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523.転移先には?

「ぐっ……!?」


 目をギュッと閉じて思わずその場に片膝をついてしまうほどのショックだったが、五~六秒ですぐにめまいも治まったので目を開けてみる。

 すると今までいるたはずの小部屋と雰囲気が違う、どこかの石造りの大きな部屋に周囲の景色が変わっているではないか。


「あ、あれ……ここは……?」

「あんたも無事に転移ができたみたいだな」


 キョロキョロと周囲を見渡すルギーレに、死角から降ってきたのはセバクターの声だった。


「ここはメルディアスのどこかじゃないか? この部屋のよう子だけじゃまだ確証はないけど、あの見張りの男が言ってたんだったら間違いないと思う」


 続いてヴァラスも、同じ部屋の中にいることを証明するように声をかけてきた。

 なので再び全員が揃った所で今度はルギーレが先頭になり、まずは自分たちの目の前にある大きな両開きの金属製の扉に手をかけた……その瞬間!!


「素晴らしい、素晴らしいよ君たち!!」


 パチパチパチ、と乾いた音がこの広い部屋のどこからか聞こえてきたので、三人は扉の外に出るのを止めて、その音のする方を一斉に振り向いた。

 すると、いかにもキザっぽく顔の横で手を叩く長い黒髪の魔術師ディルクが、不自然なほどに爽やかな笑みを浮かべてそこに立っているではないか。

 気配を消すのがやたらと上手いのか、それとも薄暗いこの中で暗い色合いの服と髪だから気づかなかっただけなのか。

 どちらにしても、パーティメンバー全員が同じ部屋にいる彼の存在に気が付くのが遅れたのは、場合によっては非常に危険である。


 とはいえ、いきなり「素晴らしい」と言われてもその意図が掴み難いので、ここは三人を代表してルギーレが不機嫌丸出しの声で尋ねる。


「何がだよ?」

「まさか僕のしもべたちをこんなに呆気なく倒してしまうとはね!! これほどまでとは思わなかったよ!!」

「しもべだと?」


 その言い方に疑問を覚えるルギーレに対し、ディルクはさも当たり前というトーンで続ける。


「ああ。僕に賛同して今まで水面下で色々と情報を集めてくれていた、利益度外視の奴らだよ。ちょっと高度な魔術を見せつけてやれば僕に揉み手で着いてきてしまうんだから、笑うよね?」


 嘲るような笑いを浮かべるディルクを見て、最初にピンときたのはヴァラスだった。


「だったら今まであそこの地下への階段にいた、沢山の武装した人員は全て……」

「そうさ。僕が都合の良いように動かしていた人足みたいな奴等だよ。さっきも大きな魚を土産にくれてやったらそれだけで喜んでいたからね。その日暮らしで食うのにも困っていたような奴らをここまで使ってあげたんだから、感謝して欲しいもんだよ」


 だからさっき魚を買っていたのか……と段々ディルクに対する疑問が解け始めるルギーレに対して、少し興奮気味にディルクは続ける。


「おかげで非常に良いデータが取れたよ。研究の邪魔をされた代償としては十分だね」

「そういえばあの塔の時もそんなこといってたな。研究って何を研究しているんだよ?」


 ルギーレがそう聞けば、手を叩いていた時と違ってディルクはニヤリと嫌らしい笑みを浮かべた。


「研究はこれだよ」


 そう言いながら、ディルクは壁の一部分をドンっと拳で叩く。

 するとその瞬間、彼が拳を叩き付けたすぐ横の部分の壁が隠し扉の如く横にグルリと半回転した。

 その壁の裏にあったのは……。


「……壁画……?」


 古びてボロボロになり、所々が剥がれ落ちているがそれは間違いなく壁画だ。


「僕が三か月前に色々とこの世界を探検していた時にここで見つけた壁画だ。この壁画を調べていたら魔力があの大きな塔にここから流れているのがわかってね。そして僕は、この帝都の地下からあの塔の地下に繋がっている道を見つけて、あそこの封印を解いて最上階まで辿り着いたんだ。そして、あの屋上の魔導砲を見つけて色々といじっていたんだけど……君たちに邪魔されたんだよね」


 長々とそう言い終えると、ディルクは地面に向かって杖の先端をかざす。

 するとその瞬間、先ほど転移に使ったものよりも更に一回りぐらいは大きな水色の魔法陣が出現した。


「だから、今度こそここで死んでもらう!!」


 その声とともに、魔法陣の中心から魔物が地面から浮き出てきたのが見えた。

 それを見た他のパーティメンバーの中では、塔の時と同じくその魔法陣の上に即座にフタとなる役目をセバクターが担う……はずが。


「は、離れろセバクター!!」

「うおおっ!?」


 ヴァラスの大声が響き渡る。

 何と、塔の時とは違ってそのフタとなったセバクターの周りから魔物が次々に現れたではないか!!


「はっ……あの時みたいに小さい魔法陣じゃないんだよ!!」

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