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529.消える住民

 これまでの経緯を再確認したエリアスは、今度は自分とガルクレスとレディクがここで色々と情報収集した結果を話し始める。


「この地下水路の情報を手に入れる前、メルディアスで起こっている奇妙な話を聞いたんだ」

「奇妙な話?」

「結論から話すと、物乞いとかの身元がよくわからない人間がドンドン姿を消しているって話だ」

「何だそれ? このメルディアスでそんなことが起こっているっていうのか?」


 そんなに次々とメルディアスの人間が姿を消しているのなら、それだけでかなりの騒ぎになってもおかしくないはずだし、騎士団の捜査があるのが普通だろうとルギーレたちの方は考える

 しかし、ガルクレスたちがいうにはつい最近になって発覚した問題らしい。


「なかなか明るみに出ない事情があったらしい。まず、身寄りのない浮浪者や物乞いの住民と言えば、普通は敬遠される存在だよね?」

「まぁ、普通は確かにそうだな」


 物乞いは世界中に山ほどいるわけだし、そういう人間に面白がって近つくようなことはルギーレもしたくないと考えている。

 それはこの国でも同じらしいのだが、その「他人が寄りつかない」という事実がポイントらしいとガルクレスは続ける。


「だとしたら、そういう連中は結局道端で除け者扱いにされて路地裏とかでひっそり暮らす連中もいる。そうした連中が続々と姿を消しているらしいんだ。それもある日突然いなくなってしまってたらしーぜ」


 ガルクレスの報告を黙って聞いていたヴァラスが、そこで疑問を覚える。


「それって、ただ単に路上生活から抜け出したか、別の場所にテリトリーを映したか、あるいは命を落としたか……って話じゃないのか?」

「うん、普通はそう思うでしょ? 僕もレディクもそれからガルクレスも同じことを考えたんだよ、最初はさ」


 だけど……と話を続ける素振りを見せながら、ガルクレスに向かってアイコンタクトを送るエリアス。

 その先はガルクレスの口から語られる。


「俺がこのメルディアスの路地裏で店やってる住人から話を聞いたんだけど、店の外から争う音が聞こえてきたんだってよ。言い争いもそうだけど、何やら暴れている浮浪者を制圧しようとしていた奴がいたんだってさ」

「それは騎士団の連中じゃないのか?」


 今度はセバクターが疑問をぶつけるものの、ガルクレスが聞き込みをしたその店主は騒動に巻き込まれないように店の中から見物していたその光景を話してくれた。


「いいや、その制圧しようとしていたのは二人だったらしい。どちらもそれなり武装していたらしいけど、騎士団の制服ではなかったって話だ。その二人は浮浪者を制圧して気絶させて、そのまま浮浪者を持ち上げて連れ出して路地裏から姿を消してしまったらしいんだ」

「んー、気絶させて連れ去るって……それって誘拐じゃないか?」


 それこそ騎士団の出番だろうに、とルギーレ側は思うものの、更にガルクレスから衝撃的な事実が告げられる。


「俺もそう思って、その連れ去り事件を騎士団に通報しなかったのかって店主に聞いたんだよ。そうしたら店主も急いで通報したっていうから、そこはちゃんとやってたみたいなんだけどよ……」

「結局、その連れ去られた浮浪者は見当たらなかったってことか」


 ルギーレの呟きに対し、ガルクレスは無言で頷いて肯定した。


「そういう行方不明っていうか、誘拐事件が多発しているってことか?」

「ああ。それで……俺たちが調べたら、この事件にもどうやら騎士団が関わっているらしい」

「騎士団が?」


 騎士団はそういう誘拐事件を取り締まる側の立場のはずなのに、それに加担しているとなればこれは大問題であろう。


「何でそれがわかったんだ?」

「それは僕から説明するよ」


 誘拐事件と騎士団の関係について手を上げたのはエリアスだったが、徐々にこの事件の全貌が見えてきそうな話を彼の口からルギーレたちの方が聞くことになる。


「三人で手分けして情報収集をしていたんだが、僕は「明らかに人間の頭が出ている袋を抱えた騎士団員が、地下のこの水路に入って行くのを見た」と証言する住民と出会ったんだ」

「それって……」


 ルギーレたちの方がガルクレスに顔を向ければ、彼はまた無言で頷いた。


「そうだな、レディクが言っていたその誘拐された浮浪者の可能性が高い。そもそも普通は人間を袋に入れて運ぶなんてことは絶対にしないだろう。そして、それに武装した連中や騎士団の団員が関わっているとなれば……」

「武装した連中っていうのは、ギルドの冒険者達の可能性が高いってことだろうな」


 このメルディアスで……いや、このアーエリヴァ帝国で一体何がされようとしているのかが段々わかってきた六人。

 しかし、まだ全貌は見えてこない。


「それ以上の話はまだ掴めていないからこの地下水路にこうやってきてみたんだが、この水路は行き止まりだって?」

「ああ、そうだよ」


 せっかくここまで情報を集めたというのに、歯がゆい気持ちで一杯の全員。

 特にルギーレは、マルニスとセルフォンに関する手掛かりも掴めていない状態でこんな大層なことに巻き込まれてしまっているので、他の五人より募るイライラが大きい。


「あいつからも大した手掛かりは得られなかったし、アイテムもアイテムで見つかってないし……」


 そう言いながら、ルギーレは靴の裏でディルクの消えてしまった場所の床を小突く。

 だが、その悔し紛れの行動が思わぬ事態を呼ぶ。

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