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524.効かない魔術

 塔の時は、人が一人魔法陣の上に立てばそれで完全に魔物たちが出てくるのを防ぐことができる大きさしかなかった魔法陣だが、今度は自分を含めたパーティメンバー全員が上に乗ってもその周りのスペースが余ってしまうので、そこから魔物が出てきてしまうのだ。

 その魔物たちに対抗し始めるセバクターとヴァラスを尻目に、ディルクが扉から外に出ていこうとするのをルギーレは見逃さなかった。


「このやろおおおおお!!」


 こうなったらもうやるだけやってやるぜ、とばかりにルギーレは雄叫びを上げながら全力疾走でディルクに接近。

 そこから跳び蹴りを繰り出す。


「馬鹿だねぇ、どんな攻撃も魔術防壁の内側には届かなごぼあっ!?」


 攻撃魔術はおろか、物理攻撃も届かないと完全に確信していた自分のその上半身に、ルギーレの全力跳び蹴りがしっかり届いたと確認できたのは、上半身全体に広がる痛みを覚えるとともに、黒ずんだシミが広がる天井を向いて地面に仰向けに倒れ込んだ時だった。


「ぐふっ、な、なぜ……っ」

「え、あ、あれ?」


 実をいうとルギーレが一番驚きを隠せなかった。

 なぜなら届かないと思っていたはずの攻撃が、まさか届いてしまったのだから。

 そしてその瞬間、ルギーレは自分の役目を理解した。


(何が何だかわからねえけど、攻撃が効くなら俺にもチャンスがあるぜ!!)


 それを今もう一度理解したルギーレは、よろよろと立ち上がるディルクに対して自分もニヤリとした嫌な笑みを浮かべて、セバクターとヴァラスには魔法陣から生み出される魔物の相手を任せることにした。


「さぁて……俺と一対一で勝負と行こうかぁ?」


 第三者から見ればどちらが悪役なのかわからないルギーレのその声色と表情に、ディルクはゴクリと唾を飲み込んだ。

 あの塔の大型機械兵器の時はガルクレスが小型兵器を引き付けたが、今度はセバクターとヴァラスがこのディルクの作った魔法陣から生み出されるたちと戦ってくれている。


(ここで俺も負ける訳にはいかないぜ!)


 魔物を生み出す元凶のこのディルクは放っておくと厄介なので、これは短期決着で一気に勝負を決めるべきだとルギーレは判断。

 しかし、なぜか魔術がルギーレに効かないとわかったディルクは杖の握りについているボタンを押して、先端に刃を出してソードワンドに変化させた。


「僕が魔術だけの男だと思ったら大間違いだよ?」


「はっ!」


 まず最初に動いたのはディルク。それに反応してルギーレが動く。

 しかしルギーレは、そのディルクのソードワンドの速さとトリッキーさに驚きを隠せない。なぜなら彼の前で戦ったことも、彼の動きを見ることもできていないからだった。

 心のどこかで魔術師に対して「運動が苦手」という固定観念がルギーレにはあったのだが、それを全く感じさせない動きなのだ。


「くっ!」


 繰り出されるソードワンドの突きや横切りを必死で避けるが、スピードがかなり速い攻撃なのでルギーレのレイグラードによる身体能力向上の分を持ってしても、全くといっていいほど攻撃のチャンスがない。

 それでもギリギリで身体を捻ったり、バックステップで後ろに下がることによってディルクの凶刃から逃れるルギーレ。

 その避けたり防御したりする中で、自分への下段攻撃が余りないことに気が付いたルギーレは、胸の辺りに来た横薙ぎの攻撃を避けた後に屈む。

 そしてそこから、一気にディルクの足に向けてレイグラードを振るった。


「ふん!!」


 だが、これはディルクも素早く飛び上がって回避。

 しかしそこから、ルギーレはレイグラードではなく自分の身体を弾かせて一気にその両足に絡みつき、地面に向かって引きずり倒した。


「ぬお!?」


 更にそこからディルクに対してのしかかり体勢を取り、右手のソードワンドを振るわれる前に素早く手でなるべく遠くに払い飛ばした。


「らっ、だ、だああ!」

「ぬおおおおっ!!」


 ディルクは何とかルギーレの組み付きから逃れようとするも、ルギーレもその腕どころか足もディルクの足に絡ませて絶対に逃がすまいと踏ん張る。

 それでもディルクは何とか立ち上がって反撃に出ようとした。

 が、ルギーレに片足を掴まれたまま、今度は身体を支えている方の軸足の関節を勢い任せに蹴りつけられバランスを崩すディルク。


「ぐっ!」


 そこは何とか踏ん張ったが、体勢を立て直し切る前にルギーレが振り上げた足でまずは顎を蹴りぬかれ、そこから踵落としがディルクの頭に振り下ろされて、彼は後ろへと転がる。


「ぐはっ!」


 だがその転がったディルクは、自分の右手に何かが当たる感触に気がついた。

 それは先程、ルギーレにのしかかり体勢を取られた時に遠くに払い飛ばされた自分のソードワンド。

 愛用の武器が手元に戻って来たので、追い打ちをかけようと走り寄って来るルギーレの下半身目掛けて横薙ぎで斬りつける。


「ぐぅっ!?」


 見事に右の太ももを斬り裂いたソードワンドだったが、クリーンヒットとまではいかなかったようでルギーレもまだ戦闘続行可能。

 これはどちらが勝ってもおかしくないのだが、ルギーレは心のどこかでディルクに対して引っかかりを感じていた。

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