからだった。

 もしあのまま進んでいたら階段の下に転げ落ちていただろうかと思うと、今更ながら先に進まなかった自分の判断に感謝した。

 ほっと胸を撫で下ろしたルギーレはドアを閉めてカギをかけ、階段を用心深く下りていく。

 すると、今度は自分の耳に水が流れる音が微かに聞こえてきた。

 本当に僅かにチョロチョロとしか聞こえてこないし、今だって自分の足音でかき消されてもおかしくないぐらいの大きさしかない水音。


(……あれ、まさかここの先にあるのって……)


 地下に向かって伸びる階段と、それを地下方向に進んでいる今の自分。

 それから自分の耳に聞こえてくる僅かな水音。

 その全てをひっくるめてルギーレは納得し、期待と不安が入り混じった感情を胸に更に階段を下りていく。

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