532.話の整理
「よし、それでは一旦話を整理するぞ」
二人部屋に集まった六人の中で、パーティのリーダーであるガルクレスと異世界のエスヴァリーク帝国騎士団の副騎士団長であるセバクターが中心になって、今まで見聞きしてきた話を纏め始める。
「確か……あそこの実験施設みたいな場所の上ってさ、位置的に考えて俺たちが話に聞いていたメルディアスの魔術研究所じゃないか?」
そうガルクレスが切り出せば、そういえばそうだなとレディクも頷いた。
「うん。このメルディアスの地下水路の地図も聞き込む途中で手に入れたから……ここでこういって……大体この辺りか。やっぱりガルクレスのいう通りかもね」
聞き込みをしていたメンバー曰く、このメルディアスには魔術研究所というアーエリヴァ帝国に在住している魔術師たちの本拠地となる場所があるらしい。
名前の通り魔術の研究が行なわれている施設だが、現在の皇帝が好戦的な性格であるためか扱っている魔術も攻撃魔術が中心らしいのだ。
「それはいいとして、そこの研究所にあの場所に繋がる階段みたいな設備があるとすれば……」
「魔術師たちまで計画に加担しているんだろうな」
エリアスのセリフに続ける形で、自分の予想をセバクターが口に出す。
「じゃあ、あの地下の実験施設みたいな場所で連れ去られた住民が……」
「その可能性が高いだろうな」
レディクの予想にルギーレが頷くが、もしそれがこと実ならこの帝国の騎士団は国民を守るべき存在でも何でもないし、ギルドの連中だって冒険者どころかこれではタダの犯罪者集団だ。
「……奴ら、人の命を何だと思ってるんだ」
「人だけじゃない。あの実験施設の液体の中には明らかに動物の身体が入っていたから既に見境がないんだろう」
「冗談じゃねえぞ。どこまで性根の腐った奴らなんだ!」
「生物の命を犠牲にしてまで、自分たちのギルドが世界のトップになりたいってことよね……」
戦争が起これば人は死ぬ。
しかし、今回は他国に対して侵略したのではないし攻め込まれたわけでもない。自国の民や生物の命を何とも思わず、何かの実験のために犠牲にしてまで何かをしようとしている。
可能性が一番高いとすれば、それはこの帝国のギルドがトップに立つ目的であろう。
憤るガルクレス、エリアス、ヴァラス、レディクの四人の様子を見て、ルギーレもポツリと呟く。
「仮にこの俺たちの推測が正しかったとして、トップに立ちたいっていう気持ちを持つのはわかるんだが、そのやり方が余りにも変な方向に向き過ぎているって話だろう」
しかも、表向きはギルドのトップに立つためだという話ではあるものの、それが最終的にはギルドを統一して新たな国家を創り出す計画なのかもしれない。
更に、ギルドや騎士団を操っている何者かがバックにいるという話も出てきているし、侵略活動をさせているのもその謎の人物だとの噂がある。
「どれもこれも今はまだ推測の域を出ないが、とりあえずギルドが覇権を握ろうとしているのだけは確かだ。このままいけば俺のエスヴァリーク帝国にもいずれ何かしらの被害が出るかもしれないから、この国の連中が何をしようとしているのかを確かめるまでは、俺もこのパーティにこのまま協力させてもらうぞ」
改めてセバクターからの協力が約束され、アーエリヴァ帝国騎士団の三人も頷く。
「このペンダントのこともあるからな」
元勇者パーティー代表のルギーレも、ディルクが落っことしていったペンダントを取り出して眺める。
騎士団とギルドの連中がもしかしたらこれも奪いにくるかもしれないので気をつけなければならない。
「確かにそれまで奪われたら、あんたがマルニスやセルフォンに出会うために必要かもしれない手掛かりがなくなってしまうからな。大事にしまっておけよ」
「ああ、そうさせてもらうよ」
ガルクレスのアドバイスに従って、ルギーレはペンダントを落とさないように首に掛けておく。
それを横で見ていたガルクレスが、ふと思ったことを口に出した。
「しかしよぉ、今まで集めたアイテムを考えると誰かの装備品みたいな気がするんだよな」
「装備品?」
自分の首から下げたばかりのペンダントをチャラリと手に取って、なぜそう思うのかをガルクレスにルギーレが聞いてみる。
「ああ。だってよぉ、最初に手に入れたのがあの剣だっただろ。それからその次が盾だよな。そして今回はそのペンダントがそうだろ?」
だからあのアイテムは誰かの装備品じゃないか……と思うガルクレスだが、ルギーレはそれに対して疑問を述べ始める。




