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515.仮説と気になること

 あくまでもまだ仮説の段階にしか過ぎないが、この仮説が今の所一番の有力である。

 とにかく、マルニスとセルフォンとの連絡もまだついていないということもあって、どこをどう捜せばいいのかという見当もついていないまま、帝都メルディアスへと最終的に乗り込むことが必要になるだろう。


「そうと決まりゃあ、ここからさっさとメルディアスにまで急がねえといけねえよな」

「うん、それはそうなんだけどさ……」

「ん?」


 今の流れで早速出発するべく動き出そうとしたルギーレたちだったが、その中で待ったをかけたのはレディクだった。

 ものすごく何かを言いたそうな表情をしているだけあって、他のメンバーたちも思わず動きを止めて彼の方を見る。


「何だ、何かあるのか?」

「うん、君のことについてね……」

「俺?」


 これ以上ないと思われるぐらいの訝しげな視線をレディクから向けられたのは、突然空から降ってきたセバクターだった。

 一体俺の何が気になるのだろうか、とレディクを見つめるセバクターに対して、見つめている方のレディクは単刀直入にとんでもない質問を繰り出してきた。


「君ってさ……本当にこの世界の人間なの?」

「えっ」

「おいおい、何言い出してんだよレディク?」


 この世界の、などと言い出したレディクに対してセバクターよりも先に答えたのは、ヴァラスとガルクレスの二人だった。

 そして当のセバクターはというと、相変わらずの冷静な表情のまま無言を貫いている。


「……」

(あれ……こめかみがピクピクしてんな?)


 隣にいるルギーレは、そんなセバクターの微妙な表情の変化に真っ先に気がついた。

 それを知ってか知らずか、レディクは自分がどうしてそんな質問を投げかけたのかを自分で説明し始める。


「だってさぁ、エスヴァリークだの必殺技だの聞き慣れないことを山ほど話している君のことをどうしてみんなが怪しいと思わないのか、逆に僕は不思議で仕方がなかったんだよね」


 しかも、獣人という単語までセバクターの口から出てきたことをレディクはしっかりと覚えていた。


「獣人なんて単語、僕は久しぶりに聞いたんだよ」

「久しぶり……って、君は聞いたことがあるのか?」

「うん。でもそれが奇妙な話でね。何でもこの世界とはまた別の世界があるらしいんだよ。それも、この世界に深く関係しているっていうもう一つの世界。そこに獣人って存在があるらしいんだけど」


 そこで一旦言葉を切って、レディクはヴァラスの方からセバクターの方へと視線を向け直して続ける。


「普通さ、この世界で生きていたらそんな言葉なんて出てこないんだよね。だって、この世界に獣人っていう存在そのものがないんだからさ」

「……何が言いたい?」


 言いたいことがあるんだったらハッキリ言え、とやや苛立ちを見せ始めたセバクターに対して、それならばとレディクは率直にこう聞く。


「じゃあ聞くけど、君はもしかしてそっちの獣人っていう存在がある世界からやってきた、異世界人なんじゃないのかな?」

「……」

「おいおいおい、あんたは何を言ってるんだよ。そんな異世界から人間がやってくるなんてこと……」

「ルギーレは黙っててよ。僕は今セバクターと話してるんだから」


 そう言われて黙るしかないルギーレだったが、当のセバクターの方も黙ったまま何も答えようとしないままである。

 それを見て、レディクはふーっと息を吐いて話を続ける。


「まあ、答えたくないんだったらそれはそれで構わないけどさ……でも今のこの状況も考えて決断してよね。今、あそこに建っていた塔で僕たちはいろいろな敵と戦っていたわけだよ。そして屋上でルギーレは、君の追いかけ続けているって話だった魔術師と対峙している」


 しかもそこでルギーレがディルクというその魔術師を倒せたというならまだしも、レイグラードと一緒にその魔術師に挑んでも逃げられてしまっている。

 恐らくはその魔術師も、レディクの言っている異世界からこちらの世界にやってきたのだろう。


「だからこそ、これはもう君の世界の話だけで済む問題じゃない。こっちの世界だって巻き込まれているわけだし、その魔術師の行方だって捜さなければいけないんだからね」


 この戦いの規模は、いよいよ異世界とやらも巻き込まれてしまっているようだ。

 レディクがそこまでセバクターに向かって言えば、若き副騎士団長はやっと口を開いた。


「……そうだ。俺は確かにこの世界の人間ではない。この世界とはまた別の……といってもまったく関係ないわけではない、エンヴィルーク・アンフェレイアという世界からこっちの世界に来たんだ。目的があってな」

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