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525.謎の発言

 だがその引っかかりを問い詰めるのは後回しだ。

 今度は上半身をメインに狙おうとするさっきの戦い方と違い、ルギーレの下半身への攻撃も積極的に行なうディルク。

 ルギーレは更に追い詰められていき、横薙ぎの攻撃をディルクと同じく屈んで避けたまでは良かったが、ディルクはその薙ぎ払いの勢いを利用する。


「ふっ!」

「ぐっ!?」


 屈んだ状態から素早く立ち上がったルギーレの側頭部に、薙ぎ払いの勢いで繰り出した回し蹴りを命中させる。

 倒れ込んだルギーレは左手で頭を押さえて悶え苦しみ、地面に倒れ伏して呻き声を上げた。

 そんなルギーレを、ディルクは狂気の笑みを浮かべて見下ろす。


「なぜか魔術が効かないとはいえ、ただの人間ごときが僕に楯突こうなんて舐められたもんだよ」


 そう言いながら、自分が作った大型の魔法陣から生み出される魔物の大群と戦うセバクターとヴァラスを一瞥し、再度ルギーレに向き直る。

 そのルギーレは、側頭部に命中したディルクの回し蹴りによる痛みを堪えながら、そのディルクを無言で見上げる。


「さて……終わりだ、死ねえっ!!」


 止めに彼をソードワンドで串刺しにしようと思ったディルクだったが、そのソードワンドが振り下ろされる前にルギーレはディルクに向かって一気に体当たりを繰り出して起死回生を図る。


「ぐほっ!?」


 側頭部を抑えてうずくまっていただけあって、まさかそこから体当たりしてくるとは思ってもみなかったディルクは、後ろの壁へと激しく背中からぶつかる。


「もう諦めろ。これ以上やったら……死ぬぞ」

「うるさい……うるさいんだよおおおおっ!!」


 そのまま崩れ落ち、荒い息を吐き出して床に倒れ込むディルクに忠告するルギーレだったが、彼はここで奇妙なことを言い出したのだ。


「くそっ……まさかレイグラードをこんな奴に握られてるなんて!!」

「は?」

「レイグラードはこっちの世界から持ち出されたものなんだよ。いや……正確にいえばレイグラードがこっちの世界に自分で来たって感じかな」

「ど……どういうことだ……?」


 そうルギーレがディルクに聞いた時、彼はディルクのセリフの中で引っかかっていた部分を思い出した。


『僕が三か月前に色々とこの世界を探検していた時にここで見つけた壁画だ』


 そうか、自分が心の中で引っかかっていたのはこの発言だったのだとルギーレは気づく。


「おい、お前はこの世界……って言ったな。今のことも踏まえると……まさかお前もセバクターと同じでエンヴィなんとかって違う世界から来たんじゃあ……?」

「ふふふ、まさにそうだよ。君もセバクターから何か聞いてるんじゃないのかい?」


 そのディルクの問いかけに、ルギーレはここに来る前のセバクターから始まる会話を思い出した。


『……そうだ。俺は確かにこの世界の人間ではない。この世界とはまた別の……といってもまったく関係ないわけではない、エンヴィルーク・アンフェレイアという世界からこっちの世界に来たんだ。目的があってな』

『ふふふ……やっと話してくれたね。貴族の僕は以前、一握りの貴族だけが見ることを許されている書物でその話を知ったんだ』

『えっ、そんなものがあるのか?』

『そうだよ。異世界なんてものがあるなんて話がこの世界に広まったら、きっと大ごとになるのは目に見えているからね。だからこそ、こういうことは一握りの限られた人間にしか知らされていないのさ』


 そして、セバクターいわくディルクを目標として追いかけているという話だった。

 だとすれば、これはもはやこの世界だけの問題ではないのでは? という疑問までわいてくる。


「おい、お前は何を企んでいるんだ?」

「さぁねえ、君に教える必要なんてないよ」

「いいから答えろっ!!」

「嫌だね。どうしても教えてほしいってんならセバクターに聞けば? そこの壁画の件も含めて……さ!!」


 そう言い終わると同時、ディルクが懐から取り出した黒い球がルギーレに投げつけられる。


「くっ!?」


 とっさにルギーレは腕で防御するものの、その瞬間その球が破裂して大量の白煙が彼を中心にして吹き上がり、ルギーレの視界を奪う。

 この展開、図書館の地下でエリアスにやられたものと全く一緒ではないか。


「げほ、げほっ……くそっ!!」


 煙幕と共に忽然と姿を消してしまったディルクに対し、届くことのないルギーレの叫び声だけが虚しく部屋の中に響いた。

 それと同時に魔物たちを生み出していた魔法陣もスーッと消えていき、魔物たちもまるで煙のように消えてしまった。

 これでひとまず戦いは終わったのかもしれないが、ルギーレの心の中にはこの煙と同じくモヤモヤが残ったままになってしまったのである。

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