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535.急激な変化

 そう言われてみれば、魔術防壁が展開しているこのアーエリヴァ帝国の中にセバクターはどうやって入ってきたのだろうか?

 まさか異世界からやってきたからこそ、そうした魔術が通用しないなどの特異体質でもあったりするのだろうか?

 いずれにせよ、それはセバクター自身に聞いてみなければわからないことなのでまずは彼の帰りを待つしかなかったのだが、宿屋に戻ってきたそのセバクターを始めとする情報収集部隊から思いもよらない話が告げられる。


「戻ったぞ」

「おお、お疲れ。どうだった?」

「それが……ちょっとまずいことになってるんだ。さっさと動かないと手遅れになるかもしれない」

「え……何で?」


 エリアスの報告に疑問の声を上げるルギーレの前に、スッとセバクターが歩み出る。


「帝国騎士団とギルドの連中が既に動き出しているらしい。あんたを追放した内の一人っていうベティーナが、いつまで経ってもこっちに戻ってこないし何の報告もないから、調査部隊を塔に送り出して調べたらしいんだ」


 世間話を装いつつ巧みに聞き出したというその報告を聞き、ルギーレの脳裏にあの投げ落とした時の記憶が蘇ってきた。


「そ、そうなるとまさか……」

「ああ。あの女が死んだというのがバレるのは時間の問題だろう。少なくともあそこにいた敵の騎士団員たちは殲滅したから、こうして今までバレることはなかったと思う」


 しかし、その塔の封印であるあの赤いスイッチは再び押していないので、今は誰でも中に入れる状態になってしまっている。

 それに、その中には調査部隊のリーダーのベティーナを始めとする騎士団員たちの遺体を残してきたままなのだ。


「……俺たちがやったっていうのが、そこから足がつくかもしれないのか?」

「可能性としては全くないわけではないだろうな。ベティーナは足を滑らせて落下したってことも考えつくかもしれないが、他の連中は俺たちが殺しているわけだから敵側の考えを予想してみると……」

「だから早めに行動した方がいいだろうね」

「よし、それじゃ今から早速……」


 レディクとエリアスもルギーレの心配そうな表情にそう返答し、丁度今は夜なので忍び込むなら今からでも遅くはないだろうと考える待機組。

 しかし、情報収集組の三人の意見は違った。


「ちょちょちょ、待て待て……確かに今は夜だけどまだこのメルディアスの町中にはそれなりの住民がいるんだよ」

「そ、そうか……」


 今度は武器を忘れないように手に持ち、宿屋から出て行こうと立ち上がりかけたルギーレはヴァラスに制止される。

 そんな二人を見て、ガルクレスも腹をさすりながらまだ待った方がいいと告げた。


「そういやさっき飯も食ったばかりだし、少し身体を休めてからにした方が良さそうだ。あんたたちも飯を食って早めに寝た方がいいぞ」


 こうして、下の食堂で情報収集の三人組が夕食を摂っている間に残りの三人は寝る準備をする。


「いよいよだね……」

「ああ。これが最終決戦になるのかはわからないが、あの魔術師やもっと凄い奴とかに出会わないように願いたいもんだ」


 緊張した面持ちのエリアスに対し、なるべく敵と出会わない方がスムーズに調査を進められるはずだと考えるガルクレス。


「上手く行くといいのだがな」

「そうだね。でも変に気合いが入るとそれが空回りしちゃうこともあるから、油断せずに力を抜いていくしかないでしょ」

「……難しいな、それ」


 レディクにそう言われて戸惑うルギーレだが、夕飯を終えて戻ってきた三人の内、セバクターから思いもよらない質問をされる。


「そういえば、ディルクと戦ったのはあんただったよな?」

「ああ、そうだけど」

「その戦った時に、そいつの弟子はいなかったか?」

「……ん? 弟子?」


 ここにきて更に戸惑うようなことを言わないで欲しいと思いつつも、どんな容姿の弟子なのかがわからないと答えようがないので質問に質問で返すルギーレ。


「すまないが、その弟子とやらがどんな格好なのかとか、顔とか性別とか先に教えてもらわないと俺は答えられない」


 その返答に「ああそうか、すまん」と謝ったセバクターは改めて質問をぶつける。


「ディルクよりも短い黒髪の若い男だ。背格好はその師匠のディルクより少し低い程度。服装はかっちりとした貴族の正装みたいなもので、服の色も同じような暗めのものだった気がする。今も変わっていなければの話だが」


 今度こそ容姿を細かく伝えてもらったのだが、ルギーレは首を横に振った。


「いや……知らないな。そもそも俺はディルクと戦うことで精一杯だったし、そんな若い男は俺の記憶に限っては見たことがない。他のみんなはどうだ?」


 二人のやり取りをそばで聞いていた、あの塔の中で一緒に戦った四人にルギーレが同じ質問をしてみるものの、四人も首を横に振った。


「そもそも、その弟子とやらはいつも一緒にいるのか?」

「ん……いいや、あいつに最後に会った四年前に一緒にいたのを見ただけで、それ以降は……見ていないな」


 セバクターのセリフを聞き、ルギーレは「じゃあ知らないな」とだけ言ってさっさと寝る準備に入った。

 決戦の時はすぐそこまで迫っている。

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