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536.真夜中の潜入作戦

 やっぱり、ここ数日であの塔や町中であれだけの戦いや逃走劇を繰り広げた結果、身体がよっぽど疲れていたのであろうルギーレは爆睡していた。

 しかし、何とか狙い通りの真夜中に目を覚ましたのでそれは一安心である。


(結構寝過ぎたか……。でも、この時間帯なら潜入するのには丁度いい時間だな)


 窓の外はすっかり真夜中であり、昼間のように起きている人間が多い景色ではない。

 普通の生活をしていれば、このメルディアスの住民たちもやはり眠くなる夜にはきちんと眠っているのだろう。

 今は月明かりでしか把握できないものの、それでも人気がないことがよくわかる静けさと闇が支配していた。

 むくりと起き上がったルギーレは、未だに眠っている他のメンバーをバシバシと起こして回る。


「んあ……何だ?」

「寝ぼけてるんじゃねーよ。そろそろ潜入の時間だぜ」


 が、よく考えてみれば今からこのまま潜入するのには不安しかない。

 潜入先の内部情報も把握できていない上に、魔術研究所では具体的に何の研究をしているのかとの情報もまだ情報収集部隊の三人から聞いていない。


(急ぎたいところだが、今の段階で乗り込むのはちょっと無理か。せめて内部情報がわかった上で乗り込むことができれば……)


 ルギーレは眠い目をこすったり出発の準備を整える他のメンバーの内、セバクターに声をかけた。


「ちょっと聞いていいか?」

「何だ?」

「魔術研究所の話は聞いてきたか?」


 そう聞かれたセバクターは「聞いてきたには聞いてきたが……」と歯切れ悪く前置きしながら報告する。


「魔術研究所では表向きは名前の通り魔術の研究をしている……と町の人間は言っているが、その実態は不明確なんだ。まだ研究途中の魔術って言うのは外部に流出したら色々とまずいこともあるから、その辺りは機密情報として……」

「それはわかる」


 確かに研究途中の話については機密情報とされるし、自分だってそういう情報があることぐらいこれまでの人生の中で学んできているので、ルギーレは納得する。

 しかし、納得してもいざその魔術研究所までやってきてみると「これは見つかる可能性が非常に高い」と考えてしまう。

 それに、ここに来る前にルギーレはとんでもない話をエリアスとレディクから聞いていた。


「魔術防壁?」

「ああ。その研究所は警備が厳しいんだ。だから不審者を入れないように魔術防壁で防護されているんだよ」

「でも、君だったらもしかしたらその魔術防壁も意味を成さないと思うから、先に潜入して魔術防壁を解除してくれないか?」


 塔に入る時にもこんなことがあった気がするな……と遠い目になりつつ、それだったら仕方がないのかもしれないとルギーレは半ば諦めかけている状況だ。


(結局、回り回ってこういう展開になってしまったか。まぁ、考えてみればこっちの方が楽と言えば楽か)


 そう考えながら、ルギーレは落ち着いて見張りの動きを観察する。

 資材置き場の中には歩き回る見張りが一人、それから正面の入り口の前に直立不動の二人。

 見える範囲内ではそれだけだが、恐らく他の場所にも見張りがいるだろう。

 しかし、ここでずっとこうしていたって始まらない。要は上手く建物に近づくことができればそれでいいのである。


「潜入作戦しかないか。それじゃそっちも頼むぞ」

「任せとけ」


 見張り達はエリアスとレディクが話しかけて気を逸らしてくれ始めたのだが、まだそこで終わりではない。

 覚悟を決めたルギーレはそんな彼らを横目に、まず近くに積まれている廃材の山の陰に隠れる。

 そこから積み上げられている木箱の陰に移動。

 石畳になっている地面でも音を立てないようなスムーズでしなやか、それでいて遠くまで移動できるだけの脚のバネを利用した飛び込み前転だ。

 そこで歩き回る見張りがこちらにきたので上手く場所を移動して、彼の視界に入らないように緊張感一杯で潜入作戦を継続。


(ここまでは順調だ)


 何だか研究施設というよりは、何かのイベントを行なう広い施設のような雰囲気の建物だ。

 エリアスとレディクの二人が気を逸らしてくれているのもあるが、真夜中なので自分の姿がなかなか見つかりにくいというのが救いだろうか。

 それでも絶対に見張りに見つからないとは言い切れないし、時間が経てば経つだけリスクも大きくなる。

 なのでキョロキョロとなるべく目の動きだけでどこか潜り込めそうな場所を探すと、一つだけ何とか潜り込むことができそうな小窓を発見した。


(あそこからなら、レイグラードの加護があって身体能力が向上している俺であれば何とか入ることができそうだ)


 見張りたちに見つからないように素早く物陰から物陰へ移動し、小窓のある建物の側面を目指す。

 側面には見張りがいないので絶好の機会だ。

 高さとしては目測よりもちょっと高かったが、それは誤差の範囲内なのでルギーレは助走をつけて壁に足を掛ける。

 その勢いも手伝って窓枠に上手く飛びつき、身軽にその窓を潜り抜けたルギーレはそのまま建物の中に入ることに成功し、窓を閉めてカギをかけた。

 問題はここからである……。

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