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509.勇者の一人vs元パーティーメンバー

 それが上手くいくかどうかはわからないが、とにかく作戦の実行を試みる。


「それはそうと……さっき俺がここのドアを閉めようとしたのに俺の方に向かって勢い良く開いただろう。あれってどういう仕組みなんだ?」


 その質問に、ベティーナの眉が不愉快そうに跳ねた。


「だからそれさっき私が言ったじゃない。あれは私の魔術だって。あなたがあそこのドアを閉め切る前に、私が風の弾丸を放って阻止したってわけ」


 ルギーレは同じ質問を繰り返すことでベティーナをイライラさせ、更にそれに答えて貰うことで時間稼ぎをし、それによって自分の足を引っこ抜くのに成功した。

 そしてそう言い終わると同時に、一か八かの賭けでベティーナに向かって木箱の山の中からレイグラードを握っている右手を振り出し、衝撃波を繰り出した!!


「きゃあっ!?」


 ルギーレは既に何回も経験済みなので、自分がベティーナの立場だったとしてもその衝撃波に対応することはできる。

 しかしずっと今まで彼と離れていた上に、彼が自分に勝てるわけがないと油断していたベティーナにとって、この現象は不意を突かれるものとなった。

 彼女はそれでもその実力と経験で何とかギリギリの防御を成功させたが、もちろん大きな隙ができた。

 その隙をルギーレが見逃すはずはない。

 自分も今の木箱の下敷きで身体の痛みは残っているものの、それは全然我慢できる痛みだ。


「うおりゃああああっ!!」

「なっ……!?」


 その隙を突いて素早くベティーナに駆け寄り、体勢を立て直しきれていない彼女に抱きついて素早く持ち上げる。

 槍は広範囲を攻撃できるのだが、脇の下から手を入れて背中に手を回して密着してしまえば肝心の広い攻撃範囲も使えない。

 しかも、まさかレイグラードではなく無手でくるなんて……と驚いたベティーナは何とか槍を放さないで済んだものの、槍を両手持ちにしていたのが片手持ちになってしまった。

 そのため、槍を持つ利き腕の右腕の下からガッチリ抱き締めてしまえば、その抱き締めるルギーレの頭が邪魔で腕も満足に動かせない。


「どこ触ってんのよ変態!!」

「うっせーんだよおおおおおっ!!


 ルギーレはベティーナをきつく抱きしめたまま猛ダッシュし、向かう先は出入り口のドア。

 彼女をクッションにする形でタックルしてかんぬきごとドアを破壊し、そばの通路の手すりの隙間から槍を下のフロアに蹴落として、彼女も自分と同じく素手の状態にさせた上で、馬乗りになって無防備な顔を中心にボッコボコに殴りつけるルギーレ。


「ぐえ、あが、ぐぅ!?」


 そのままルギーレがこの体勢で殴り続けるかと思いきや、ベティーナも右足を思いっ切り振り上げて彼の後頭部にヒットさせる。


「ぐお!?」


 ルギーレが怯んだ隙に空いている左手で彼の顔面に拳を入れ、拘束が緩んだ所で素早く抜け出したベティーナは、自分の間合いで反撃するべく渡り廊下の方に下がって距離を取る。

 しかし、ルギーレはその彼女の太ももにタックルするようにして抱きつき、先ほどの顔面へのお返しとばかりに右足を思いっ切り振り上げてベティーナの顔面へ。


「ぐえ!?」


 その顔面への攻撃で怯んだベティーナの両肩を掴み、膝蹴りをかまして更に怯ませてから身体の位置を彼女と反転させ、背中を床につけて後ろに回る投げ技で彼女を遥か下への階へ向かって投げ落とした。


「えっ、ちょ、やっ、きゃ……あああああああああああああああーーーーーーーーーっ!?」


 吹き抜けの穴に向かって思いっ切り投げ込んだために、途中で回転したベティーナは重い頭を下にして真っ逆さまにダイブして行った。

 しかもその投げ飛ばした勢いが付き過ぎていて、下の渡り廊下の屋根の端に彼女はぶつかってもまだ落ちていく。

 一方でベティーナを投げ落としたルギーレはそれを見て、ポツリと何の感情も持たない一言を呟いた。


「じゃあな、勇者さん」


 ベティーナの凶刃から逃れ、逆に彼女を倒すことに成功したルギーレは他のメンバーと合流するべく、素早く立ち上がって歩き出した。

 こうして激闘の末、ベティーナを始末して決着をつけたルギーレ。

 しかし、ここであることを思い出して自分のやってしまったことに頭を抱える。


(しまった、あの野郎の話を聞き出すのを忘れていた……!!)


 そう、彼女と繋がりがあるかもしれないエリアスの行方。

 そのことを聞き出さずに投げ落としてしまった自分の迂闊さを後悔しながら、情報を聞き出すまでは何とか生きていて欲しい、と急いで十階部分に叩きつけられたベティーナの元に向かう。

 ……が。


(ダメだ……もう息がない)


 全身を強く打ち、目を見開いた状態でピクリとも動かないベティーナ「だった」肉の塊。

 首筋に手を当てても脈が止まっているので、どうやら手遅れだったようだ。

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