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526.帝都の地下水路

「……終わったようだな」

「ああ」


 ディルクが消えてしまった場所を見つめているルギーレの元に、ロングソードを鞘に収めながらセバクターが声をかけてきた。

 ディルクを逃がしてしまったことをルギーレは後悔していた。

 なぜならあの塔に関することはそれなりに聞き出せたものの、肝心の異世界とやらのことに関しては結局何も聞けないまま、彼を逃がしてしまう結果となったからだ。

 それがルギーレにとっての心残りだが、この転送先の部屋でまた新しく出てきた調べられる箇所について、最初にヴァラスが気がついた。


「なあ、これ……この地下の地図になっているんじゃないか?」


 ディルクが壁を叩いて三人に見せたその壁画を見ていた彼は、それがタダの壁画とは思えない形で何かが描かれていたのでピンときたのである。

 その彼の呼びかけで一斉に壁画に近つく他の二人も、言われてみれば確かにこれは地図だ……と認識できた。


「本当だ。これは絵じゃなくて地図だな」

「だとしたら、この先はこの壁画の地図の通りになっているってことなのか?」


 壁画と向かい合わせの位置にある、先ほどルギーレが先陣を切って開けようとしていたあの大きな鉄の扉を振り返り、セバクターも納得の表情を浮かべる。

 しかし、ルギーレだけは別のことに気がついていた。


「……その地図なんだが、妙に光っている箇所がある」

「光っている……ああ、確かにここが光っているな。ボンヤリとだが、黄緑色の光が不自然にここから漏れ出ている」

「なら、この裏に何かがあるってことか?」


 そう考えたセバクターは、その壁画を力任せにめくって裏を確認しようとしたが、その途中で「あ、これは違う」と気がついた。


「ん……何もないぞ。本当に裏に何かあるのか?」


 疑いの視線をルギーレに向けるセバクターだが、彼の斜め後ろからヴァラスが口を挟んできた。


「ちょっと待った。そこに少しだけ魔術がかかっているぞ」


 右の人差し指で実際に壁画に触れてみたヴァラスはそう分析する。

 そうなると一気に信憑性が上がるルギーレの発言だが、そこが光っている原因は一体何だというのだろうか?


「今の俺たちがいるのがどこなのか分からないから何ともいえないが、その光っている場所は長方形の大きな部屋らしい。とりあえずこの扉の先に進むしかなさそうだ。この先で何がどうなっているのかを調べないといけないし、いつまでもここにいても話が進まないからな」


 この場所は帝都の地下にある、とディルクは言っていた。だとすれば、絶対にどこかから地上に出られる出入り口があるはずだ。

 いや、出入り口がなくて出られないとこのまま地下をさまよい続ける羽目になってしまう。

 それだけは勘弁願いたいと三人全員の気持ちが一つになり、今度こそルギーレが先頭で大きな両開きの鉄製の扉を開けて先に進む。

 すると、その扉の先には何と地下水路が流れていた。


「え、水路……?」

「ああ、この帝都には地下水路が通っているんだ。色々と生活の排水が出るから、それを魔術で浄化するための施設が帝都の中に造られていて、そこで汚水を処理してまた綺麗な水を供給している」

「……通りで、ここに転移してきていた時から臭かったわけだ」


 セバクターが、先ほどのディルクとの遭遇ですっかり忘れていたその臭いを思い出して顔を盛大にしかめる。

 帝都というだけあって、今まで見て回ってきた町や村にはないような設備も当然あるだろう。

 その一つがこの地下水路であり、さっきの壁画の地図とヴァラスの話も併せてかなり大きくて広い場所になっているようだ。


「これじゃ見て回るのも大変そうだな」


 水路が至る所に通っているだけあり、通れる場所が制限されているのが時間のロスを予想させる。

 そして、ルギーレの頭に一つの疑問が浮かぶ。


「水路っていうか、迷路っていうか……この地下水路のことは帝都の住民は当然知っているんだよな?」


 パーティメンバーの二人を振り返って尋ねるルギーレに、水路の説明をしてくれたヴァラスが頷いて再び説明をする。


「ああ、もちろんだ。でもこんな感じで臭いが凄いし、不衛生な場所だから掃除のために私たち騎士団員が駆り出されるぐらいで、一般の住民は近つかないってのが常識だからな。そもそもここは危険だから一般人の立ち入りは禁止だし、地下水路の出入り口では騎士団員が交代で見張っている」

「見張りがいるのか……」


 だったら地上に出られるルートが見つかっても、敵の息がかかっているかもしれないその見張りをどうにかしないといけないだろう。

 そう考えたルギーレは、ふとあることを思い出して突然歩いていた道を逆走し始めた。

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